超純水|限りなく不純物をゼロに近づけた水

超純水

超純水(ちょうじゅんすい、英語:Ultrapure Water / UPW)とは、イオン、微粒子、有機物、溶存ガス、微生物など、あらゆる不純物を極限まで除去した高純度の水である。H₂Oに限りなく近い状態に精製されており、比抵抗値は17.5〜18.2 MΩ・cm程度に達する。これは理論上の純水の抵抗率(25℃で18.24 MΩ・cm)に迫る数値であり、電気をほとんど通さないことが特徴のひとつである。半導体製造をはじめ、医薬品・バイオ・精密機械など、微量な不純物も許容できない高精度プロセスに欠かせない工業用水として広く利用されている。

定義と純水との違い

水は不純物の含有量によって、水道水・純水・超純水の3段階に大別される。純水は逆浸透膜(RO膜)やイオン交換樹脂によってカルシウムイオン・マグネシウムイオンなどの主要なイオンを除去したものであり、比抵抗値は5〜18 MΩ・cm程度にとどまる。一方、超純水はこの純水をさらに精製し、イオンに加えて有機物・微粒子・溶存ガス・生菌まで取り除いたものである。不純物量をプールで例えると、水道水はドラム缶2〜数本分、純水はコップ1杯分、超純水は耳かき1さじ分とも表現される。DIW(De-Ionized Water)と呼ばれることもある。

物理的・化学的特性

超純水の純度を評価する主な指標は、比抵抗(電気抵抗率)・TOC(全有機炭素)・微粒子数・生菌数・シリカ濃度・溶存酸素量などである。半導体製造で要求される水質基準では、比抵抗が18 MΩ・cm以上であることが求められる。この値の厳しさを示す一例として、Fe²⁺イオンが1 μg/L溶解しただけで比抵抗は17 MΩ・cm程度にまで低下してしまうことが知られている。溶解物質の許容濃度はμg/L(ppb)ないしng/L(ppt)オーダーと極めて微小であり、微粒子については最小パターン寸法の10分の1以上の大きさのものが品質問題につながるとされる。

水の種類 比抵抗の目安 主な用途
水道水 0.002 MΩ・cm 以下 一般生活・農業用水
純水 5〜18 MΩ・cm 工業用洗浄・ボイラー用水
超純水 17.5〜18.2 MΩ・cm 半導体製造・医薬品・精密分析

製造プロセス

超純水の製造システムは、前処理システム・一次純水製造システム・二次純水製造システム(サブシステム)の3段階で構成される。前処理では凝集沈殿・砂ろ過・活性炭フィルターにより、原水中の浮遊物質・塩素・有機物を除去する。続く一次純水製造工程ではRO膜(逆浸透膜)とイオン交換樹脂が中心的役割を担い、イオン類・有機物・溶存ガスをほぼ除去して純水ランクの水質を得る。最終段階のサブシステムでは、紫外線(UV)照射によるTOC分解・限外ろ過膜(UF膜)による微粒子除去・脱炭酸膜による溶存ガス除去・混床式イオン交換樹脂による残留イオンの除去が行われ、半導体製造に要求される高純度水質が実現される。

主な精製技術

超純水製造に使われる代表的な技術を以下に示す。それぞれが除去対象とする不純物の種類が異なるため、複数の技術を組み合わせることが不可欠である。

  • 逆浸透膜(RO膜):高圧で原水を特殊膜に通し、細菌・ウイルス・重金属・溶解性イオンを95〜99%除去する。
  • イオン交換樹脂:陽イオン・陰イオンをそれぞれ選択的に樹脂へ吸着させ、電解質を取り除く。混床式は高純度化に特に有効である。
  • 紫外線(UV)照射:波長185 nmのUV光によりTOC(全有機炭素)を酸化分解し、有機物濃度を低減する。
  • 限外ろ過膜(UF膜):ナノメートルスケールの細孔を持つ膜で微粒子・生菌・コロイドを物理的に除去する。
  • 脱炭酸膜:比抵抗に大きく影響する溶存二酸化炭素を気液分離の原理で除去する。

半導体製造における用途

半導体製造では、いわゆる8大工程と呼ばれる複数のプロセスが繰り返されるが、各工程の前後に必ず洗浄工程が設けられており、ここで超純水が大量に使用される。エッチング工程後の残留不純物の除去、イオン注入工程後の残留イオンの洗い流し、CMP(化学機械研磨)工程でのウェハ研磨・切断など、用途は多岐にわたる。近年の半導体製造では加工の微細化が数nmオーダーにまで進んでいるため、わずかな不純物でも回路形成やエッチング反応を乱し、製品の歩留まりに深刻な影響を与える。このため超純水の品質管理は半導体工場の生産性を直接左右する要素となっている。

半導体以外の用途

超純水の用途は半導体産業にとどまらない。医薬品製造では注射剤の調製や製剤洗浄に用いられ、わずかなエンドトキシン(細菌由来の毒素)も許容されないため日本薬局方に規定された「注射用水」基準を満たす必要がある。バイオ・ライフサイエンス分野では遺伝子研究やタンパク質解析における試薬調製・機器洗浄に利用される。また火力発電所の超高圧ボイラーでは腐食・スケール防止のために超純水が使われるほか、液晶・有機ELパネルの製造工程でも高純度洗浄水として不可欠な存在となっている。

機能水との関係

超純水を母液として特定のガスを溶解させた希薄洗浄液は「機能水」と呼ばれ、半導体製造の洗浄技術として注目されている。代表例として水素水・オゾン水・炭酸水・アンモニア水・窒素水などがある。これらはそれぞれ酸化・還元・帯電防止といった異なる洗浄機能を持ち、従来の薬液洗浄と比べて環境負荷の低減や廃液処理コストの削減が期待できる。機能水の性能は母液となる超純水の純度に直結するため、ベースとなる超純水の品質管理が特に重要である。

排水処理と環境負荷

半導体工場では大量の超純水が消費されるため、排水処理も大きな課題となる。使用後の排水には薬液・シリコン微粒子・フッ素化合物などが含まれており、そのまま放流することはできない。栗田工業・オルガノ・野村マイクロ・サイエンスといった水処理専業メーカーが排水処理システムを提供しており、有価物(シリコン、純水回収水など)の回収技術も発展している。水資源の制約が強まる中、超純水の回収・再利用率向上は半導体工場の持続可能な操業に向けた重要な技術課題となっている。

市場動向と主要メーカー

超純水装置の世界市場規模は2033年までに262億米ドルに達し、年平均成長率9.5%で拡大すると予測されている。これは半導体の微細化・大型化投資に加え、太陽電池・EV向け電池部材など新興分野での需要拡大が背景にある。日本国内の主要メーカーとしては、栗田工業(超純水装置・前処理装置・機能水装置)、オルガノ(超純水製造システム・有機溶剤精製システム)、野村マイクロ・サイエンス(超純水装置・シリコン排水回収装置)などが知られ、いずれも半導体製造装置メーカーと連携しながらシステムをワンストップで提供する体制を整えている。

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