ヘッドランプ
ヘッドランプは自動車前部に装着される前照灯であり、夜間や薄暮時、悪天候時に前方路面と標識・歩行者を視認するための主要装備である。ロービームとハイビームを切り替える配光系、光源(ハロゲン、HID、LED、レーザー)、光学素子(リフレクターやプロジェクターレンズ)、熱対策部材、電源・制御回路、耐候・防水のハウジングなどで構成される。最近はカメラと連動し対向車を眩惑させない自動遮光やコーナリング時の配光可変など高度化が進む。安全法規への適合、配光の均一性、耐久性、修理性、デザインの調和を同時に満たすことが、ヘッドランプ設計の核心である。
構造と主要部品
ヘッドランプは、レンズ(PCやPMMA)、反射鏡(アルミ蒸着)、光源モジュール、放熱ヒートシンク、ドライバ回路、レベライザー、シール材、ベント(透湿膜)、ハーネス・コネクタで成る。プロジェクター式は遮光シェードで鋭いカットオフを作れ、リフレクター式は軽量・低コストである。LED化に伴い光学素子の小型化・自由度が増し、デイタイムランニングランプやシグネチャー造形と一体化しやすい。
光源の種類と特徴
ハロゲンは構造が単純で安価だが効率・寿命に限界がある。HIDは高効率・高光束で高速道路走行に適するが、バラストなど高電圧系が必要で立ち上がり時間も考慮する。LEDは高効率・長寿命・瞬時点灯で、小型素子を配列し配光設計の自由度が高い。レーザーは微小光源から蛍光体を励起し高輝度を得る方式で、先進車で採用が進む。現行ではLEDがヘッドランプの主流であり、消費電力低減と意匠性向上に寄与する。
配光と法規適合
ヘッドランプはロービームで対向車の防眩と前方路面の均一照射、ハイビームで遠方視認性の確保を担う。カットオフラインの明確さ、ホットスポットの位置、照度分布、色度・光束、グレア限度などが評価指標である。各地域の規格(例:ECE、SAE等)に適合するため、ゴニオフォトメータによる測光、光軸調整、生産ばらつき管理が不可欠である。車検では光軸ずれや光度不足が不合格要因になりうる。
制御機能と電子化
AFS(ステアリング連動配光)、ADB(Adaptive Driving Beam:部分遮光で防眩維持)、オートレベリング(積載変化時の光軸維持)、オートライト(周囲照度連動)、ハイビームアシスト(カメラ認識)などが代表機能である。LEDマトリクスでは複数素子を個別制御し、対向車や標識を避けつつ路肩や先行車後方を重点照射できる。これらはヘッドランプ内のECUと車両CANの協調で動作する。
熱設計と耐環境性
LEDは発光効率が高い一方、接合部温度が上がると光束低下・色度変移・寿命短縮が生じる。よってヘッドランプではヒートシンク、熱伝導パッド、筐体放熱、空冷・熱拡散の最適化が必須である。レンズの耐候(UV、黄変)、ハウジングの気密・防水(IP相当)、結露対策(ベント、デシカント)、耐振動・耐塩害・耐泥水も重要だ。EMC/EMI対策としてドライバ回路のフィルタリングやシールドも行う。
製造プロセスと品質評価
レンズ・ハウジングは射出成形、反射鏡はアルミ蒸着後に保護コート、光学パーツの組立・光軸調整を行う。量産では光束・照度分布・色度・消費電力・温度上昇の検査、耐久(高温高湿、熱衝撃、振動)、耐候(キセノンウェザーメータ等)、防水性の確認を行う。トレーサビリティ確保のためシリアル管理・検査データの紐付けを実施し、ヘッドランプの長期信頼性を担保する。
保守・故障モード
ハロゲンはフィラメント切れ、HIDは始動不良・バラスト故障、LEDはドライバ回路・熱劣化や素子不点灯が代表例である。レンズの曇り・黄変、ハウジングのクラック、配線接触不良、光軸ずれも多い。LED一体型はユニット交換となる場合が多く、互換性・法規適合を満たす部品選定が必要だ。定期的なレンズ清掃、光軸点検、シール部の点検はヘッドランプ性能維持に有効である。
用語と補足
- ロービーム/ハイビーム:走行条件に応じた配光モード
- プロジェクター式/リフレクター式:光学系の構成と配光特性
- ADB/AFS:環境・操舵に応じた配光制御
- ドライバ回路:LED電流制御と保護機能
- ヒートシンク:熱抵抗低減と寿命維持の要
- ベント・透湿膜:防水と結露抑制の両立
- 光軸調整:対向車防眩と視距確保の基本
- 耐候・EMC:長期信頼性と電磁適合性の確保