非接触測定
製品や材料に触れずに寸法・形状・表面状態・温度・内部欠陥などを評価する技術を非接触測定という。光・電磁波・音波・X線などの場を対象物に照射し、その反射・透過・位相・到達時間などの変化を検出器で電気信号に変換して量へと写像するのが基本原理である。プローブ圧による形状の乱れや表面損傷を避け、高速・広範囲・オンライン化(インライン計測)に適する一方、表面の反射率・透明性・傾斜・環境光や振動の影響を受けやすいという課題も併存する。
定義と特徴
接触式に対し、測定子が物体に触れない点が決定的差異である。光学・放射線・電気磁気・音響など多様な物理量を媒介とし、対象の幾何(寸法・形状・位置姿勢)と物性(粗さ・硬さの代替指標・温度・密度差など)を迅速に推定する。測定速度はラインスキャンやエリアセンサにより大幅に向上し、ロボットに搭載して多点を自動巡回する応用が一般的である。
主な方式
光学式距離・形状計測
レーザ三角測距はスポットやラインの位置ずれから距離を得る。共焦点・白色光干渉は垂直分解能に優れ、鏡面や微小段差のプロファイル取得に有効である。位相シフトやフリンジ投影の構造化光はエリア一括で3Dを取得し、ToF/ LiDAR は飛行時間から距離を算出する。
画像計測・フォトグラメトリ
高解像カメラと照明を用い、エッジ検出やサブピクセル推定で寸法・位置を測る。ステレオ視やマルチビューのフォトグラメトリは大面積の点群再構成に適し、治工具レスで再現性の高い検査系を構築できる。
X線CT(透視・断層)
X線の減衰差を利用して内部形状や欠陥(空隙・介在物)を非破壊で可視化する。鋳造品の内部寸法検証やAM部品の気孔観察に用いられる。高密度材ではビームハードニングや散乱によるアーティファクトに注意する。
電磁・電気式センサ
渦電流や静電容量センサは導電性・誘電性の近接変化を捉え、ギャップ・振れ・厚みの高速監視に適する。マイクロ波・mmWaveは粉体や霧環境でも動作しやすい。
超音波・音響
空中超音波は非接触で厚みや距離を測り、パルスエコーや位相評価で面内の均一性を判定する。表面状態と入射角の最適化が鍵である。
熱・分光計測
赤外線サーモグラフィは温度場を非接触で取得し、過熱・放熱不良や接触抵抗の診断に有効である。分光(反射・蛍光・ラマンなど)は材料識別や表面処理のばらつき把握に用いる。
測定精度と不確かさ
- 空間分解能:スポット径・画素ピッチ・光学MTFで上限が決まる。
- S/Nと安定性:照明のフリッカ・センサノイズ・温度ドリフトを管理する。
- 幾何キャリブレーション:レンズ歪み・基線長・姿勢の推定誤差が系統誤差を生む。
- 表面性状:鏡面・黒色・透明・粗面は散乱と反射で挙動が変わるため、波長・偏光・入射角を最適化する。
- 姿勢と死角:ラインオブサイト確保、遮蔽・自己陰影の回避設計が必要である。
校正とトレーサビリティ
寸法計では段差標準、球・リングゲージ、格子ターゲットなどのアーティファクトで幾何学的整合を取る。CT では密度既知のファントムを併用し、スケール・コントラスト・アーティファクト補正を検証する。試験所認定(例:ISO/IEC 17025)に準拠した手順・環境・記録を整備し、不確かさの伝播を見積もる。工程導入時はMSA(GR&R)で再現性と判別力を確認する。
データ処理と評価
- 前処理:外れ値除去、ノイズ低減、リサンプリングで点群の健全性を高める。
- 位置合わせ:基準データム合わせとベストフィット(ICP 等)を使い分ける。
- 形状評価:断面抽出、曲面フィッティング、厚みマップ、偏差カラーマップで可視化する。
- 幾何公差:位置度・平面度・同軸度などGD&Tの評価を自動化し、合否判定を標準化する。
現場実装と管理
インラインではタクトタイムに合わせてラインスキャンや並列化を行う。光学系の遮光・防塵、防振台、温調は必須である。ロボット・AGV搭載では可搬重量と視体積の両立、ケーブルマネジメント、セル内安全が鍵となる。結果はSPCで監視し、閾値越え時に加工条件へフィードバックする。通信はOPC UAやMQTTなどのプロトコルで実装される。
適用領域の例
- 薄板・樹脂・ゴムなど接触で変形しやすい素材の寸法・反り・面粗さ。
- 電子部品の外観検査、はんだ膨れ・リード位置、ワイヤボンド高さ。
- 溶接ビード形状、ビード幅・脚長の全数検査。
- 鋳造・鍛造の内部欠陥や肉厚分布(X線CT)。
- AM(積層造形)の層厚・表面欠陥・焼結不良のモニタリング。
課題と対策
鏡面・黒色・透明体では信号が飽和または不足しやすい。対策として、波長切替(青色・近赤外)、偏光制御、ダイナミックレンジ拡大、二視点配置、斜入射と拡散照明の組合せが有効である。透明体は反射防止スプレーや位相シフト干渉、低コヒーレンス干渉が奏功することが多い。環境変動は基準物の定期スキャンと温調で補償する。アルゴリズム面ではマルチスケール特徴とロバスト推定で外乱に強い寸法推定を実現する。
選定指針
- 対象:材質・表面・サイズ・内部/外観の別を明確化する。
- 要求:許容誤差・スループット・自動化度・設置スペースを定義する。
- 検証:ベンチ評価で不確かさを実測し、GR&Rで量産適合性を判定する。
- 保全:光学窓の汚れ監視、セルフキャリブレーション、故障予知を設ける。
以上のように非接触測定は、接触による影響を排しつつ高速・高頻度の品質保証を可能にする。方式ごとの物理特性と対象の条件を正しく突き合わせ、校正・環境・データ処理を一体設計することが、産業現場で安定して使える計測システムの鍵である。