ボールエンドミル|三次元曲面のR仕上げ高能率加工

ボールエンドミル

ボールエンドミルは先端が球状の刃形をもつ切削工具であり、自由曲面の仕上げ加工やフィレット部の創成に適する工具である。先端中心での切削速度が0に近づく幾何特性を理解し、工具傾斜やステップオーバの設定で実効切削速度と負荷を制御することが重要である。材質は超硬合金が主流で、被削材や目的に応じてTiAlN/AlTiN、DLC、ダイヤモンドなどのコーティングを選ぶ。サイズはR0.2〜R10程度が一般的で、首下長さを延長したロングネック形も金型の深部加工で用いられる。

形状と用語

ボールエンドミルの基本要素は半径R、刃数(z)、ねじれ角、シャンク径である。先端半球部は切削速度(SFM)が中心で0となるため、中心付近の当たりを避ける工具姿勢(工具軸をワーク法線に対して数度傾斜)が有効である。実効直径は切り込み位置に依存し、浅いapでは有効刃長と断面係数が小さくなるため、送りの過大設定は欠けを誘発しやすい。

有効切削速度の考え方

半径Rの球面では、接触点の局所半径が変化する。中心に近いほど局所半径が小さく、同一回転数でも周速が低下する。実務では回転数(rpm)を高めつつ、工具を5〜15°程度傾け、常に球面側部で切削させると安定する。

主な用途

ボールエンドミルは金型(射出成形・ダイカスト)の3D仕上げ、航空機部品のブレード/ブリスクの自由曲面、リブ・ポケットの隅R加工、微細文字やロゴの彫刻、医療機器の曲面創成などに用いられる。最終粗さは材質と条件にもよるが、安定条件下でRa1μm以下も実現可能である。

材質とコーティング

超硬微粒(サブミクロン)母材が一般的で、靭性と硬さのバランスが重要である。鋼・焼入鋼(HRC50〜60)にはTiAlN/AlTiN系やAlCrN系、アルミ合金には低付着のDLCや無被膜の鏡面研磨刃、黒鉛・CFRPにはダイヤモンドコートが用いられる。熱衝撃に弱いコートではクーラント断続を避け、一定の熱環境を維持する。

刃数・ねじれ・ネック

刃数は2〜4刃が一般的で、2刃は溝容積が大きく切りくず排出に優れ、4刃は断面剛性と面品位に寄与する。ねじれ角は30〜45°程度が多く、ネッククリアランスを付与したロングネックは深部干渉を回避する。

切削条件の設定指針

ボールエンドミルではステップオーバ(ae)が面粗さと加工時間を支配する。等スキャロップ制御でaeを決めると、曲率の変化に対して一定の段差高さを維持できる。中心当たりを避けるため、微小apでの送り過多を慎むことが重要である。

  • 回転数: 有効半径の小ささを補うため高回転化(CNCの限界内)
  • 送り(fz): 中心側で低減、側部で名目値へ。CAMで変動送りを用いる
  • ap/ae: 仕上げの目安はap0.05〜0.2D、ae0.03〜0.12D(等スキャロップ)
  • 工具傾斜: 5〜15°で球面側部を使い、中心速度0域を外す
  • クーラント: 鋼はエアブロー/油霧で熱安定、Alは切りくず溶着回避のため十分な排出

スキャロップ高さの直感

等高線ピッチ(ステップオーバ)を半径Rに対して小さくすると、残り段差(スキャロップ)は急速に減少する。面粗さの要求に応じ、aeを微調整して加工時間を最適化する。

CAM・加工戦略

自由曲面では「コンスタントスキャロップ」「モーフスパイラル」「等ピッチ等高線」などのツールパスが有効である。リマチ加工では前工程工具径との差分領域を抽出し、小径ボールエンドミルで残りを撫でる。機械の5-axis機能を活かし、ツール軸を自動傾斜させると中心当たりを回避できる。

選定ポイント

加工対象(焼入鋼、プリハードン、Al、Cu、黒鉛、CFRP)と要求面粗さ、最小R、加工深さから半径・刃長・ネック・コーティングを決める。ホルダは振れ精度の良いシュリンクや油圧を選び、突出しを最短化してびびりを抑制する。

  • 半径R: 形状最小Rと面品質から選定(例:R0.5/R1/R2…)
  • 刃長/首下: 干渉回避と剛性の両立(首下は必要最小限)
  • コート: 鋼系にTiAlN/AlTiN、Al系にDLC、黒鉛にダイヤモンド
  • ホルダ: 振れ≦5μm、把持剛性とバランス重視

トラブルと対策

先端欠けは中心当たりと過大送りが主因で、工具傾斜と送り低減で回避する。溶着は切りくず排出不良や刃面粗さが原因で、切削油剤の最適化と溝容積確保、DLC選択が有効である。熱亀裂は断続冷却で発生しやすく、連続的な熱環境維持が望ましい。びびりは突出し過多や共振で起き、突出し短縮と回転数デチューンで抑える。

検査・管理

入出庫でR精度、刃先チッピング、シャンクの振れを点検し、使用履歴を管理する。面粗さとスキャロップの実測値をフィードバックし、次回のae/ap・送り・傾斜角を更新すると再現性が高まる。

実務のコツ

仕上げ前に粗取りを最適化し、一定余肉(例:0.2〜0.5mm)を均一に残すとボールエンドミルの負荷が安定する。角部はRが不足しがちなので、段取り上の干渉チェックとリマチ領域の可視化を徹底する。機械の熱変位やワーク固定剛性も面品質に直結するため、加工時間帯やクランプ方法を標準化してばらつきを抑える。