ロードセル
ロードセルは、荷重・力を電気信号に変換して計測する力学用の変換器である。多くは金属弾性体にひずみゲージを貼付し、弾性体に生じる微小なひずみをブリッジ回路で検出する。計量器、材料試験機、産業用搬送機、ロボットの把持力管理など広範な用途で用いられ、単位はNやkgfで表す。信号は通常mV/Vの比出力として規定され、適切な計装アンプやA/D変換器を介して計測・制御系に入力する。センサの中でも高い直線性と再現性が求められるカテゴリであり、設計・選定・据付・校正の各段階で精度確保の工学的配慮が必要となる。
構造と動作原理
ロードセルの弾性体は、曲げ・せん断・圧縮など特定の応力状態を狙って形状最適化される。荷重により弾性体に生じる応力とひずみをひずみゲージで検出し、ホイートストンブリッジで差動増幅することで温度や電源変動の影響を抑えた微小電圧として出力する。出力は励起電圧に比例するため、定格励起、ブリッジ抵抗、ゲージ配置(フル・ハーフ・クォータ)を含めた回路設計が性能を左右する。
種類と形状
ロードセルは用途に応じて多様な形態がある。単点支持型は平台秤に多用され、S字型は引張・圧縮両用で吊り秤や張力測定に適する。せん断ビーム型や曲げビーム型はタンク・ホッパ計量に普及し、カン型やパンケーキ型は高容量向けで偏荷重耐性が高い。ピン型は軸受部に組込み、構造体の荷重を直接検出する。必要容量、取り付けスペース、荷重方向、偏荷重条件、密封性などで使い分ける。
性能指標
ロードセルの主要指標は、定格容量・感度(mV/V)・非直線性・ヒステリシス・繰返し性・クリープ・零点の温度ドリフト・定格過負荷・破壊荷重・防塵防水(IP)である。非直線性・ヒステリシス・繰返し性は通常、フルスケールに対する百分率で示され、総合誤差の支配要因となる。温度範囲は使用環境の上限下限を満たす必要があり、温度補償と自己発熱の管理が重要である。
温度影響と補償
温度により弾性体の弾性率やゲージ抵抗が変化し、零点・感度が変動する。高度なロードセルは材料選定、ゲージ配置、抵抗素子による温度補償で感度温度係数を低減する。配線は4線式が一般的だが、長距離や温度勾配に対しては励起電圧を補償する6線式(リモートセンス)が有効である。
電気回路と信号処理
ロードセルのmVレベル出力は高CMMRの計装アンプで増幅し、必要帯域を満たすローパスフィルタでノイズを抑える。A/Dは24-bit ΣΔ型がよく用いられ、ゼロ追従、タレ(風袋)機能、デジタルフィルタ、線形補正、温度補正を実装する。電磁ノイズ対策としてシールドケーブル、アース、ツイストペア、ブリッジの対称配線が基本である。サンプリングは応答要求とノイズトレードオフで決定する。
4線式と6線式
4線式は励起と出力のみのシンプルな配線である。一方6線式は励起端子の電位をセンス端子で検出し、ケーブル抵抗や温度勾配による電圧降下を補償できる。多数のロードセルを並列接続する台秤やタンクスケールでは6線式が安定である。
据付と機械設計の留意点
ロードセルの精度は取り付けで大きく左右される。荷重点を仕様通りに合わせ、オフセットモーメントと横荷重を避ける。取付面は平面度・硬さ・粗さを確保し、ねじ締結は推奨トルクで行い、座金や球面座を用いてミスアライメントを緩和する。熱源・風・振動・ケーブル引張は外乱となるため、断熱、防風、フレキシブル配索で抑制する。過負荷保護のため機械ストッパを設けると良い。締結用ボルトは降伏を避け、弾性域で安定した予締め力を確保する。
偏荷重・横力対策
平台秤では荷重が天板の四隅に移動しても指示が変わらないよう、単点支持型のロードセルを用い、天板剛性と支持位置を最適化する。タンク計量では各脚のセル荷重を均等化し、サーマルエクスパンションに対応するスイベルやロッカーベアリングを使用する。
校正とトレーサビリティ
ロードセルの校正は、基準分銅によるデッドウェイト法や置換法で行う。ゼロ点調整、スパン調整、線形補正を実施し、上り下りでヒステリシスを確認する。プラットフォーム秤では四隅試験で偏荷重誤差を評価する。校正結果は不確かさを含めて記録し、温度・湿度・設置状態も併記して再現性を担保する。
選定手順
必要容量は最大使用荷重に安全率(一般に150~200%)を掛けて選ぶ。目標精度、動的応答、設置条件、温度範囲、保護等級、出力感度、ケーブル長、配線方式を整理し、環境ノイズや保全の制約も反映する。複数ロードセルを用いる場合は合成容量、和算器や指示計の仕様、均等化の手段(トリム抵抗や機械的レベリング)を検討する。
故障要因と対策
過負荷・衝撃・水侵入・ケーブル断線・サージは典型的故障要因である。静電気対策、適切なIP等級、ケーブルのストレインリリーフ、接地の適正化で予防する。ゼロ点のゆっくりした変化はクリープや固定部の弾性変位が疑われ、温度依存性は補償不全や熱勾配、放熱条件の影響が考えられる。定期点検として外観、絶縁抵抗、ブリッジ抵抗、無負荷出力、既知荷重でのチェックを行うと良い。
クリープとヒステリシス
一定荷重を保持したときに指示が時間とともに変化する現象をクリープという。材料の粘弾性や接着層の時間依存性が原因である。ヒステリシスは負荷・除荷で指示が一致しない現象で、弾性体の局所塑性や摩擦、配線の応力などが関与する。いずれも高品質な弾性体設計と適切な据付で低減できる。
関連技術と応用
ロードセルは、配合制御・バッチ計量、ねじ締結やプレス加工の工程監視、材料試験の応力–ひずみ評価、ロボットの力覚制御、ワイヤーテンション監視などで中核的役割を担う。将来的には高分解能ADCとデジタル補正の統合、高温・耐食環境向け材料、無線化やエネルギーハーベスティングの応用が進むと見込まれる。