付加価値|生産過程で新たに生み出された価値

付加価値

付加価値は、企業が生産や販売の活動を通じて新しく生み出した価値を指す。具体的には、売上高から、外部から買った原材料や部品、サービスの代金を差し引いた額になる。英語ではvalue addedと呼ぶ。国内のすべての事業者の付加価値を合計すると、ほぼ国内総生産(GDP)になる。個々の企業にとっては「自社がどれだけ稼いだか」を測る基本の指標であり、経営分析、税制、補助金の審査など、多くの場面で計算の土台として使われている。

概念の成り立ちと付加価値税

「生産によって価値が上乗せされる」という考え方は、アダム・スミスやデヴィッド・リカードの古典派経済学の価値論にさかのぼる。ただし、実務の指標として広く使われるようになったのは20世紀に入ってからである。大きなきっかけは、1954年にフランスが導入した付加価値税(TVA)であった。財務官僚のモーリス・ローレが考えたこの税は、取引の各段階で生まれた付加価値だけに課税する仕組みで、仕入れにかかった税額を差し引いて納める。この方式は1960年代以降、欧州共同体(EC)の加盟国に広がった。日本でも、1989年4月に税率3%の消費税として同じタイプの間接税が始まっている。

算出方法の違い

計算方法は、大きく分けて控除法と加算法の2つである。控除法は売上高から外部購入価値を差し引くやり方で、中小企業庁方式とも呼ばれる。加算法は、生み出された価値が誰に分配されたかに注目し、利益、人件費、金融費用などを足し合わせる。代表的なのが日本銀行方式である。理論上は同じ値になるはずだが、費用の分け方の違いによって数%程度ずれることも珍しくない。そのため、他社や業界平均と比べるときは、まず同じ計算方式で比べているかを確認したい。

控除法:付加価値額 = 売上高 − 外部購入価値(材料費 + 買入部品費 + 外注加工費 + 運送費 など)
加算法:付加価値額 = 経常利益 + 人件費 + 金融費用 + 賃借料 + 租税公課 + 減価償却費

方式 代表的な用途 計算の構成
中小企業庁方式(控除法) 中小企業の経営分析 売上高 − 外部購入価値
日本銀行方式(加算法) 主要企業の経営分析 経常利益 + 人件費 + 金融費用 + 賃借料 + 租税公課 + 減価償却費
財務省方式(加算法) 法人企業統計 人件費 + 支払利息等 + 動産・不動産賃借料 + 租税公課 + 営業純益
補助金・計画審査の簡易式 経営革新計画、ものづくり補助金 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

付加価値率と労働生産性

付加価値額を売上高で割ったものが付加価値率(付加価値率 = 付加価値額 ÷ 売上高 × 100)である。仕入れた商品をほぼそのまま売る卸売業では、この値が10%台にとどまることが多い。これに対し、設計や加工を自社で行う機械メーカーや、ソフトウェア開発の企業では高くなりやすい。付加価値額を従業員数で割ると、1人あたりの労働生産性が求められる。日本生産性本部は毎年、OECD加盟国の労働生産性を比べた結果を公表しており、日本は加盟38か国の中で中位から下位にとどまる状態が長く続いている。

粗利益との違い

粗利益は、売上高から売上原価を引いて求める。製造業の売上原価には工場の労務費や設備の減価償却費が含まれるため、粗利益ではこれらもすでに差し引かれている。付加価値はこうした社内で使った費用を差し引かないので、同じ決算書から計算しても粗利益より大きな値になる。

スマイルカーブが示す構造

1992年、台湾のエイサー(Acer)創業者である施振栄(スタン・シー)は、パソコン業界の収益の分布を「スマイルカーブ」という図で表した。横軸に工程を、縦軸に付加価値の大きさをとると、上流の研究開発や部品と、下流の販売や保守が高くなる。真ん中の組立工程はへこんでおり、その形が笑った口元に似ていることから、この名前がついた。この図はその後、電機業界や自動車業界にも当てはめられるようになった。日本のメーカーが製品の販売だけでなく、保守契約や稼働データを使ったサービスにも力を入れている背景には、こうした構造がある。

製造現場で見落としやすい計算上の癖

受注生産を行う部品メーカーでは、取引の形によって数値の見え方が大きく変わる。たとえば、外注していた加工を内製化するとしよう。かかるコストが同じでも、控除法では外注加工費がなくなるため、付加価値額は増える。もちろん、そのぶん設備投資や人件費が増えるので、利益まで増えるとは限らない。材料の支給方法も影響する。無償支給の場合、材料費が売上に含まれないので、売上高は小さくなるが付加価値額は変わらない。その結果、付加価値率は有償支給の場合より高く見える。鋼材価格が上がった時期に、値上がり分をそのまま売価に上乗せしても付加価値額は増えず、付加価値率だけが下がった、という例はよくある。このため実務では、見積書を「材料費」と「加工費(加工賃)」に分けて示し、加工費の部分で収益を確保する考え方が広く使われている。

作業の分析にも、この考え方が使われる。トヨタ生産方式では、作業を「正味作業」「付随作業」「ムダ」の3つに分ける。このうち付加価値を生むのは、加工や組付けなどの正味作業だけと考える。運搬、段取り替え、手待ちを減らす改善活動は、言い換えれば正味作業の比率を高める取り組みである。

法人事業税の付加価値割

2004年4月1日以後に始まる事業年度から、資本金が1億円を超える法人には外形標準課税が適用されている。その柱の一つが付加価値割である。課税標準となる付加価値額は、報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料を合計した「収益配分額」に、単年度の損益を加えたり差し引いたりして求める。2016年度以降の標準税率は1.2%である。外形標準課税では、赤字の年でも人件費が多ければ税負担が生じる。ただし、収益配分額に占める報酬給与額の割合が70%を超える場合は、雇用安定控除によって一定額が差し引かれる。

補助金や経営計画で求められる水準

中小企業等経営強化法にもとづく経営革新計画では、3〜5年の計画期間で、付加価値額または1人あたり付加価値額を年率3%以上伸ばし、あわせて給与支給総額を年率1.5%以上、経常利益を年率1%以上伸ばす計画を立てることが承認の条件になる。ものづくり補助金でも、付加価値額の年平均成長率が審査の指標として使われてきた。申請書をつくる際は、自社のサプライチェーン上の位置づけや、取引先から材料を支給されているかどうかを確認し、どの費用を外部購入価値に含めるかを決めておくと、計画値と実績を比べるときに混乱しにくい。

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