ウォータージェット切断機|高圧水で金属・石材を高精度切断

ウォータージェット切断機

ウォータージェット切断機は、高圧ポンプで加圧した水を細孔(オリフィス)から音速以上で噴射し、材料を浸食して切断する工作機械である。水のみを用いるピュアジェットはゴム・食品・紙など軟質材に適し、研磨材(一般にガーネット)を混入するアブレシブジェットは金属・石材・ガラス・炭素繊維複合材など硬質材の切断に用いる。熱をほとんど与えない「冷間加工」であることが特徴で、熱影響部(HAZ)やバリ、溶着が生じにくい。厚板にも対応でき、複雑形状や異種材の多層構成にも強みを持つ一方、周辺設備や消耗品管理を適切に行うことが性能とコストの鍵となる。

原理と構成

ウォータージェット切断機は、約300〜413MPa(40,000〜60,000psi)級の圧力を発生させる高圧ポンプ、硬質宝石(サファイア・ダイヤモンド等)のオリフィス、混合室、フォーカスチューブ(集束管)、アブレシブ供給装置、CNC制御の切断テーブル、循環・回収を含む水処理系で構成される。ピュアジェットではオリフィス径は0.1〜0.2mm程度、アブレシブジェットではオリフィスとフォーカスチューブの組合せでジェットコヒーレンスを最適化する。

ポンプ方式

圧力源は主に増圧器(インテンシファ)方式とダイレクトドライブ方式に大別される。前者は油圧シリンダで水圧を増幅し高圧・安定流量を得やすい。後者は電動機直結の往復動で効率・立上がりが良い。いずれもシール・チェックバルブ・アキュムレータなどの高圧機器の健全性が性能を左右する。

加工特性

ウォータージェット切断機は熱歪みが小さく、焼け・変色が発生しにくい。水流は微小曲率にも追従し、微細穴のパイアシングも可能である。切り幅(カーフ)は比較的狭く、材料ロスを抑えたネスティングが行える。厚物ではジェット減衰と遅れにより下面側でわずかなテーパやストリエーション(縞模様)が現れるため、条件最適化や傾斜補正ヘッドで抑制する。

切断精度と面粗さ

精度はテーブル剛性、ヘッド剛性、ノズル摩耗、スタンドオフ距離、送り速度に依存する。一般に送りを落とすほど面粗さは向上し、角部のオーバーカットは減少する。薄板の微細形状では小径オリフィス・細径チューブを用い、厚板では圧力とアブレシブ流量を確保しつつ過度なスタンドオフ増大を避ける。

加工条件の主要因

  • 圧力:高圧ほど粒子速度が上がり切断能が増すが、シール摩耗も増える。
  • オリフィス径:小径でジェットの整流性が増し、細幅加工に適する。
  • フォーカスチューブ長・内径:エネルギー密度と指向性に影響。
  • アブレシブ種類・粒度・流量:ガーネットのメッシュや供給量で侵食効率が変わる。
  • 送り速度(CNC):速すぎると下面側にストリエーションが生じやすい。
  • スタンドオフ距離:近すぎると衝突騒音・スプラッシュ、離れすぎると拡散と精度低下。
  • パイアシング方式:減圧や循環による下穴形成で母材損傷と反跳を抑える。

適用材料と用途

金属(鋼・ステンレス・アルミニウム・チタン)、石材・セラミックス、ガラス(合わせ・強化の注意要)、樹脂・ゴム、木材、食品、CFRP/GFRPなど広範囲に対応する。治具レスでワーク固定が容易で、治具跡の懸念も小さい。建材・意匠加工、航空宇宙の複合材トリミング、半導体装置部材、研究開発の試作切り出しなどで用いられる。

利点

  • 冷間加工でHAZや硬化層がほぼ生じない。
  • 材質に依存しにくく異種材スタックにも対応。
  • カーフが狭く材料歩留まりが良い。
  • 薄板から厚板まで一台で幅広いレンジに適合。
  • バリや二次加工の手間が小さい。

留意点・課題

  • 騒音・ミスト・スプラッシュ対策(防音筐体、囲い、集霧)が必須。
  • 使用水とアブレシブの回収・濾過・脱水など環境設備が必要。
  • 厚板や高精度時は加工時間が増大しやすい。
  • フォーカスチューブ・オリフィスの摩耗による寸法変動に注意。
  • アブレシブ消費と廃棄費がランニングコストに影響。

周辺技術

ウォータージェット切断機はCNCとCAD/CAMで運用し、輪郭の最短経路化、共辺切断、マイクロジョイント、タブ付与などのネスティング機能で歩留まりと時間を最適化する。5軸ヘッドは面取りやベベル切断、傾斜補正でテーパを相殺する。高さセンサでスタンドオフを一定化し、突起・反りを回避する。

安全と環境

高圧水は皮膚穿通の危険があるため、インターロック、非常停止、圧力解放手順、保護具(フェイスシールド、耐水エプロン、手袋)を徹底する。スラリーは沈降槽・フィルタ・スクリーンで固液分離し、アブレシブは脱水・産廃処理する。漏えい検知、ホース定期交換、耐圧試験記録の管理が望ましい。

保守とコスト

消耗はオリフィス、フォーカスチューブ、シール、チェックバルブ、ノzzleアライメントに集中する。アブレシブの含水や異物は目詰まり・ビーディングを引き起こすため乾燥・ふるい分け・安定供給が重要である。アブレシブ消費は条件により数百g/min程度、圧縮空気・電力・水処理を含む総合原価での見積りが実務的である。加工トライアルで切断速度・面粗さ・寸法再現性を把握し、標準条件表を整備すると稼働が安定する。

設計・品質管理の要点

  • 形状:最小内Rはカーフと材料厚の関係で決まり、角部は止め穴やコーナースローで品質を保つ。
  • 寸法:リードイン/アウト、タブ位置、補正(オフセット)を図面段階で考慮する。
  • 検査:初品で実寸、面粗さ、テーパ、バリ、マイクロクラック(ガラス等)を確認する。
  • トレーサビリティ:条件・ノズル累積時間・アブレシブロットを記録し再現性を担保する。

ウォータージェット切断機は、多様な材質と厚さに一台で柔軟に対応し、熱に弱い材料や高品位が要求される意匠・機能部品の加工に有効である。適切な条件設計、環境・安全設備、消耗品管理を体系化することで、歩留まりとコスト、品質のバランスを高水準に維持できる。