パーティングライン|金型の分割面が成形品に残す境界線

パーティングライン

パーティングライン(parting line、略称PL)とは、型を構成する2つ以上のブロックが合わさる境界と、その境界が成形品の表面に残す線状の痕跡を指す。射出成形やダイカスト、砂型鋳造、型鍛造など、型を開いて製品を取り出す加工法では原理的に避けられない。日本語では「型割り線」「見切り線」とも呼ばれ、製品図面では「PL」と略記されることが多い。どこに置くかによって外観品質、寸法精度、金型費用のすべてが変わる。そのため、製品設計の初期段階で決めておくべき項目の一つとされている。

製品表面に線が残る理由

射出成形の金型は、ノズル側の固定型と、エジェクタ機構を持つ可動型に分かれる。成形時には成形機の型締力で両者を押し付けるが、汎用機で50〜3,000tf程度の力をかけても、合わせ面には加工誤差や型のたわみによる微小なすき間が残る。溶融樹脂がこのすき間に入り込むと、薄いバリになる。バリが出ない場合でも、固定型と可動型のわずかな位置ずれが0.01〜0.05mmほどの段差(ミスマッチ)として現れることがある。「触ると指に引っかかる」「塗装したら線が浮き出た」といった外観クレームの多くは、この段差が原因である。

PL位置を決めるときの判断基準

まず考えるのは、成形品をどの方向に抜くかである。PLは製品の最大外形線上に置くのが基本となる。この位置であれば両側に抜き勾配を付けられ、離型抵抗が小さくなる。一般的な勾配は片側1〜2°程度だが、シボ加工を施した面ではシボの深さに応じて3°以上を求められる場合もある。抜き方向が決まったら、次の観点から候補位置を絞り込んでいく。

  • 意匠面(お客様の目に触れる面)を避け、裏面や稜線上に逃がす
  • 公差の厳しい寸法がPLをまたがないようにする
  • アンダーカットが最も少なくなる位置を選ぶ
  • できるだけ平面に近い形状にして金型加工を簡単にする
  • ゲート位置やガスの抜け道と矛盾しないようにする

平面PLと段付きPL

理想は平面で割り切れるフラットPLである。とはいえ、自動車のドアトリムや家電の曲面カバーでは、製品形状に沿わせた段付きPLや三次元曲面のPLを採用せざるを得ない。曲面PLは型同士のすり合わせ(当たり出し)に手間がかかり、金型メーカーの見積もりで1〜2割ほど高くなることも珍しくない。試作段階で「この段差を平面に変えられないか」と金型メーカーから逆提案を受けることも多く、意匠担当者と早めに調整しておくと手戻りが減る。

アンダーカット処理との関係

側面の穴やツメは、そのままでは型が開かない。この場合はスライドコアや傾斜ピンを追加することになり、そのぶんPLの数も増える。スライド1か所あたり数十万円の追加費用が目安とされ、PLを数mmずらすだけでスライドを省ける形状なら、そちらを優先するのが実務的な判断である。

ガス抜きとしてのPL面

PL面には、キャビティ内の空気や樹脂から出る揮発ガスを外へ逃がす役割もある。PL面にガス抜き溝を設けないと、充填の最終部分にガスが閉じ込められてショートショットや焼け(ディーゼル効果)の原因になる。ただし溝を深くしすぎると、今度はバリが出る。溝の深さは樹脂の流動性に合わせて決めるのが原則で、代表的な目安は次の表のとおりである。

樹脂 ガス抜き深さの目安 バリの出やすさ
ポリアミド(PA) 0.01〜0.015mm 非常に出やすい
POM 0.01〜0.02mm 出やすい
PP 0.01〜0.02mm 出やすい
ABS 0.02〜0.03mm 中程度
PC 0.03〜0.05mm 出にくい

浅い溝の幅は2〜5mm、ランド長さは1〜2mm程度にとどめ、その先に深さ0.5mm前後の逃がし溝を設けて型外へつなげる構成が一般的である。この数値はあくまで出発点にすぎない。成形条件や型温によって最適値が動くため、トライ時の調整が前提となる。

鋳造・鍛造における見切り面

鋳物の世界では「見切り」という呼び方のほうが通りがよい。砂型鋳造では上型と下型の合わせ面が見切り面となり、ここに「ひれ」と呼ばれる鋳バリが出る。JIS B 0403(鋳造品の寸法公差方式)でも、見切り面をまたぐ寸法は型ずれの影響を受けるものとして扱われる。ダイカストでは、アルミ合金ADC12の溶湯がおよそ650〜700℃で高速充填されるため、PL面の摩耗が進むとバリが急に厚くなる。型鍛造の場合は事情が異なり、余った材料をあえてPLから押し出してフラッシュ(鍛造バリ)を作り、後工程のトリミングで切り落とす。PLが「欠陥の出る場所」であると同時に「材料の逃げ場」として設計されている点は、樹脂成形との大きな違いである。

仕上げ工数とコストの見方

現場でよく問題になるのは、バリ取りにかかる人件費である。ナイフでのPL仕上げが1個あたり10秒でも、月産10万個なら約280時間に達する。量産開始後に手仕上げで対応し続けるより、金型を再研磨してPL面を当たり直したほうが、半年ほどで元が取れるという話は成形工場でよく聞かれる。また、外観部品ではPLを平らな面の中央に置かず、角のエッジ上に重ねると段差がほとんど目立たない。自動車の内装部品では、PL段差を0.05mm以下とする社内規格を設けている例が多い。

図面での指示方法

製品図にPL位置を明記しないまま発注すると、金型メーカーの判断で意匠面に線が入るおそれがある。表記方法は企業によって異なり、一点鎖線や二点鎖線に「PL」の文字を添えるのが一般的である。あわせて「PLバリ高さ0.1mm以下」「段差0.05mm以下」のように許容値を注記しておけば、受入検査の基準として使える。さらに、PLの変更を禁止する範囲と、金型メーカーの裁量に任せる範囲を分けて書いておくと、見積もり段階での確認がスムーズになる。

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