アッシング|フォトレジストを高速かつ均一に除去する工程

アッシング

アッシングは、半導体デバイスの製造工程において、リソグラフィ工程後に生じるフォトレジスト残渣を物理的・化学的に取り除く技術である。プラズマ、あるいはその両方を組み合わせてフォトレジストを酸化・分解し、ウェハ表面を清浄化する点に特徴がある。半導体の高集積化に伴い、微細パターンを安定して形成するためには、フォトレジスト除去の均一性やドライプロセス中のダメージ抑制などが重要となる。この技術は、エッチング後の微細構造を保護するための必須工程となっており、装置の性能やプロセス条件の設定が量産の歩留まりを左右すると考えられている。

アッシングの背景

半導体製造においては、フォトレジストをマスクとして用いてエッチングやイオン注入などを行うが、工程を終えればフォトレジストの存在意義は失われる。そこで、次の工程に影響を及ぼさないよう速やかに除去する必要がある。従来は溶剤によるウェット処理が広く用いられてきたが、デバイス微細化によりドライプロセスへの移行が進むにつれ、酸素プラズマを用いたアッシングが主流となった。アッシングを正確に実施することで、微細パターンの劣化や金属配線の腐食リスクなどを抑制し、プロセス全体の信頼性を向上させる役割があるといえる。

アッシングの原理

アッシングの基本原理は、酸素を主としたプラズマ雰囲気下でフォトレジストを化学反応させ、最終的には揮発性のガスとして除去する点にある。プラズマ中に存在するイオンやラジカルは、高エネルギー状態でフォトレジスト表面に衝突し、結合を切断しやすい形へと変化させる。とりわけ酸素ラジカルがフォトレジスト中の炭素構造を酸化・分解するため、炭酸ガスや水などに転換して気化させることが可能となる。こうしたドライプロセスは、洗浄液が微細パターンを変形させる恐れを抑えられる点でも有効とされている。

アッシングの役割

アッシングの第一の目的は、ウェハ表面に残っているフォトレジストを完全に取り去ることである。微細な回路パターンを形成するフォトリソグラフィでは、フォトレジストの一部がパターンのエッジや溝に残存しやすい。これらの微細残渣は後工程で膜質不良を引き起こすため、アッシングによって物理・化学的に除去する必要がある。適切なアッシング条件を選べば、デバイス特性を保ったまま、高速かつ均一にフォトレジストを除去できる。

アッシングの装置構成

アッシングを行う装置としては、チャンバ内でプラズマを生成するタイプが一般的である。高周波電源やマイクロ波電源を用い、酸素または酸素と他のガスを混合したプロセスガスを励起状態にすることでプラズマを形成する。ウェーハはプラズマの直接照射を受けるレシピや、遠隔プラズマから供給されるラジカルのみを作用させるレシピなど、さまざまな方式で処理される。装置内のガス圧力、プラズマパワー、ガス組成や流量などの最適制御がフォトレジスト除去の均一性と処理スループットに影響するとされる。

アッシングの工程上の役割

フォトレジストを利用したエッチングが終了した後、ウェーハ表面にはレジスト残渣や副生成物が残っている場合がある。こうした不要物を除去しないまま次の工程に進むと、配線の信頼性や接合部の電気特性などに悪影響を及ぼす恐れがある。そこでアッシングが、残渣を高選択的に除去し、表面の化学結合をリセットする重要な位置づけを担う。とくに微細回路を形成する際は、レジスト残渣や有機物質が存在するとパターン寸法が変化してしまうため、アッシングの成功が量産性を左右する要因となるのである。

アッシングにおける課題

高温での処理はフォトレジスト除去効率を上げるが、熱に弱い層間絶縁膜や低誘電率材料にダメージを与えるリスクがある。また、強力なプラズマを用いれば除去速度は上がるものの、配線表面を微小にエッチングしてしまう副作用が発生する場合もある。こうしたトレードオフを解消するために、近年では低温・低ダメージ化を狙った技術が開発されている。たとえば、プラズマを生成する領域を離し、イオンの衝撃を極力抑制しながら活性ラジカルだけを表面に到達させる方式が注目されている。

他のフォトレジスト除去技術との比較

ウェット処理は比較的簡易な設備で実施でき、溶剤に溶けやすいフォトレジストに対しては高い除去効率を示すが、微細パターンに付着する液体が表面張力を発生させることで形状崩れを起こすことがある。これに対しアッシングは、乾式であるため微細パターンへの物理的影響が少なく、再現性の高い処理が期待できる。とはいえ、材料によってはプラズマへの耐性や選択比が異なるため、対象となるプロセスやデバイス構造に合わせて手法を選択することが重要と考えられる。

実装上の注意点

アッシングを導入する際には、プロセスガスの選定、チャンバ内圧力の最適化、ウェハへの熱負荷の制御が要となる。また、複数回のエッチングや成膜工程を経るうちに、アッシングで除去できない無機質な付着物が生成する場合もあるため、定期的なチャンバ洗浄も不可欠である。極端に微細なパターンでは、表面の電荷蓄積による微小な電位差が部分的なダメージを引き起こす場合も報告されており、レシピを最適化して歩留まりと良品率の向上を図ることが半導体製造工程における重要な課題となっている。