スプリングハンガー|荷重一定で変位に追従する支持機構

スプリングハンガー

スプリングハンガーは、配管・ダクト・機器をばね力で弾性的に支持し、熱膨張・収縮や据付誤差による垂直変位を許容しながら荷重を安全域に保つ支持装置である。可変荷重型(ばね支持)と定荷重型(定荷重ハンガー)の総称として用いられ、主に天井や梁からの吊り下げに適用する。ばね定数、許容ストローク、冷態・温態荷重、変位量、設置高さ、周辺クリアランスなどの条件を満たすように選定・配置し、機器ノズルの許容荷重や配管応力解析で求めた支持反力と整合させることが重要である。

用途と機能

スプリングハンガーの基本機能は、可動を許容しつつ荷重を伝達し、装置・建屋への集中荷重や配管ノズルへの過大反力を回避する点にある。温度変化が大きく、垂直方向の変位が無視できない系(高温配管、ボイラ周り、蒸気配管、反応器接続配管など)で効果を発揮する。固有振動数の低下による防振効果も副次的に得られるが、主目的は熱変位の吸収と荷重の均衡である。

種類(可変荷重型と定荷重型)

可変荷重型は、変位に応じてばね力が変化する。許容荷重変動(一般に25%以下)を満たす範囲で使用し、構造が簡潔でコストも低い。一方、定荷重型はリンク機構やカムで力の変化を補償し、作動範囲内でほぼ一定荷重を保持するため、大変位でもノズル荷重管理が容易である。設計指針として、荷重変動率が規定値を超える場合や長ストロークが見込まれる場合に定荷重型を用いる。

  • 可変荷重型:一般配管の昇温による中小変位に適する
  • 定荷重型:ボイラ吊り、長スパン配管、装置直近など大変位箇所に適する

構成要素と表示

スプリングハンガーは、コイルばね、外筒・フレーム、ロードスケール(荷重指示板)、トラベルスケール(変位指示)、出荷用ストッパ、ロックナット、吊りロッド・ターンバックル等で構成される。目視読取りで冷態・温態の目標位置と実位置を確認できる表示が重要で、点検容易性と安全確保の観点からも配置・向きを考慮する。

  • ロードスケール:設定荷重の指示・確認
  • トラベルストッパ:輸送・据付時のばね保護、試験時の固定
  • 吊りロッド:座屈・ねじりの回避と芯出しが要点

選定手順

選定は、配管応力解析または静的釣合から冷態荷重 Wc、温態荷重 Wh、変位量 δ を求め、機種のばね定数 k とストローク範囲で整合させる。可変荷重型では荷重変動率 |Wh−Wc|/平均荷重 を管理し、規定以下となる機番を採る。定荷重型では必要荷重レンジと作動ストロークを満たす容量を選ぶ。

  1. 境界条件の把握:支持点位置、吊り長、障害物、点検スペース
  2. 荷重・変位の算定:Wc, Wh, δ(昇温・保温・流体重量を含む)
  3. 機種選定:可変/定荷重、容量、ばね定数、ストローク、取付寸法
  4. 設定:冷態セット値、指示板位置、ロッド長、ストッパ状態

設計計算の要点

可変荷重型の基礎はフックの法則であり、ばね定数 k は荷重差と変位から k≈|Wh−Wc|/|δ| で近似できる。許容荷重変動率 r は r=|Wh−Wc|/((Wh+Wc)/2)。機器ノズルの許容荷重・モーメントや建屋反力の制限値と併記し、全ケース(冷態・温態・地震・水撃等)で整合を図る。ロッドの座屈は細長比、偏心、横荷重で評価し、必要に応じてガイド・補助支持を併用する。

据付・試運転・調整

工場出荷時はトラベルストッパを掛けた固定状態であることが多い。据付では所定の冷態荷重にロードスケールを合わせ、ロッド長で水平・芯出しを取る。水圧試験や保温前の段階では、設計方針に応じストッパを一時的に残す場合がある。運転前にストッパ解除、温態指示位置の再確認、ナット増し締め、干渉・クリアランスの確認を行う。

保守点検と代表的な不具合

定期点検では、指示値のズレ、サビ・塗膜劣化、ロッドの曲がり、ナット緩み、外筒と周辺の干渉、異音の有無を確認する。環境条件(塩害・結露・高温)に応じて防錆やカバーを選択し、ばねの疲労・クリープによるセット長変化に注意する。

  • 荷重表示の逸脱:ロッド長の再調整、ばね交換の検討
  • ストローク端当たり:機種容量の再検討、取付高さ修正
  • 横荷重による摩耗:ガイドの追加、支持点位置の最適化

関連機器との使い分け

剛性ハンガーは変位が小さい箇所で有効であり、スライド支持・ガイド支持は水平方向の拘束条件を与える。スナバーやダンパは地震・流体励起時に動的拘束を付与する装置で、スプリングハンガーと併用して静的・動的の両要件を満たす設計とする。

規格・適用上の留意点

一般的な選定・据付の指針は MSS SP-58/69、設計整合は ASME B31.1/B31.3 の許容条件と整合させるのが通例である。実務ではメーカーの機番表・荷重変動率基準・取付寸法表を参照し、図面・三面図に指示位置とトラベルストッパ状態、冷態セット値を明記して品質を担保する。