フェライトコア|高透磁率で高周波ノイズ低減に有効

フェライトコア

フェライトコアは、酸化鉄を主成分としマンガンや亜鉛などを添加して焼結した磁性体(フェライト)から成る磁気部品である。高い体積抵抗率と十分な透磁率を併せ持つため高周波での渦電流損が小さく、ノイズ抑制用のクランプ型やビーズ、電源用トランス・インダクタのコアとして幅広く用いられる。形状はリング(トロイダル)、E・U・RMコア、クランプ型、SMDビーズなど多様で、用途に応じて透磁率、損失特性、飽和磁束密度、温度特性を最適化して選定するのが基本である。

材料と結晶構造

フェライトコアの多くはスピネル型結晶構造を持つマンガン亜鉛系(Mn-Zn)とニッケル亜鉛系(Ni-Zn)である。Mn-Znは初透磁率が高く(例:μiが数百〜数千)、数十kHz〜数MHz帯で低損失なため電源トランスやチョークに適する。Ni-Znは電気抵抗がより高く、数MHz〜数百MHzにおける損失が小さいため、EMI対策ビーズやクランプに好適である。製造は粉末調合・成形・焼結の工程からなり、組成や粒径、焼結条件が透磁率や損失、キュリー温度などの特性を規定する。

磁気特性と周波数依存性

フェライトコアでは、実効透磁率μe、飽和磁束密度Bs、キュリー温度Tc、コアロスPcv(ヒステリシス損+渦電流損+残留損)が主要指標である。一般に周波数上昇とともに損失は増え、透磁率は分散により低下する。Mn-Znは低〜中周波で高μを示す一方、Ni-Znは高周波での損失が小さく、EMI用途で高いインピーダンスZ=R+jXを与える。直流重畳により実効μが下がるため、電源チョークではI-μ特性の確認が不可欠である。

用途と役割

フェライトコアの代表用途は、(1) EMI/EMC対策としてのノイズ吸収(ケーブル用クランプ、SMDビーズ)、(2) スイッチング電源のトランスやチョーク、(3) 高周波回路のフィルタやインダクタである。クランプ型はコモンモード電流に対し高インピーダンスを与え、放射・伝導ノイズを抑制する。トロイダルやEコアの電源チョークはエネルギー蓄積(XL=2πfL)によりリップル電流を低減し、トランスは結合係数kとリーケージを設計して必要な電圧変換と絶縁を実現する。

形状と設計パラメータ

フェライトコアの形状は磁路長le、断面Ae、有効体積Veで表され、巻線数Nと材料パラメータからAL値(L/N2)が与えられる。設計では以下を基準にする。

  • AL値[nH/N2]:所望インダクタンスから必要巻数を算出
  • コアロスPcv:周波数・磁束密度の関数として許容損失を評価
  • 直流重畳特性:動作電流でのμ低下と飽和余裕
  • 温度特性:Tcまでの安定性と温度上昇
  • 漏れ磁束・フリンジング:エアギャップの有無と位置で管理

ノイズ対策における使い方

フェライトコアのクランプは、ケーブルに数ターン巻き付けることでインピーダンスがN2で増加し、コモンモードノイズの高周波成分を効果的に吸収する。選定時は対象ノイズの周波数帯と、データシートに示されるZ−f特性(|Z|、R、Xの分解)を一致させる。SMDビーズは定格電流、DC抵抗(DCR)、自己共振周波数(SRF)を確認し、信号品質(アイパターン)を損なわない帯域で減衰を与える。

電源磁気部品としての留意点

フェライトコアをトランスやチョークに用いる際は、許容磁束密度Bmaxを超えないよう波形(正弦/矩形)とデューティ、温度上昇を加味してΔBを見積もる。巻線はスキン効果・近接効果を考慮してリッツ線や多層配線を採用し、銅損I2Rとコアロスのトレードオフで最小総損失点を探索する。絶縁はクリアランス/クリープ、耐トラッキング性、UL難燃性等も評価対象である。

実装・取り付けと機械的配慮

フェライトコアは脆性材料であり、落下衝撃や締め付け過多で破損しやすい。クランプ型はケーブル外径に合致するサイズを選び、被覆に過度な圧痕が残らぬよう注意する。基板実装ではコアとコイルの固定にエポキシやクランプを用い、磁歪による微小な音鳴きには含浸や接着で対策する。放熱経路の確保は損失低減と信頼性に寄与する。

測定・評価

フェライトコアの周波数特性はインピーダンスアナライザやVNAでSパラメータから導出する。EMI抑制の効果検証では、伝導ノイズはLISNを介したスペクトラム測定、放射ノイズは規格に準拠したシステム評価を行う。電源用途では温度上昇、効率、リップル、過負荷・瞬断条件での飽和マージンを確認し、量産ばらつきと経年変化も見込んだ設計余裕を持たせる。

Mn-ZnとNi-Znの使い分け

フェライトコアの選択では、エネルギー蓄積や低周波損失重視ならMn-Zn、ケーブルノイズなど高周波吸収重視ならNi-Znが一般的な目安である。ただし実際はメーカー提供のμ−f、Pcv−f、Z−f曲線を対象周波数と電流条件に重ね合わせ、熱設計と合わせて総合評価するのが妥当である。

代替材料との比較観点

フェライトコアに対して、メタルコンポジットや鉄粉系パウダコアは直流重畳に強く飽和しにくい利点がある一方、高周波損失は増えやすい。アモルファスやナノ結晶は高Bs・低損失で大電力用途に有利だが、コストや加工性、入手性を含めたシステム最適化が必要である。用途・周波数・電流・熱の条件から最適材料を選ぶことが最終性能を決定づける。