アルミニウム合金|特別な特性を付与されたアルミニウム

アルミニウム合金

アルミニウム合金とは、アルミニウム(Al)に他の元素を添加して強度を高めるなどの特性を向上させた素材である。純アルミニウムの引張強さは鉄に劣り構造物に適切ではないが、これにCu、Si、Mg、Mn、Znなどの元素を添加して合金にし、また、圧延などの加工や、熱処理を施すことで、目的とした機械的性質を改善することができる。また、アルミニウム合金は大きく展伸材用合金(耐食アルミニウム合金、高力アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金)と鋳造用合金(砂型、金型、ダイカスト鋳物)に分類できる。

アルミニウム

アルミニウムは、鉄鋼の約1/3程度の密度(ρ=2.70)のため、軽量化に容易られる。耐食性、電気・熱の伝導性、磁気シールド性などがよく、圧延加工がしやすいので広く使われる。アルミニウムに銅(Cu)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)の元素を添加して特定の機械的性質を求めた素材である。

アルミニウム合金の用途

アルミニウム合金の用途は広く使われ、航空機用材料、航空機用材料、建築材料(ビルのカーテンウォール、サッシ等)、導電材料(アルミ送電線)自動車のラジエータコア、ヒートシンクなど上げればきりがない。

展伸用合金と鋳物用合金

アルミニウム合金は用途により、板、はく、型材、管、棒および鍛造品に加工する圧延用合金(展伸用)と、ダイキャストなどの鋳物用合金に分けられ、また、これらは、さらに非熱処理型合金と熱処理型合金に分けられる。

展伸用合金

展伸用合金とは、耐食アルミニウム合金、高力アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金に代表される合金である。これらは、板や棒の状態で加工、出荷され、その後、製品形状に塑性加工を加えていく材料である。

  • 純アルミニウム(1000番台)
  • Al-Cu系(2000番台)
  • Al-Mn系(3000番台)
  • Al-Si系(4000番台)
  • Al-Mg系(5000番台)
  • Al-Mg-Si系(6000番台)
  • Al-Zn-Mg系(7000番台)

鋳造用合金

鋳造用合金とは、溶けた金属を型に流し込む鋳造により、一度に形づくられる材料である。

  • Al-Si系(シルミン)
  • Al-Mg系(ヒドロナリウム)
  • Al-Cu系(ラウタル)
  • Al-Si-Mg系(ガンマシルミン)

切削加工

アルミニウム合金は、鉄鋼材料と比較して切削抵抗が小さいため、切削性に優れるが、熱伝導率が大きいため、切削している刃物からのによる膨張が問題になる。そのため、適切な潤滑剤を使用して切削温度を下げる必要がある。

熱間加工と冷間加工

金属に外力を加えて変形させたときに、硬くてもろくなることを加工硬化という。これをとりのぞくために、金属を加熱して結晶を新しくすることを再結晶といい、その温度は材料によって異なる。再結晶以上の温度で行う加工を熱間加工、再結晶以下の温度で行う加工を冷間加工という。冷間加工によって強化された非熱処理型合金は、一般構造用A1合金のAl-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系に挙げられ、H材として用いられる。熱処理型の合金は、AI-Cu系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg-Cu系などに代表されでT材として用いられる。

  • 熱間加工性:圧延・押出し・鍛造などにより、複雑な形状の製品に加工できる。
  • 冷間加工性:圧延・押出しに加え、曲げ加工や深絞り加工などのプレス加工にも適する

溶接

アルミニウム合金は、熱伝導率や熱膨張率が大きいため、一般の溶接が困難である。また、不純物の影響を受けやすいため、鉄鋼で一般に行われているガス溶接やアーク溶接には適さない。そのため、アルゴン(Ar)を大気中の窒素や酸素と遮断するシールドガスとしたティグ溶接やミグ溶接が用いられる。

アルミニウム合金記号の表し方

アルミニウム合金に番号をつけて種類を区分している。圧延用アルミニウム合金については、国際合金記号化制度がとられており、4桁の数字方式で表される。なお、鋳造用アルミニウム合金については、圧延用合金のような国際合金登録制度がなく、各国によって異なっている。

1000系(純アルミニウム)

1000系(純アルミニウム)は、1000番台の表示は工業用純アルミニウムを表し、99.0%以上の純アルミ系材料である。加工性・耐食性・溶接性に優れているが、強度は低く構造材には適さない。用途は、家庭用品、日用品、電気器具、送配電用材料、放熱材、装飾品、反射板、印刷板、フィンなど多岐にわたる。

2000系(銅系アルミニウム)

2000系(銅系アルミニウム)は、AI-Cu系アルミニウム合金である。ジュラルミン、超ジュラルミンもこの合金系に属し、鋼材に匹敵する強度を持つが耐食性は劣る。ジュラルミン(2017)、超ジュラルミン(2024)などに代表される。構造用、鍛造材、 航空機用、 宇宙機器、 機械部品 などに多く使用されている。

ジュラルミン合金

ジュラルミン合金とは、アルミニウム(Al)に銅(Cu)やマグネシウム(Mg)などを添加したアルミニウム合金である。ジュラルミン合金はA2024、超々ジュラルミンはA7075で、強度は600MPaで、航空機の機体材料として使われる。

3000系(マンガン系)

3000系(マンガン系)は、Al-Mn系アルミニウム合金Mn(マンガン)の添加により、純アルミニウムの加工性・耐食性を低下させずに1000番系よりも強度を増した合金で、器物、建材、容器など広い用途がある。

4000番(けい素系)

4000番(けい素系)はAl-Si系アルミニウム合金である。Si(シリコン)の添加により、熱膨張係数を低く抑え、耐熱性、耐摩耗性に優れている。溶融温度が低く、ろう材や溶接ワイヤーとして使用されている。そのほか、建築パネル、 ブレージング皮材などに使われる。

5000系(マグネシウム系)

5000系(マグネシウム系)は、Al-Mg系合金である。耐食性、溶接性がよく、強度も比較的優れている。5N01や5005合金は装飾用材、建材、器物に、5052合金は缶蓋材、船舶、車両、化学プラントなど構造用材としても多く使われている。

6000系(マグネシウム・けい素系)

6000系(マグネシウム・けい素系)は、Al-Mg-Si系合金である。強度・耐食性ともに優れ、代表的な構造材である。6063合金、6N01合金は押出し加工性に優れ、アルミサッシ材や鉄道車両、自動車部材、陸上構造物、船舶材料として使用されている。

7000系(Al-Zn-Mg系合金)

7000系は、Al-Zn-Mg系合金である。アルミニウム合金の中で最も強度が優れている。7N01、7003合金は溶接構造用材料として使用されている。Al-Zn-Mg系合金アルミ合金の中で最も強度が優れている。7N01、7003合金は溶接構造用材料として使用されている。

8000系

8000系は、8021合金はアルミ箔、8079は電気通信用包装用として使用されている。

識別

調質とは、展伸材のアルミニウム合金において、冷間加工や熱処理を施すことで、強度や成形性などに性能を付与することをいう。F、O、Hの基本記号があり、A6061-T6のような記載をする。

基本記号

  • F:加工硬化または熱処理についての指定がなく製造されたアルミニウム合金
  • O:焼なましによって完全に再結晶して最も軟らかい状態になったアルミニウム合金
  • H:加工硬化によって強さを増加したアルミニウム合金
非熱処理型アルミニウム合金

非熱処理型のアルミニウム合金の調質はH1X(H11,H12,H14など)、H2X(H21,H22,H23)、H3X(H31,H32,H33)などと表記する。Xの数字は硬質を表し、硬質が高いほど加工が難しい。冷間加工を行う。

  • H1X (冷間加工)
  • H2X (冷間加工に加えて、焼なましを行う)
  • Н3X (冷間加工に加えて、安定化処理を行う)
熱処理アルミニウム合金

熱処理アルミニウムはTがつくもので、熱処理を施し安定的な識別を行ったものである。

  • T4 (自然時効)
  • T5 (高温加工で人工時効)
  • T6 (最大強さを得る温度で人工時効)
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