研磨材|硬い粒子で表面を削り整える素材

研磨材

研磨材は、工作物の表面を微小に削り取り、寸法や形状、面粗さを整えるために使う硬い粒子の総称である。英語ではabrasiveと呼ぶ。砥石や研磨布紙に固めて使う場合も、液や油に混ぜて遊離状態で使う場合もある。工作物より硬いことが前提で、硬さだけでなく、粒が適度に割れて新しい切れ刃を出す性質(自生作用)も性能を左右する。金属部品の研削加工から、半導体ウェーハの鏡面仕上げ、塗装前の素地調整まで、製造業のほぼ全域で使われている。

天然鉱物から人造砥粒へ移った歴史

古代から人類は砂岩やエメリー(鋼玉と磁鉄鉱の混合物)、ざくろ石で刃物を研いできた。転機は19世紀末に訪れる。1891年、米国のエドワード・アチソンが電気炉でケイ砂とコークスを加熱中に炭化ケイ素の結晶を見つけ、「カーボランダム」の名で工業生産を始めた。その数年後には、ボーキサイトを電気炉で溶融して作る人造アルミナ砥粒も実用化される。品質がそろわない天然材は、20世紀前半のうちに大半が人造材に置き換わった。1955年にはGE社が高温高圧法で人造ダイヤモンドを合成し、1957年には同社のウェントーフが立方晶窒化ホウ素(CBN)の合成に成功した。こうして現在の主要な砥粒の顔ぶれがそろったのである。

硬さと性質で比べる主要な砥粒

砥粒の硬さはモース硬度よりも、ヌープ硬さやビッカース硬さで比べた方が差がはっきりする。代表的な人造研削材の性質を下表にまとめた。数値は文献によって幅があるため、目安として扱いたい。

種類 JIS記号 ヌープ硬さ(目安) 主な対象材
褐色アルミナ A 約2,000 一般鋼、重研削
白色アルミナ WA 約2,100 焼入れ鋼、工具鋼
黒色炭化ケイ素 C 約2,500 鋳鉄、非鉄金属、石材
緑色炭化ケイ素 GC 約2,600 超硬合金、ガラス、セラミックス
CBN ― 約4,500 高硬度の鉄系材料
ダイヤモンド ― 約7,000〜8,000 超硬合金、セラミックス、非鉄

アルミナ系砥粒

酸化アルミニウムを主成分とする砥粒で、生産量は最も多い。褐色のA砥粒は酸化チタンを2〜3%ほど含むため粘りがあり、荒研削に向く。純度99%以上のWA砥粒はもろく割れやすいぶん、発熱を抑えたい焼入れ鋼の仕上げに好まれる。ほかにも、クロムを加えた淡紅色のPA、ゾルゲル法で微結晶化したセラミック砥粒などが使い分けられている。

炭化ケイ素系砥粒

炭化ケイ素はアルミナより硬い反面、靭性が低い。鋭い刃先がすぐ割れて更新されるため、切りくずが粉状になる鋳鉄や、延びやすいアルミ・銅合金の加工で目詰まりしにくい。高温では鉄と反応しやすく、鋼の研削には基本的に向かない。純度の高い緑色のGCは超硬工具の研削に使われる。

超砥粒と呼ばれるダイヤモンドとCBN

ダイヤモンドとCBNは、従来の砥粒と区別して「超砥粒」と呼ぶ。ダイヤモンドは物質中で最も硬い。ただし、大気中では600〜700℃あたりから酸化が始まり、鉄とは高温で炭素が拡散する反応を起こす。そのため鋼の加工には使わず、超硬合金、セラミックス、ガラス、CFRPといった非鉄系の難削材に用いる。CBNの硬さはダイヤモンドに次ぐ。熱的には1,300℃前後まで安定しており、鉄とも反応しにくいため、HRC60を超える軸受鋼や高速度工具鋼の研削で力を発揮する。現場の感覚でいえば、CBNホイールの価格は同寸法のWA砥石の数十倍になることも珍しくない。それでもドレッシング間隔が大きく延び、寸法も安定するので、自動車部品のような量産ラインでは1個あたりの加工コストがかえって下がる例が多い。

粒度の表示とJIS規格

粒の大きさは「粒度」で表し、数字が大きいほど細かい。日本ではJIS R 6001-1およびJIS R 6001-2で規定されており、ふるい分けで測る粗粒はF4〜F220、沈降法などで測る微粉はF230〜F2000の範囲で区分される。研削砥石では#46〜#80あたりが一般研削、#120以上が仕上げ用といった選び方が多い。数μm以下の領域になると、平均粒径を直接μmで示す製品も増えてくる。研磨布紙の粒度はJIS R 6010でPから始まる記号(P40〜P2500など)を使うため、砥石のF表示とは数字が同じでも粒の大きさが一致しない点に気をつけたい。

使い方による分類

同じ砥粒でも、どう保持して工作物に当てるかで加工の性格は大きく変わる。大まかには次のような形態がある。

  • 固定砥粒:ビトリファイドやレジノイドの結合剤で固めた研削砥石、ホーニング砥石、超仕上げ用の砥石
  • 研磨布紙:紙や布の基材に砥粒を接着したサンドペーパー、研磨ベルト、ディスク
  • 遊離砥粒:砥粒を液に分散させたスラリーやコンパウンドを使うラッピングやポリッシング
  • 投射材:圧縮空気で砥粒を吹き付けるサンドブラストや、遠心力で投げるショットブラスト

工作物材質から考える選び方の実務

選定の基本はわかりやすく、鉄系はアルミナ系かCBN、非鉄系や鋳鉄は炭化ケイ素系かダイヤモンドである。とはいえ現場では例外が多い。たとえばステンレス鋼SUS304は粘って目詰まりしやすいため、WAより自生作用の強いセラミック砥粒や、粒度をひと回り粗くした砥石が選ばれやすい。ブラストの投射材では、アルミナ系は1回あたりの単価が安い代わりに破砕しやすく、回収して再利用できる回数が少ない。総コストで比べると、硬く割れにくい投射材の方が安くなる場合もある。要するに、カタログに書かれた硬さだけで決めるのは危うい。廃棄量や交換頻度まで含めて見積もる方が、実際の判断としては確かである。

粉じん対策と取り扱いの注意点

研磨や研削の工程では、砥粒の破片と工作物の微粉が混ざった粉じんが出る。日本では粉じん障害防止規則により、研磨材を吹き付ける作業や、研磨材を使って動力で研磨する作業の多くが粉じん作業に指定されている。局所排気装置の設置や防じんマスクの着用が義務づけられる場面も少なくない。遊離ケイ酸を含む天然ケイ砂は、じん肺の原因になるため、ブラスト用としては多くの国で使用が制限されている。砥石の側にも注意点がある。回転式の研削砥石には最高使用周速度が定められており、規定を超えると破壊事故につながる。砥石を交換したら、作業を始める前に1分以上、交換時には3分以上の試運転を行うことが労働安全衛生規則で定められている。

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