はすば歯車(ヘリカルギア)|歯すじが斜めになっている歯車

はすば歯車 helical gear

はすば歯車(ヘリカルギア helical gear)は軸に対して歯すじが斜めになっている歯車である。斜めになっているため互いのかみ合いが大きく滑らかなため騒音や振動が少ない。加工は複雑になるが、強度は高い。一般的な動力伝達装置、減速装置に適している。

はすば歯車の構造と動作原理

はすば歯車の最大の特徴は、歯筋が軸線に対して一定のねじれ角(ヘリカル角)を持っている点にある。平歯車が歯の幅全体で同時に噛み合いを開始するのに対し、はすば歯車は歯の端から順次噛み合いが進行し、複数の歯が常に同時に接触する「重なり噛み合い」が生じる。この連続的な接触プロセスにより、はすば歯車は急激な衝撃荷重を避け、滑らかな動力伝達を可能にしている。歯のねじれ方向には右ねじれと左ねじれがあり、一対の平行軸で使用する場合は、互いに逆向きのねじれ方向を持つはすば歯車を組み合わせる必要がある。

メリット:高い静粛性と負荷能力

はすば歯車を採用する最大のメリットは、振動と騒音の抑制である。歯の噛み合い率が高いため、回転中のトルク変動が小さく、高速回転時でも安定した性能を維持できる。また、有効な噛み合い長さが平歯車よりも長くなるため、同じサイズの平歯車と比較してはすば歯車の方が大きな荷重を伝達することが可能である。これにより、装置の小型化を図りつつ高出力を維持したい場合に、はすば歯車は非常に有効な選択肢となる。産業界における振動対策や環境性能の向上において、この静粛性は極めて重要な要素として評価されている。

デメリット:スラスト荷重の発生

はすば歯車の構造上の欠点は、回転時に軸方向へ押し出す力、すなわちスラスト荷重が発生することである。この力は、歯のねじれ角が大きくなるほど、また伝達するトルクが大きくなるほど増大する。そのため、はすば歯車を使用する軸系には、このスラスト荷重を支えるための円錐ころ軸受(テーパーローラーベアリング)やスラスト玉軸受を採用しなければならない。これは効率的な設計を妨げる要因となる場合があり、ハウジングの剛性確保や部品点数の増加に伴うコスト上昇を招くこともある。設計者ははすば歯車の性能と、これらの機械的な制約を天秤にかけて仕様を決定する必要がある。

スラスト力とスラストベアリング

はすば歯車は、斜めになっているため、軸方向にずらそうとするスラスト力Faがかかる。スラスト力を無視した組み合わせや構造の場合、摩耗などの事故の原因となる。その対策としてスラストベアリングを使うとよい。

ねじれ

右上方向のねじれを右ねじれ、左上方向のねじれを左ねじれという。また、ねじれの角度をねじれ角というが、ねじれ角にも多くの種類や組み合わせがある。

はすば歯車の寸法


相当歯数

相当歯数とは、はすば歯車を平歯車に換算して求めた歯数である。

回転力

回転力は下記の図で求めることができる。

はすば歯車の製図

簡略図

主投影図を断面にして示すときは歯すじ方向を3本の細い二点鎖線(想像線)で示す。

やまば歯車

やまば歯車(ダブルヘリカルギア)ははすば歯車を背中合わせに合わせたような歯車で、お互いのスラスト力を打ち消し合う構造となっている。大型の機械に用いられている。

平歯車との性能比較

はすば歯車と平歯車の主な違いを比較すると、以下の通りとなる。平歯車は製造が容易でコストが低く、スラスト荷重が発生しないため構造を簡素化できるが、騒音や振動が発生しやすい。対してはすば歯車は製造コストが高く軸受設計に工夫が必要だが、高性能な伝達が可能である。一般的な性能差を下表に示す。

項目 平歯車 はすば歯車
騒音・振動 大きい(高速に不向き) 小さい(高速・高精度)
強度・負荷容量 標準 高い(重なり噛み合いによる)
スラスト荷重 発生しない 発生する
製造コスト 安価 比較的高価

設計および製造上のポイント

はすば歯車を設計する際には、ねじれ角の選定が重要である。一般的には15度から35度程度の範囲で設定されることが多いが、これを大きくすると噛み合い率が高まり静かになる反面、スラスト荷重も増大する。また、製造にはホブ盤やギヤシェーパが使用されるが、平歯車よりも高い加工精度が求められる。特に歯面の仕上げ精度は、はすば歯車の持ち味である静粛性に直結するため、研削工程を含めた厳格な品質管理が行われる。近年のCAD/CAM技術の進歩により、複雑な歯形を持つはすば歯車も高精度かつ効率的に生産されるようになっている。

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