定格電圧
定格電圧とは、機器・装置・部品が仕様どおりの性能・安全性を満たすことを製造者が保証する基準電圧である。通常使用時に許容される電圧変動範囲(例:±10%など)の中心として与えられ、材料の絶縁耐力、クリアランス・沿面距離、温度上昇、スイッチング素子の定格、端子・導体の電流容量、過電圧カテゴリなど総合的な設計条件により決定される。ユーザーはこの電圧を超えない範囲で機器を運用し、試験・検査は当該定格を基準に設定する。
規格・規定の位置づけ
定格電圧は国際規格のIEC、国内規格のJISにより表示方法と適用範囲が整理されている。測定器や家電はIEC/EN/JISの製品個別規格で名板記載が求められ、低圧配電機器では過電圧カテゴリ(CAT Ⅰ~Ⅳ)や汚染度、絶縁協調クラスと併せて決める。産業機器では電気事業法・電気用品安全法の技術基準に適合し、試験方法やマーキング要求が付随する。
測定条件と周波数
定格電圧は周波数と不可分である。交流機器は50/60Hzの別を明記し、電動機や変圧器は周波数依存のリアクタンス・鉄損・温度上昇を考慮する。計装・電源装置では入力100V/200V系や三相200V/400V系など系統電圧に合わせた定格を設定する。直流機器はリップルや過渡応力を考慮して定格を与える。
絶縁協調とクリアランス/沿面距離
所要絶縁は公称系統電圧より高い一時的過電圧・サージに耐えるよう決める。クリアランス(空間距離)と沿面距離は実使用の標高、汚染度、材料グループ、トラッキング特性で補正し、インパルス耐電圧(例:1.2/50µs)を満足する寸法を設計する。これにより名板の定格電圧が許容する環境条件が明確になる。
選定の実務ポイント
- 系統の公称電圧・周波数と合致する名板を選ぶ
- 許容変動(例:±10%)と起動・突入時の電圧低下を見込む
- 過電圧カテゴリ、汚染度、標高、周囲温度を確認
- 保護協調:遮断器・ヒューズの定格と立上り特性を整合
- スイッチング電源・VFD使用時は高調波・dv/dtによる絶縁応力を評価
表示・記法と名板の読み方
名板には例として「AC100V 50/60Hz」「AC200/220V」「DC24V」などと記す。複電圧機器はスイッチ切替やタップ接続で対応し、三相機器は「3φ200V」のように相数を併記する。二重絶縁機器は保護等級シンボルと併記し、定格電圧の他に定格消費電力・電流・効率・力率なども確認する。
直流機器に特有の留意点
DCはアーク消弧が難しく開閉器の定格がACと異なる。コンデンサ・半導体の定格電圧は温度係数・リップル電流で事実上低下しうるため、余裕率(ディレーティング)を設ける。バッテリ系は充電電圧上昇や再生電力による一時的過電圧を想定する。
交流機器の相電圧・線間電圧
三相系では相電圧と線間電圧が√3倍の関係にある。名板の定格電圧が線間か相間かを誤解すると過励磁や不足トルクの原因となる。単相2線/3線では中性線の有無や接地方式を確認し、機器の結線図と一致させる。
周囲条件とディレーティング
周囲温度上昇、標高(気圧低下)、湿度・汚染度は絶縁破壊電圧と放熱に影響する。ファンレス筐体や密閉盤では自己発熱を見込み、定格電圧は満たしていても連続定格出力や寿命が制約される場合がある。必要に応じて強制冷却・熱設計・クリアランス拡大で補正する。
保護等級・法規と区分
日本の配電では低圧・高圧・特別高圧の区分に応じて機器定格電圧の階層が変わる。感電・火災防止の観点から遮断器の定格遮断容量、絶縁監視、接地方式(TT/TN/IT)などの保護方策を併用し、試験記録と適合宣言を整える。
試験・検証
受入・出荷では耐電圧試験(AC/DC)、絶縁抵抗測定、漏れ電流測定、インパルス耐量の評価を行う。電子部品はサージ(ESD、EFT、雷サージ)試験で定格電圧超過時の故障モードを把握し、必要ならサプレッサ・フィルタ・保護デバイスで対策する。
似た用語との違い
公称電圧は系統や機器群の代表値、動作電圧は実際の印加電圧、最大許容電圧は短時間含む上限、耐電圧は破壊に至らない試験値を指す。定格電圧はこれらの基準の中心であり、運用・設計・試験の共通言語となる。