パイプライン
現代のプロセッサ設計において、高速かつ効率的な命令処理を実現する手段として注目されるのがパイプライン(各演算ユニットが独立して動作できるようにし、次々に命令を投入・並列実行する方式)である。従来の単純な逐次実行モデルでは、1命令が完了するまで次の命令を実行できなかったが、パイプライン化によって各ステージが同時進行し、より多くの命令を並列に処理できるようになった。これにより、同一クロック周波数でも実行スループットを向上させることが可能となり、今日のマイクロプロセッサの高速化に欠かせないアーキテクチャとなっている。
パイプラインの基本概念
パイプラインは命令を複数のステージに分割し、それぞれが独立したハードウェア資源で並列に処理される設計である。最も代表的な構成は命令取得(Fetch)→命令デコード(Decode)→実行(Execute)→メモリアクセス(Memory)→書き戻し(Write Back)といった五段階であるが、プロセッサの種類や設計方針によりステージ数は変化する。いずれにせよ、各ステージが並列進行することで、1クロックごとに新しい命令を取り込みながら、先行命令の別ステージが同時に進行するという高効率な流れが確立されるのである。
パイプライン制御の特徴はどれか。
命令が実行される段階で,どの演算器を使うかを動的に決めながら,複数の命令を同時に実行する。
命令の処理をプロセッサ内で複数のステージに細分化し,複数の命令を並列に実行する。
命令を更に細かなマイクロ命令の組合せで実行する。https://t.co/GlIiRvYQqi— エンベデッドシステムスペシャリスト試験ナビ (@hpeo_es) June 19, 2025
性能向上のメカニズム
パイプラインの導入によって、クロックあたりの実行命令数(IPC: Instructions Per Clock)が増加するため、理論上はほぼ同じクロック周波数でも大幅な性能向上が期待できる。ただし現実には、各ステージの動作時間を均等化しないと律速ステージが全体の処理を遅らせることになり、理想的なスループットを得られなくなる。さらに分岐予測ミスによるパイプラインフラッシュや、ロード命令の結果待ちによるストールなどの要因が実際の性能に影響するため、最適なパイプライン設計には緻密な検討が必要である。
パイプラインハザード
パイプライン(各演算ユニットが独立して動作できるようにし、次々に命令を投入・並列実行する方式)には、リソース競合やデータ依存、制御依存などの問題が生じることがある。これらは総称してハザードと呼ばれ、適切に対処しなければ性能低下や誤動作を招くリスクがある。典型的には、同一レジスタを読み書きする命令が近接している場合にデータハザードが発生し、パイプラインがストールを余儀なくされる。その対策としてフォワーディングやバイパス回路を用い、可能な限りステージ間のデータ供給を同期させる仕組みが導入されている。
現代の分岐予測ってパイプラインハザード(とフラッシュ)回避でなく並列実行のためのデータハザード回避の向きが強いのか https://t.co/mB9dxXfhJM
— たのしい人生 (びあっこ) (@Biacco42) June 7, 2025
分岐予測と投機的実行
パイプライン化の効果を最大化するためには、分岐命令によるパイプライン停止を最小化する必要がある。そこで高性能プロセッサでは、過去の分岐履歴やパターンを解析して次の命令を予測する分岐予測機構が搭載されている。さらに、投機的実行という手法を用いて分岐先の命令を先回り実行し、予測が外れた場合に結果を破棄するというアプローチもとられる。これによりパイプラインストールを減らし、実行効率を高められるが、投機的実行に伴うセキュリティリスク(SpectreやMeltdownなど)も技術的課題として顕在化している。
スーパーパイプラインとスーパースケーラ
さらに高性能を追求するため、ステージをより細かく分割し、高いクロックで駆動するスーパーパイプラインが開発されてきた。これは各ステージを短時間で実行し、1クロック周期でできる作業量を削減する代わりに、ステージ数を増やすことでスループットを向上させるアプローチである。一方、スーパースケーラでは複数の命令を同時に発行して並列に実行するため、パイプライン段数の増加と組み合わせることで大幅な性能向上を目指すことが可能になる。ただしステージ数や並列度が高くなるほど制御が複雑化し、消費電力と回路規模も拡大する。
その頃に投入されたL1キャッシュ、スーパースケーラ処理、スーパーパイプライン処理、予測分岐処理等々は最新CPUでも基本技術になってるって考えると15年前の枯れた技術で騒いでるのかって幻滅したくもなる。
— にょぴたん (@nyoitaph) March 22, 2011
マルチコア環境との関係
近年のプロセッサはスループット向上だけでなく、消費電力とのバランスを考慮してマルチコア化を進めている。各コアが独立して命令を実行するため、スレッド単位の処理能力が求められる一方で、1コアあたりのパイプライン構成も依然として重要である。シングルスレッド性能を高めるために分岐予測や投機的実行を強化する例がある一方、コア数を増やす方向へ特化する設計も見られる。いずれにせよパイプラインの基本的な原理が高効率動作に寄与する点は変わらない。