超音波センサ
超音波センサは、人間の可聴域(約20 kHz)を超える音波を送受信し、反射波の時間・位相・周波数変化を解析して距離、存在、速度、液面、流量、厚みなどを非接触で検出する計測デバイスである。圧電素子で超音波をパルスまたは連続波として放射し、対象物からのエコーを受信して処理する。光学が苦手な透明体や粉体・液体にも適用しやすく、屋内外で安定に動作できる一方、音速が温度や気体条件で変動するため補正設計が重要である。
動作原理
超音波センサの基本はパルスエコー法である。送信から反射受信までの往復時間Δtを計測し、距離d≈cΔt/2(cは媒質の音速)で求める。連続波を用いる方式ではドップラー効果により周波数偏移から相対速度を得る。音速cは温度・湿度・気圧に依存するため、温度センサ併設や補正式によってリアルタイム補正を行うと測距誤差を抑制できる。
方式の種類
- 反射(拡散)型:対象表面で散乱したエコーを同一ヘッドで受信する汎用方式である。
- 透過型(スルービーム):送受が対向し、音束遮断を高感度で検出できる。
- ドップラー型:移動体の速度検出や流体中の粒子計測に適する。
- FM-CW・位相差型:連続波の変調や位相を解析して高分解能に測距する。
主要仕様と指標
- 測定範囲・盲域:近距離の送受切替遅延で生じるデッドゾーンを確認する。
- 分解能・繰返し精度:タイマ分解能、帯域、S/Nに支配される。
- ビーム角・指向性:周波数と振動子径で決まり、狙い分離や側波抑制に関与する。
- 応答時間:平均化窓やフィルタ設定で変化する。
- 周波数帯:一般に40 kHz帯が多く、産業用では200 kHz級もある。
- 耐環境:IP等級、動作温度、耐薬品・結露・粉塵の仕様を確認する。
- 出力:アナログ(V、mA)、デジタル(NPN/PNP、UART、I²C、CAN、PWM)を選択する。
設計・選定の要点
- 対象と表面状態:吸音体や多孔質、斜面はエコーが弱くなるため余裕利得と入射角を検討する。
- 周囲条件:温度・湿度・気流・蒸気・霧は伝搬に影響する。防風カバーや温度補正を設ける。
- 機械配置:ビーム軸上の障害物や壁面反射の多重経路を避け、遮音バッフルで迷走波を抑える。
- 電気設計:送受切替、駆動バースト幅、帯域制御、AGC、検波(エンベロープ)の整合を取る。
- 妨害対策:複数台はタイムスロット発振や符号化パルスで干渉を低減する。
誤差要因と補正
音速変動(温度・湿度・CO₂濃度)、多重反射、軸外反射、乱流・風、筐体共鳴、電気ノイズが主因である。温度センサ併設と音速モデルによる補正、時間窓で最初の到来波を抽出、移動平均・メディアン・カルマンなどのフィルタで外れ値を抑制する。キャリブレーションは既知距離でオフセットとスケールを同定し、定期点検でドリフトを監視する。
応用分野
- 在庫・プロセス:タンク液面・粉面レベル、袋体有無、容器内充填高さの計測。
- モビリティ:AGV/AMRの障害物検知、パーキング支援、ドローン高度維持。
- 設備・FA:ワーク有無、ピック&プレース着座確認、ウェブ厚み・蛇行監視。
- 水計測:開水路流量のレベル換算、パイプ内速度のトランジットタイム法。
- 日用品:自動蛇口・ソープディスペンサ、近接トリガ。
実装アーキテクチャ
送信側はHブリッジ等で振動子を共振周波数近傍で駆動し、所定のバースト数で指向性と到来時間分離を両立させる。受信側は低雑音アンプ、帯域通過フィルタ、整流・包絡線検波、A/Dまたはタイマ入力でTOFを取得する。マイコンでは入力キャプチャでΔtをナノ秒〜マイクロ秒分解能で測定し、温度補正と外れ値処理を割り込みで行う。
音響メカ設計
- ホーン・グリル:開口とバッフルでビームを整形し、側波を抑制する。
- ダンピング:取り付け部の機械共振を制動し、セルフエコーを短縮する。
- 防滴・結露:撥水メンブレンやドレン構造で感度低下を防ぐ。
- 筐体材質:温度サイクルで寸法・応力が変化しない設計とする。
安全・規格・適合
機械安全(ISO 12100、ISO 13849の概念に基づくPL設計)、電磁両立性(EMC)、環境規制(RoHS)への適合を考慮する。防水防塵はIP等級で指定し、産業ネットワーク接続時はEMI設計とアース、ESD対策を徹底する。爆発雰囲気では防爆仕様の採用を検討する。
評価とチューニング
- 感度・直線性:基準ターゲットで距離特性を掃引し、ゲインとしきい値を最適化する。
- 指向性:回転治具で角度応答を測定し、必要なら機械的シールドを追加する。
- 温度ドリフト:温調環境で多点校正を行い、補正係数テーブルを生成する。
- 干渉耐性:複数台同時運転で誤検出率を評価し、発振周波数・位相・タイミングを分離する。
設置時の注意(補足)
センサ面は対象に対して可能な限り垂直に向け、周囲のリブ・配管・壁からの反射を避ける。液面計測では泡立ち・波立ちを考慮し、ガイドパイプや消波筒を併用する。屋外は風向への感度を意識し、遮風板で安定化する。
導入チェックリスト(補足)
- 必要レンジと盲域の整合
- ターゲット材質・角度・粗さ
- 温湿度・気流・粉塵・結露条件
- 必要分解能・応答時間・S/N
- 出力インタフェースと上位接続
- 取付スペース・ビーム遮蔽・保護等級