抜取検査
抜取検査(抜き取り検査,サンプリング)は、製造や品質管理において、全数検査が難しい場合に使用される手法である。統計手法に基づいている。この手法では、製造ロットの中から一部の製品をランダムに選び出し、そのサンプルを検査することによって、全体の品質を推定する。抜取検査は、コスト削減や時間短縮を図りながら、製品の品質保証を行うための重要なプロセスである。特に、大量生産を行う工場などでは、全数検査が非現実的なため、抜取検査が効率的な方法となる。
抜取検査の基本的な概念
製品を検査するときに、製造した製品をすべて検査する方式を全数検査というが、これに対して、すべての製品の中から一部を抜き取って、抜き取られたものだけを検査する方式が抜取検査である。抜取検査は、破壊検査のように、全数検査が不可能なときや、検査に多大な費用と時間がかかるときに有効な検査方法である。抜取検査の基本的な考え方は、統計学に基づき、特定のロットからランダムに製品を選び、そのサンプルを詳細に調査することで、ロット全体の品質を推定する。
全数検査との比較
全数検査は、ロット内のすべての製品を検査する方法であり、抜取検査とは対照的である。全数検査は、より高い信頼性を持つが、時間とコストが非常にかかるため、特に大量生産の場合には非現実的である。一方、抜取検査は一部の製品のみを対象とするため、効率的でコストも低く抑えられるが、全体の品質を正確に反映するには限界がある。製品の特性や業界基準によって、どちらの方法が適しているかが決定される。
サンプリング
抜取検査では、サンプリングによってそのロットが合格か、不合格かを判定する。ロットというのは、同じ時期に同じ状態で製造された製品の集まりのことである。ロットから製品を何個か抜き取り、抜き取った製品について、品質の評価を行う。そして、この情報に基づき、ロットの合格・不合格を判定する。ロットから抜き取られた製品の集まりをサンプルといい、サンプルの中の個々の製品を検査単位と呼ぶ。
適切なサンプリング手法
サンプルがロット全体を代表しているという前提に基づいているため、適切なサンプリング手法が重要となる。サンプリングの方法や数量は、検査の目的やロットの大きさ、許容される品質の基準に応じて決定される。ロットの合否に用いるデータの種類によって、計数型と計量型に大別できる。
- 計数型:個々の製品が良品か不適合品かを判定したデータを利用する。
- 計量型:製品について何らかの特性を測定したデータを利用する。
抜取検査の種類
抜取検査には、主に3つの種類がある。「単純抜取検査」は、ロットからランダムに一定数のサンプルを抽出し、その結果に基づいてロット全体の品質を判断する方法である。「二重抜取検査」は、最初の検査で曖昧な結果が出た場合に、追加のサンプルを取って再度評価する方法である。また、「逐次抜取検査」は、検査結果に応じて順次サンプルを増やしていく方式であり、特定の条件を満たした段階で検査を終了することができる。
検査方式の設計思想
抜取検査は、検査方式の設計思想によっても分類できる。売り手(生産者)と買い手(消費者)の両者を保護する立場で設計された検査を規準型、不合格と判定されたロットは全数の選別を行うように設計された検査を選別型という。また、品質レベルによって「きつい検査」「なみ検査」「ゆるい検査」を使い分ける検査方式を調整型という。
規準型抜取検査
品質の良いロットが抜取検査で不合格となる確率を生産者危険といい、品質の悪いロットが抜取検査で合格となる確率を消費者危険という。規準型抜取検査は、生産者危険と消費者危険の両方を一定の小さな値となるように実施する抜取検査である。
計数規準型抜取検査
計数規準型抜取検査は、不適合品率で検査方式を決める方法で、製造ロットからランダムに一定数のサンプルを抽出し、欠陥品の数を数えて、それが許容範囲内に収まるかどうかを確認する。たとえば、できるだけ合格にさせたい良いロットの不適合品率をPo、できるだけ不合格にさせたい悪いロットの不適合品率をPとする。不適合品率Poのロットが不合格になってしまう確率が生産者危険で、αと表す。このとき、合格する確率は1-αとなる。計数規準型抜取検査は、特に製品の外観や機能に対する欠陥が明確に数値化できる場合に適しており、大量生産の現場で効率的に利用される。
計量抜取検査
計量抜取検査は、抜き取った製品の特性値を測定して、その平均値が規格外になっている割合にもとづいて、ロットの合否を決める検査である。JISでは、JIS Z 9003で規定されている。
メリット
抜取検査の最大の利点は、コストと時間の削減である。全数検査では膨大なリソースが必要となるが、抜取検査では必要なサンプル数を最小限に抑えながらも、品質管理が可能となる。また、抜取検査は迅速に実施できるため、製造ラインの停止を最小限に抑えることができる。さらに、大量生産や高頻度で検査が必要な場合でも、効率的に品質管理を行うことができる。
デメリット
抜取検査には欠点も存在する。サンプルがロット全体を正確に反映していない場合、品質に問題がある製品が見逃される可能性がある。これは、統計的な誤差やサンプル選定の偏りが原因となる場合が多い。また、抜取検査では、ロット全体の品質に関する確実性が全数検査ほど高くないため、品質リスクを完全に排除することは難しい。このため、抜取検査の設計には慎重な計画と統計的分析が求められる。
検査基準と許容品質水準(AQL)
抜取検査では、許容品質水準(AQL: Acceptable Quality Level)という基準が使用される。AQLは、ロット全体の中で許容される欠陥品の割合を示しており、この基準に基づいてサンプルの合否が決定される。例えば、AQLが1%の場合、100個中1個までの欠陥品が許容されることになる。AQLの設定は、製品の性質や市場の要求に応じて変わり、厳格な品質管理が求められる業界では、より低いAQLが設定される。
統計的品質管理との連携
抜取検査は、統計的品質管理(SQC: Statistical Quality Control)と連携して実施されることが多い。統計的品質管理は、製造プロセス全体のデータを収集・分析し、品質を最適化するための手法である。抜取検査の結果を統計的に分析することで、製造プロセスの改善点を特定し、品質を向上させることが可能となる。これにより、製品の品質を一貫して維持しつつ、無駄やコストの削減を図ることができる。