ロジックアナライザ|高速信号を可視化する解析装置

ロジックアナライザ

ロジックアナライザはデジタル回路の信号線を多数同時に観測し、時間軸上のハイ・ロー遷移やバスの論理状態、プロトコルのフレーム構造を解析する計測器である。多チャネル入力と高サンプリング、柔軟なトリガ条件、強力なデコード機能を備え、マイコン、FPGA、SoC、メモリインタフェース、シリアル通信の動作検証や不具合解析に用いられる。アナログ波形を観測するオシロスコープと補完関係にあり、複数信号の同時相関や長時間のイベント捕捉に強みをもつ。

原理と測定モード

入力段はデジタルコンパレータで論理レベルを判定し、内部サンプラが一定周期で各チャネルの状態を取り込む。代表的なモードは「タイミングモード」と「ステート(状態)モード」である。タイミングモードは装置内部クロックで均一サンプリングし、立上り・立下りの時間相関を解析する。ステートモードは外部のクロック(例:バスのCLK)に同期してサンプルし、バス転送の意味的な状態列を忠実に再現する。

トリガとアクイジション

高度なトリガは測定の要である。単純なエッジ・パターントリガに加え、シーケンス(A→B→C)、期間条件(ハイ期間が所定値超過)、欠落イベント、エラー(パリティ/CRC不一致)などを条件化できる。アクイジションはプリトリガ・ポストトリガ領域を指定し、リングバッファで長時間待機しながら目的現象の前後を確実に記録する。

チャネル数とプローブ

チャネル数は8〜136以上まで幅広く、デバッグ対象に応じて選定する。プローブは信号の忠実度と作業性を左右するため、入力閾値(TTL/CMOS/LVDSなど)、定格電圧、帯域、入力容量、グラウンドの取り回しを確認する。密集ピッチにはフック型やポッド型、メモリバスにはフライングリードのバンドル、差動信号には専用差動プローブを用いる。

サンプリングとタイミング精度

サンプリング周波数は観測したい最小パルス幅やエッジ間隔の10倍程度を目安とする。タイムスタンプの分解能、内部クロックのジッタ、メタステーブル対策(デジタルフィルタやグリッチキャプチャ)を確認する。深いメモリ(レコード長)は長時間現象や低頻度バグの捕捉に有効である。

プロトコルデコード

内蔵デコーダにより、UART、I2C、SPI、CAN、LIN、I3C、JTAG、USB、PCIe、Ethernet、DDR系バスなどのパケットを自動解釈し、アドレス、データ、フラグ、エラー情報を時系列で表示する。フィルタやサーチ機能で特定アドレスやエラーイベントへ瞬時にジャンプできるため、上位層の不具合を物理層のタイミングへ遡及して追跡できる。

用途と活用シーン

  • マイコンと周辺デバイス間のバス通信の動作検証
  • FPGAファームのタイミング閉塞やステートマシン遷移の観測
  • 割込みやDMA転送のレイテンシ計測、排他制御の検証
  • 電源シーケンスに伴うリセット・ブート時の初期通信解析
  • 車載ネットワーク(CAN、LIN、FlexRay)のエラー要因切り分け

オシロスコープとの使い分け

オシロスコープはアナログ波形の形状やオーバーシュート、リンギング、立上り時間の評価に適する。一方ロジックアナライザは多数ラインの論理関係、プロトコル、長時間イベントに強い。混合信号オシロ(MSO)は少数チャネルのロジック機能を搭載するが、大規模デジタルや深いプロトコル解析では専用機が優位となる。

選定ポイント

  1. チャネル数とプローブ体系(密度・差動対応)
  2. 最大サンプリング周波数とタイムスタンプ精度
  3. メモリ深度とストリーミング保存の可否
  4. トリガ機能の表現力(シーケンス、時間条件、エラー検出)
  5. 対応プロトコルの網羅性と拡張性(ライセンス方式)
  6. UIの可視化(バスタイムライン、パケットリスト、相関ビュー)
  7. リモート制御API(Python、SCPI)と自動試験(ATE)連携性

測定品質と注意点

配線は短く、グラウンドリードを最短化してリンギングや不要結合を抑える。入力閾値を対象ロジックに合わせ、レベルシフタ経由の接続では遅延・スキューを考慮する。多点プロービング時は負荷と取り回しでバグを誘発しないよう、治具化やピンアサインの整理、ESD対策を行う。

データ解析とワークフロー

キャプチャ後はマーカーで遅延・デューティを定量化し、イベントサーチで異常点を列挙する。アナログ計測と相関させる場合、同一トリガ共有や共通リファレンスクロックで時刻合わせを行う。ログのエクスポート(CSV/JSON)とスクリプト処理により、再現性のある検証レポートを自動生成できる。

よく使う用語

  • Timing Mode:内部クロックで一様サンプリングする方式
  • State Mode:外部クロック同期でバス状態を取得する方式
  • Trigger:取得開始条件。エッジ、パターン、シーケンス等
  • Protocol Decoder:パケットを意味情報として表示する機能
  • Glitch:意図しない短パルス。フィルタや高サンプルで検出

補足:安全と取り扱い

入力レンジ超過は機器損傷に直結するため、絶縁やアッテネータを用い、グラウンドループに注意する。高周波差動や車載系は規格準拠のプローブを選び、取り外し時は静電気放電を防ぐ。

関連機器・概念

デジタル信号の観測は、アナログ波形観測のオシロスコープ、基本電気量を測るマルチメータ、回路解析で重要なフーリエ解析、回路網理論や制御工学などと併用すると理解が深まる。用途に応じて適切な計測器を選び、系統的に検証を進めることが効率化につながる。