工程管理
工程管理とは、製品を決められた品質と数量で、約束した納期までに、なるべく少ない費用で作るために、生産工程の順序・日程・負荷・進み具合を計画し、統制する活動である。JIS Z 8141(生産管理用語)では、生産管理を支える中心的な機能の一つとして位置づけられている。仕事の中身は、事前に段取りを決める「計画」と、実績を計画に近づける「統制」の二段階に大きく分けられる。量産工場の組立ラインのほか、受注生産の機械加工工場、プラント建設の現場でも同じ考え方が使われている。
科学的管理法から始まった歴史
考え方の原点は、20世紀初頭にF.W.テイラーがまとめた科学的管理法にある。作業を要素ごとに分けて時間を測り、1日の標準的な仕事量を決めるという手法は、その後の標準時間の考え方につながった。テイラーの協力者だったH.L.ガントは1910年代に横棒で日程を表す図を考案し、これが現在も使われるガントチャートの始まりとなった。第二次世界大戦後には、1957年にデュポン社がCPMを、1958年に米海軍がポラリス・ミサイル開発のためにPERTを開発し、作業どうしの依存関係を網の目状に表す手法が広まった。日本では1970年代の石油危機をきっかけにトヨタ生産方式が注目され、在庫を減らしながら流れをつくる独自の工程管理が国内外に知られるようになった。
計画段階でおこなうこと
計画段階の仕事は、手順計画、工数計画、日程計画の三つに分けられる。手順計画では、どの設備で、どの順番に、どの加工をするかを決める。工数計画では、仕事量と設備・人員の能力を比べ、負荷が能力を超える工程がないか確認する。日程計画は、それらの結果をもとに、各工程の着手日と完了日を割り付ける作業である。三つは一方向に進むものではなく、工数計画で負荷オーバーが見つかれば手順を組み直すといった往復が何度も起こる。
工数とタクトタイムの求め方
負荷の見積もりには、次の式がよく使われる。
必要工数 = 1個あたりの標準時間 × 生産数量 ÷ 稼働率
流れ生産のラインでは、タクトタイムが基準になる。
タクトタイム = 1日の稼働時間 ÷ 1日の必要生産数
たとえば1日の稼働時間が7.5時間(27,000秒)、必要数が900個なら、タクトタイムは30秒となる。どの工程も30秒以内で作業を終えられるように、作業の配分を調整していく。
統制段階の三つの管理
計画どおりに進む工場はまず存在しない。設備の故障、材料の入荷遅れ、作業者の欠勤、急な特急注文など、ずれを生む原因はいくらでもある。そこで統制段階では、進度管理、余力管理、現品管理の三つを並行しておこなう。進度管理は、予定と実績を比べて遅れを早めに見つけ、残業や外注で取り戻す活動である。余力管理は、工程ごとの能力の余り具合をつかみ、仕事を振り替える判断に使われる。現品管理では、仕掛品や部品が「どこに、いくつあるか」を正確に把握する。三つのうち現品管理が最も軽く見られがちだが、現物の数が合わないと、進度も余力も正しく判断できなくなる。
代表的な日程計画手法の比較
日程を組む手法はいくつもあり、生産形態によって向き不向きがはっきりしている。主な手法を次の表にまとめる。
| 手法 | 登場時期 | 向いている生産形態 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|
| ガントチャート | 1910年代 | 小〜中規模の個別生産 | 見てすぐわかる | 作業間の依存関係が読み取りにくい |
| PERT・CPM | 1957〜1958年 | 大型設備、プロジェクト型の受注生産 | クリティカルパスを特定できる | 作業数が増えると図が複雑になる |
| MRP | 1960年代 | 部品点数の多い組立型の見込み生産 | 部品表から必要量と時期を計算できる | 設備能力を無限とみなすため負荷が偏りやすい |
| かんばん方式 | 1950〜1960年代 | 需要が安定した繰り返し生産 | 在庫とリードタイムを減らせる | 需要の大きな変動に弱い |
品質・原価との関係
製造業ではQCD(品質・原価・納期)という言葉が使われ、工程管理は主にD(納期)を担当する。ただし、三つは独立していない。納期を守ろうとして無理に作業を急がせれば不良が増え、品質管理の負担が大きくなる。逆に、余裕を持たせすぎると仕掛品が積み上がり、在庫金利や保管費として原価管理の数字を悪くする。ISO 9001の8.5項でも、製造とサービス提供を管理された状態でおこなうことが求められており、品質マネジメントの審査では工程の計画と実績の記録がよく確認される。
現場でつまずきやすいポイント
中小の加工工場を中心に、導入や運用の段階でよく見られる失敗を挙げる。
- 計画は細かく作るのに、実績の入力が数日遅れになり、画面上の進み具合と現場が合わない
- 工場全体の稼働率を上げようとして、ボトルネックではない工程まで目いっぱい動かし、仕掛品を増やしてしまう
- 段取り替えの時間を見積もりに入れず、品種の多い日に計画が大きく崩れる
- 特急品を何度も割り込ませ、そのたびに通常品の納期が少しずつ遅れていく
実務では、パッケージの生産スケジューラを導入する費用は、小規模なもので年間数十万円、ERPと連携させる大がかりな構成では数千万円規模になることもある。ところが、ソフトを入れただけで遅れが減った例は多くない。成果が出ている工場の多くは、まず現品の数を正確に合わせ、作業者が実績をその場で入力できる仕組みを整え、そのうえでシステムを入れている。ボトルネック工程の前にだけ少し在庫を置き、そこを止めないことを最優先にする考え方は、TOC(制約理論)の「ドラム・バッファー・ロープ」として知られ、多品種少量生産の現場でも使いやすい。
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