冷凍機|熱を汲み上げ低温をつくり出す機械

冷凍機

冷凍機は、低温側から熱を汲み上げて高温側へ捨てることで、対象物や空間を周囲温度より低く保つ機械である。冷媒が蒸発するときに周囲から熱を奪う性質を利用する装置が大半を占め、ビル空調の冷水製造、食品の冷凍・冷蔵、化学プラントのプロセス冷却、半導体工場の恒温設備など、用途は幅広い。熱を移動させる原理はヒートポンプと同じで、低温側の利用を目的とする場合に冷凍機と呼ばれる。

機械式冷凍の誕生と発展

人工的に冷やす技術は、1834年に米国のジェイコブ・パーキンスがエーテルを使った蒸気圧縮式装置の特許を取得したことに始まるとされる。実用化を大きく進めたのはドイツのカール・フォン・リンデで、1870年代にアンモニアを冷媒とする圧縮式冷凍機を開発し、ビール醸造所に納入した。家庭用冷蔵庫の普及は20世紀に入ってからである。1930年前後に毒性も可燃性も低いフロン類(CFC-12など)が登場すると、冷媒の安全性の問題は一気に解決したように見えた。ところが1970年代にオゾン層破壊が指摘され、1987年のモントリオール議定書を経て、冷媒は世代交代を繰り返すことになる。

蒸気圧縮式冷凍サイクルの仕組み

現在もっとも広く使われる蒸気圧縮式は、次の4つの要素を配管でつないだ閉回路で構成される。

  • 圧縮機:低圧の冷媒ガスを吸い込み、高温・高圧のガスにする
  • 凝縮器:高圧ガスの熱を冷却水や外気へ放出し、液化させる
  • 膨張弁:高圧の液を絞って減圧し、低温の気液混合状態にする
  • 蒸発器:低温の冷媒が被冷却物から熱を奪って蒸発する

蒸発器で得られる冷却作用が目的であり、圧縮機の動力はその熱を「坂の上」へ運ぶための仕事にあたる。凝縮器と蒸発器はいずれも熱交換器で、空冷か水冷か、シェルアンドチューブかプレート式かによって装置の大きさや保守の手間が変わる。

性能を表す指標と冷凍トン

冷凍機の効率は成績係数(COP)で評価し、COP = Qe / W で表す。Qeは冷凍能力(kW)、Wは圧縮機の入力(kW)である。大型の水冷ターボ機では定格COPが6を超える機種もある。能力の単位には冷凍トンも根強く残っており、0℃の水1トンを24時間で0℃の氷にする能力を基準とする日本冷凍トンは約3.86kW、米国冷凍トン(USRT)は約3.517kWと値が異なる。カタログを読む際に両者を取り違えると、約1割の能力差が生じる点に注意したい。

圧縮方式による分類

蒸気圧縮式は圧縮機の構造で区分されることが多い。容量帯と用途の目安を以下に示す。

方式 能力の目安 主な用途 特徴
往復動(レシプロ) 数kW〜数百kW 冷凍倉庫、ショーケース 構造が単純で修理しやすい
スクロール 数kW〜数十kW パッケージエアコン、チラー 振動・騒音が小さい
スクリュー 100kW〜数MW プロセス冷却、空調用チラー 液圧縮に比較的強い
ターボ(遠心) 約1,000kW〜1万kW超 地域冷房、大規模ビル 大容量で高効率

吸収式という別の選択肢

電動の圧縮機を使わず、熱で冷やす方式が吸収式である。日本の空調で主流となっているのは、水を冷媒、臭化リチウム水溶液を吸収液とする組み合わせだ。内部を約1kPaの高真空に保つことで、水は5℃前後でも沸騰し、7℃程度の冷水をつくり出せる。蒸気やガスの燃焼熱で吸収液を再生するため、COPは一重効用で約0.7、二重効用で1.2〜1.4と圧縮式より低い。それでも電力の契約容量を抑えたい施設や、工場排熱・コージェネレーションの温水が余っている現場では、運転コストで圧縮式を下回る例が少なくない。真空度が落ちると能力が急激に低下するので、抽気装置の点検は欠かせない。

冷媒の変遷と環境規制

冷媒選びは、オゾン層保護から地球温暖化対策へと軸足を移してきた。CFCやHCFCの全廃後に普及したR-134a(GWP 1,430)やR-410A(GWP 2,088)も、2016年に採択されたキガリ改正によって段階的削減の対象となった。代替としてGWP 675のR-32、GWPが1未満のHFO系冷媒、そして自然冷媒への関心が高まっている。二酸化炭素は臨界温度が31.1℃と低く、高圧側を10MPa前後の超臨界状態で運転するため、配管や機器に高い耐圧設計を求める。アンモニアはGWPがゼロで熱力学的性能にも優れるが、毒性と微燃性があり、大型冷凍倉庫などでは二次冷媒(ブライン)と組み合わせて居住空間へ漏れない構成をとる。

国内の法規制

国内では高圧ガス保安法の冷凍保安規則が適用され、法定冷凍能力がフルオロカーボン(不活性)で50トン以上、アンモニアなどでは20トン以上の設備は都道府県知事の許可が必要になる。2015年4月施行のフロン排出抑制法では、業務用機器の管理者に3か月に1回以上の簡易点検を義務づけ、圧縮機の定格出力が7.5kW以上の機器には有資格者による定期点検も課している。冷媒の規格や安全分類は ISO 817 や ISO 5149 で国際的に整理されている。

現場での選定と運用の勘所

設備担当者が見落としやすいのは、定格点ではなく部分負荷での効率である。空調用の冷凍機は年間の大半を負荷率30〜70%で運転するため、インバータ制御のターボ機やスクリュー機は、定格COPが同程度でも年間消費電力量で2割前後の差がつくことがある。複数台を設置する場合、台数制御のロジック次第で効率が大きく変わる。水冷機では冷却塔の水質管理も性能を左右し、凝縮器チューブにスケールが0.1mm付着するだけで凝縮圧力が上がり、消費電力が数%増えるとされる。初期費用は吸収式のほうが割高になりやすいが、燃料単価や受電設備の増強費まで含めて比較すると、判断が逆転するケースもある。更新時には冷媒の将来的な入手性と価格動向を確認し、法定点検の手間も含めたライフサイクルコストで機種を絞り込むのが実務的な進め方である。

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