テレマティクスユニット
テレマティクスユニットは、車両と外部クラウド/サービスを結ぶ中核デバイスである。車両内の各種ECUから取得した稼働データや診断情報を収集し、セルラー回線やGNSSによる位置情報とともに送受信する。これにより、リモート監視、予防保全、事故時の自動通報、キー共有、車両追跡、サブスクリプション機能などのコネクテッドサービスを成立させる。近年はOTAによるファームウェア更新、V2X連携、サイバーセキュリティ強化が必須要件となり、車載EthernetやCAN FDとの親和性、長期供給・長期保守に耐える設計が求められる。
役割と機能
テレマティクスユニットの役割は、車両データの収集・加工・送信と、遠隔からの制御・更新を安全に実行することである。通信・測位・セキュリティの三位一体で機能を構成する。
- セルラー通信:LTE/5G、LTE-M等で双方向接続。eSIMによるプロビジョニングを行う。
- 測位:GNSSで高精度位置・時刻を取得し、運行履歴やジオフェンスに活用。
- OTA:差分更新でECU/アプリを安全に更新し、ロールバックや段階配信を実装。
- データ収集:DTC、稼働パラメータ、ログを取得し、必要最小限に整形・圧縮。
- セキュリティ:Secure boot、暗号鍵保護、HSM/TPM、認証・暗号通信を実装。
- eCall/緊急通報:衝突時に自動通報し、位置・車両情報を送信。
- V2X連携:路車間情報の受発信により安全運転支援を強化。
主な構成要素
内部は通信モデム、GNSS、SoC/MCU、フラッシュ/DRAM、電源回路、アンテナ、eSIM、各種I/Oで構成される。車内配線はワイヤハーネスを介して接続され、電源はバッテリーとオルタネータに依存する。保護系にはヒューズボックスが関与し、車両側の制御系とはゲートウェイECUやBCMを経て連携する。
- ネットワークIF:CAN/CAN FD、LIN、車載Ethernet、DoIP等を実装。
- 電源:常時電源とACC制御、待機電流の最小化、バックアップ電池を考慮。
- 筐体・熱設計:放熱、振動・衝撃、湿度、腐食環境への耐性。
- アンテナ系:セルラー、GNSS、Wi-Fi/Bluetoothを分離配置し干渉を低減。
車載ネットワークとの連携
テレマティクスユニットは、他のECUからデータを収集し、優先度や帯域に応じてアップリンクを調整する。パワートレイン側のエンジンECUやトランスミッションECUとはリアルタイム性や安全性の観点からバス分離・ゲートウェイ制御が重要である。ゲートウェイではフィルタリングやレート制限、DoIP越しの診断アクセス制御が行われる。
データ活用とサービス設計
収集データはクラウドで可視化・学習され、車両ヘルスモニタ、予兆保全、運行管理、盗難抑止、UBI型保険、シェアリング、リモート機能開放などを実現する。データはPIIや位置情報を含むため、プライバシー配慮、同意管理、保持期間、匿名化、監査証跡の整備が不可欠である。
設計・認証要件
テレマティクスユニットは、EMC/ESD、熱・振動、湿度/塩害、電源変動、イミュニティの評価に加え、無線法適合(技適等)や事業者認証(例:PTCRB/GCF)に適合する必要がある。機能安全はISO 26262、サイバーセキュリティはISO/SAE 21434に基づくプロセス整備、鍵管理、脅威分析(TARA)を実践する。現地通信規格・キャリア事情を加味し、ローミングやフェイルオーバーも設計段階で織り込む。
電源・熱・稼働設計の勘所
待機電流は車両の長期駐車での放電リスクを左右するため数mA級へ抑制する。起動シーケンスは緊急通報や盗難検知の要件に合わせ短時間化する。熱設計ではセルラーピーク送信時の発熱、夏季日射、冬季低温起動を考慮し、ヒートスプレッダや筐体の放熱経路を最適化する。
運用とライフサイクル
量産段階ではEOL試験、自動プロビジョニング、証明書配布、車台別の鍵管理が要点である。運用ではFOTA/SM(Software Management)の段階展開、失敗時のロールバック、通信費の最適化、ログ収集・分析の恒常運用を回す。回線の世代交代(3Gサンセット等)やSIMベンダ変更にも耐えうる設計・契約が望ましい。
関連コンポーネント
電源・保護はバッテリーとヒューズボックス、発電はオルタネータ、配線はワイヤハーネス、車体系統連携はBCMやゲートウェイECUが担う。動力系はエンジンECUとトランスミッションECUが対象となる。