ライトカーテン
ライトカーテンは、発光部と受光部の間に形成される多数の赤外線ビームを監視し、人や手指が危険領域へ侵入した瞬間に機械を安全停止させる光電式の安全保護装置である。非接触で高速に検出でき、開口部を塞がずに生産性を維持できるため、プレス機、ロボットセル、搬送ラインなどで広く用いられる。
仕組みと構成
ライトカーテンは複数のLED発光素子(送信)とフォトダイオード(受信)を縦列に配し、一定ピッチのビーム配列(スクリーン)を作る。制御回路はビームの断線や相互干渉を防ぐために時分割走査や符号化を行い、遮光を検出すると安全出力をOFFにする。保護高さはスクリーンの有効長で定義され、分解能はビーム間隔と開口の光学設計で決まる。
- 主要構成:送受光ハウジング、コントローラ、OSSD出力、状態LED、取付ブラケット、反射ミラー
- 付加機能:ミューティング、ブランキング、リスタートインターロック、EDM
安全規格と性能レベル
ライトカーテンは一般にIEC 61496のType 2/Type 4、ISO 13849-1のPL d〜e(カテゴリ3/4相当)を満たす機種が用いられる。停止機能全体の安全性は機械側の停止回路も含めたPL/SILで評価すべきであり、外部装置としてセーフティリレーや安全PLCへの適切な接続が必須である。非常時の手動停止は非常停止で冗長化する。
検出方式と分解能
分解能は「何を守るか」に依存する。指保護では約14 mm級、手保護では25〜30 mm級が目安である。分解能が細かいほど遮光検出は鋭敏だが、許容汚れ・振動や取付自由度は厳しくなる。死角(ブラインドゾーン)や端面の回り込み光にも配慮する。
ブランキング(固定・フローティング)
意図的にビームの一部遮光を許容する機能である。固定ブランキングは治具常設部材を想定し、フローティングは搬送物の高さばらつきに追従する。ただし過度なブランキングはリスク低減を損なうため最小限とする。
安全距離の算定
安全距離SはISO 13855に基づき、一般式S=K×T+Cで求める。ここでKは接近速度(上肢で代表値1600 mm/s)、Tは停止までの総応答時間(機械停止時間+センサ応答時間+制御遅延)、Cは分解能に起因する補正距離である。Tは定期的に実測し、老朽化や荷重条件で変化する点に留意する。
実用上の注意
危険源の方向へ傾斜したアプローチでは安全距離が不足しやすい。床面段差や作業台の有無も到達経路を変えるため、レイアウト変更時は再評価する。
配線・インターフェース
ライトカーテンの安全出力は二重化されたOSSD(Output Signal Switching Device)で、短絡・クロスフォルト検出のために相互監視される。PNP/NPNの入出力論理、24 V DC電源品質、アース設計を確認し、EDM(External Device Monitoring)で外部接点の溶着を監視する。停止回路はセーフティリレーまたは安全PLCの安全入力へ配線し、カテゴリ要求に合致させる。
リスタートインターロック
遮光復帰後の自動再起動を禁止し、意図的なリセット入力でのみ再稼働を許可する機能である。暴走リスクのある自動搬送では必須である。
設置とアライメント
送受光の光軸合わせは最重要であり、長尺や振動のある装置では剛性の高いブラケットを用いる。反射ミラーで折返す構成は死角を減らせるが、有効到達距離が短くなる。鏡面反射や環境光、粉塵・油煙は誤動作要因であり、IP等級と遮光フード、定期清掃計画を整備する。
反射・回り込み対策
床・壁の反射でビームが受光する場合がある。角度を持たせた取付、黒色吸収面、不要反射の遮蔽で改善する。
ミューティングとプロセス維持
ミューティングは搬送物のみを許可し人の侵入を禁止する論理で、専用のミューティングセンサを組み合わせて一時的にOSSDを許容する。T型・L型配置や時間窓、方向性判定などを用い、誤用で安全性を落とさないよう、表示灯やブザーで状態を可視化する。
関連機器との使い分け
ライトカーテンは開口部保護に適する一方、囲い込みが必要な場合はインターロックスイッチやリミットスイッチを併用する。非安全用途の位置検出にはインクリメンタルエンコーダやアブソリュートエンコーダを用いる。またリード磁石による簡易検出はリードスイッチが有効だが、安全機能の主役にはしない。
計測センサとの境界
環境監視用のCO2センサやVOCセンサは品質・快適性管理には有用だが、人的保護という意味での安全機能には換算できない。安全と計測の役割を明確に分ける。
選定のポイント
選定では①必要分解能(指/手/全身)②保護高さ③到達距離とミラー有無④応答時間と機械停止時間⑤規格適合(Type/PL/SIL)⑥環境耐性(IP/温度/汚れ)⑦ミューティング・ブランキングの要否⑧取付スペースとケーブル引回し、を系統的に検討する。設計審査ではリスクアセスメントと安全距離計算の記録を残す。
保全とトラブルシューティング
汚れ・ズレ・配線劣化が典型故障である。定期清掃、トルク管理、ケーブルの曲げ半径遵守、状態LEDの自己診断ログ読み出しを計画する。停止距離の定期測定とOSSDクロスフォルト検査は点検項目に含める。
導入事例の要点
プレス前面をライトカーテンで保護し、側面はフェンスと扉インターロック、搬出側はミューティング付きライトカーテンとするなど、危険源の方向・アクセス頻度・作業導線に応じた多層防護が効果的である。工程変更や段取り替え時には安全距離と機能の再妥当性確認を行い、教育と標準作業票で運用を固定化する。
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