イスラム世界
イスラム世界とは、イスラム教の信仰が社会的に大きな意味を持っている地域の全域をいう。最初は7世紀にイスラム教が成立したアラビア半島で形成され、8世紀に西アジアから北アフリカを経てイベリア半島にまで急拡大した。その後さらに中央アジア・東南アジア・サハラ以南のアフリカ方面にも広がり、今日にいたっている。『コーラン』を中心とするイスラムの教えを核とする多くの文化を共有しながら、各地の土着の文化とも融合して多様な姿を見せている。
イスラム教
イスラム教は、ムハンマドが創始した宗教である。イスラムとはアラビア語で「神への絶対的服従」を意味する。神の前での平等が説かれ、ムスリムと呼ばれる信徒には六信(アッラー・天使・啓典(『コーラン』)・預言者・来世・天命を信じること)と五行(信仰告白・礼拝・断食・喜捨し・巡礼)の義務が課せられた。
ジャーヒリーヤ
ジャーヒリーヤとはイスラム教の成立以前の時代で、「無明」あるいは「無知」の時代を意味する。
アラビア半島
アラビア半島は、アジア西南端の大半島でムハンマドによってイスラム教が始まった。海洋の影響を受ける一部の地域を除けば、降雨はきわめて少なく、内陸部の大半は砂漠で占められている。紅海・インド洋・ペルシア湾沿岸に都市が点在する。
メッカ
メッカは、イスラム教の聖地で、ヒジャーズ南部に位置する。古来から宗教都市として知られていたが、6世紀後半以降、イエメンからシリア・エジプトにいたる遠隔地商業もさかんになり大発展した。
アラブ人の拡大
住民はセム語系民族が中心で、セム語系アラビア語を母語とした先住民をアラブ人という。アラブ人は砂漠や山脈のためにさえぎられて散在し、統一されることなかった。7世紀、初めムハンマドの統一に始まる征服活動によって、西アジア・北アフリカ方面に拡大した。
アラビア全土の統一
7世紀までの西アジアは、ササン朝ペルシアとビザンツ帝国により東西に二分されていた。7世紀に、ムハンマドによりイスラム教が広められると、状況が大きく変化した。イスラム教徒によって築き上げられたイスラム帝国が、ビザンツ帝国の勢力を西アジアから駆逐し、ササン朝ペルシアを滅亡に追い込むことになる。ここで、アラビア全土を統一した。
イスラム世界の拡大
アラビア半島をイスラム帝国が占領すると、シリア・エジプト・イランまで勢力を伸ばし、それに従ってイスラム文化は広く各地に普及した。11世紀以後は、西アフリカではイスラム化が徐々に進行し、また北インドにもイスラム王朝が樹立されて、ヒンドゥー教徒の間にイスラム教がしだいに浸透した。13世紀以降は、貿易活動をつうじて東南アジアの諸島部や中国の海岸部にもイスラム教が広まった。
アラビア語
『コーラン』がアラビア語で書かれていたことから、広大なイスラム世界では、アラビア語が共通語として用いられた。
イスラム教徒の商人
イスラム帝国が支配権を広めていくと、国境が無く、また、各地の都市を結ぶ交通路の整備によって、物と人の移動が活発におこなわれるようになった。イスラム教徒の商人は、遠隔地との取り引きに従事したばかりでなく、イスラム教をアフリカ・インド・東南アジア・中国へ伝えるうえでも重要な役割を果たした。
イスラム都市
イスラム教徒は古代オリエント文明・ギリシア文明・インド文明・中国文明などを融合させながら高度な都市を築きあげた。各地の都市には、モスクを中心にして市場や学校が建設され、カリフやスルタンの保護のもとに宮廷文化が花開いた。
アラブの学問
- コーランの解釈学
- 神学
- 法学
- 歴史学
外来の学問
- 医学
- 哲学
- 地理学
- 数学
- 化学