タッチセンサ
タッチセンサは、人の指やスタイラスの接触・接近による物理量の変化(静電容量、抵抗、圧電、光遮断など)を電気信号に変換し、座標や押下の有無を検出する入力デバイスである。スマートフォンのタッチパネル、家電の操作キー、産業機器のHMIまで適用範囲は広く、機械的可動部が少ないため薄型化と高信頼化に寄与する。検出面の透明性、マルチタッチの同時検出、手袋・水滴環境での安定性など、用途に応じた方式選択と設計最適化が求められる。近接検知と組み合わせれば待機電力を抑えたウェイク機能も実現できる。
基本原理
タッチセンサの代表方式は、指の存在で配線電極間の容量が変わる静電容量式、二枚の導電フィルムが押圧で接触して抵抗が変化する抵抗膜式、押圧で発電する圧電式、光路の遮断や屈折で検出する光学式などである。静電容量式は自己容量・相互容量のマトリクス走査により座標を求め、透明電極(ITOや金属メッシュ)で表示との両立がしやすい。抵抗膜式は軽い押下で確実に反応しペン入力に適する。光学式はベゼル内の発光素子と受光素子を用い、厚手手袋や大型パネルに有利である(例えば原理はフォトインタラプタに通じる)。
構成要素と材料
タッチセンサは、カバー材(化学強化ガラスやPMMA)、透明電極(ITO、金属メッシュ、ナノワイヤ)、配線層と絶縁層、OCAなどの接着層、コントローラIC、FPCで構成される。車載では表面硬度や耐薬品性、屋外用では反射防止(AR)と防汚(AF)コートが重要になる。電極パターンは感度・分解能・表示ムラのバランスを取り、ベゼル部のシールドでEMIを抑える。
主要仕様と選定指標
- 感度・分解能・直線性:微小容量変化や小押圧に対する追従性を左右する。
- 応答時間・レイテンシ:UIの体感を決定し、ゲームや高速スクロールで重要。
- ノイズ耐性:電源リップル、50/60Hz、RF干渉に対するマージンが必要。
- 透過率・ヘイズ:表示品位と相反しやすく、電極選択・パターン最適化で調整する。
- 耐久性:タップ/スワイプ回数、表面硬度、耐傷付き、温湿度サイクル。
- 消費電力:スキャン周波数や待機モードの最適化で低減する。
信号処理とノイズ対策
タッチセンサのコントローラICはマトリクス走査、同相ノイズ除去、IIR/移動平均などのフィルタ、ベースライン追従、ディバウンスで安定化する。水滴や汗による導電パスは誤検知を招くため、水滴判定やしきい値の動的補正を併用する。ESDはIEC 61000-4-2相当の対策を想定し、ガードリングやドリブンシールド、GNDプレーン設計でEMIを抑制する。長尺FPCはアンテナ化しやすいので、リターンパス確保とシールドが有効である。
実装設計の勘所
タッチセンサの電極近傍に連続GNDを設け、カバー材厚・空気層・接着層の寄生容量を見積もる。コントローラICは配線を短くし、差動経路のインピーダンス整合を取る。屋外・車載ではIP等級や結露対策、光学接着の気泡・黄変、温度ドリフトの校正が要点となる。座標のキャリブレーションは生産時とフィールドで分け、経時変化に追随する自己補正を備えるとよい。
アプリケーション
タッチセンサはスマートフォンやタブレット、白物家電のフラットキー、エレベータの操作盤、産業装置のHMI、医療機器の無菌操作、車載センターコンソールやステアリングの静電タッチなどに用いられる。近接検知で意図せぬ誤作動を減らし、スワイプ/ピンチなどのジェスチャ入力にも対応する。機械量の計測連携では変位センサ、距離判定では距離センサとの協調が有効である。
評価・試験
機能試験は座標精度、押下力特性、グローブ・水滴・油膜下での検出、温湿度サイクルでのドリフト、長期スワイプの摩耗を確認する。電磁試験は放射/伝導ノイズ、ESD、電源変動耐性を測定する。表示一体型ではムアレ、干渉縞、映り込みを評価し、透過率やヘイズを測る。産業用途ではタクト時のチャタリング抑止、フェイルセーフとして物理ボタン冗長も検討する。
故障モードと信頼性
タッチセンサの典型的故障は、電極クラック、剥離、腐食、コントローラの入力過電圧、ケーブルの断線、環境水分によるリークである。設計FMEAでは発生要因(材料、応力、環境)と検出方法(自己診断、原点ずれ検知)を整理し、対策として材料グレードの見直し、コーティング、ガスケットでの水切り、回路の保護素子を実装する。製造ばらつきは受入検査で電気特性の分布管理を行う。
他センサとの関係
タッチセンサはユーザインタフェースの中核であり、力や押下深さの定量化には圧力センサ、回転入力やノブではエンコーダ、磁気式キーではホールセンサ、動きの検出やジェスチャ連携では加速度センサやジャイロセンサと組み合わせる。装置全体のセンシング体系の中で役割を位置付けることが重要である。
用語整理
- タッチキー:個別ボタンのON/OFFを検出するタッチセンサ。
- タッチパネル:連続座標を取得するタッチセンサ。表示と一体化することが多い。
- 近接:非接触で接近を検知し、ウェイクや手の検出に用いる。
よくあるトラブル対処(抜粋)
- 水滴で誤検知:しきい値の動的調整、ウェットモード、ガードリング追加。
- ノイズで座標飛び:スキャン周波数ホッピング、GNDパターン最適化、ケーブルシールド。
- 手袋で感度不足:駆動電圧・利得の調整、相互容量パターンの改良。
- 表示ムアレ:電極ピッチと画素配列の最適化、OCA厚の見直し。