ストリング監視|太陽光発電の稼働状況を把握する技術

ストリング監視

太陽光発電所の運用では、直流側を複数のストリング(直列接続列)に分けて構成する。各ストリングの発電状態を常時計測・把握する仕組みがストリング監視である。発電量の最大化、故障の早期検知、保全コストの最適化を目的とし、電流・電圧・温度・絶縁抵抗などの指標を周期的に取得し、異常兆候や劣化を可視化する。

目的と効果

ストリング監視の主目的は①発電損失の低減、②停止リスクの回避、③保全計画の高度化である。例えば一部モジュールの影・汚れ・断線・コネクタ不良による電流低下は、全体売電に比例的損失を生む。早期に異常ストリングを特定できれば、清掃や端子締付、部材交換を局所的に実施でき、O&M費を抑えつつ稼働率を高く維持できる。

計測パラメータと閾値

  • ストリング電流(A):同一アレイ内の分布から外れ値を検知する。
  • ストリング電圧(V):開放電圧/動作電圧の推移を季節・温度で補正して監視する。
  • 温度(℃):接続部・ボックス内温度の上昇は抵抗増加やホットスポットの兆候となる。
  • 絶縁抵抗(MΩ):雨天時の低下や湿潤劣化を捉え、地絡を未然に防ぐ。

ダイナミック閾値の有効性

固定閾値は季節・日射・モジュール温度で誤検知を招く。移動平均や日射追従モデルを用いたダイナミック閾値を適用し、群内相対比較(同一方位・傾斜)で偏差を評価すると実用的である。

アーキテクチャ

ストリング監視は一般に「接続箱・集電箱での分岐計測」→「データ収集(DC計測器/コンバイナ内部計測)」→「通信(RS-485/Ethernet/無線)」→「監視サーバ(SCADA/クラウド)」→「可視化(ダッシュボード/警報)」の層で構成する。直流側センサはシャント抵抗式またはホール素子式が用いられ、直射・温度に強い実装が必要である。

データ解析と指標

代表指標はPR(Performance Ratio)、比発電量、ストリング間CV(変動係数)などである。さらにIVカーブ推定や回帰モデルにより、日射・温度を説明変数に電流を目的変数とした残差監視を行うと、汚れ・劣化・バイパスダイオード導通などの異常を高感度に抽出できる。

典型的な異常と症状

  1. 部分影・汚れ:日射追従で説明できない電流低下。朝夕・季節で再現性がある。
  2. コネクタ接触不良:温度上昇とリップル的な電流変動。熱画像で補完可能。
  3. 断線・開回路:電流ゼロ、電圧のみ残存。隣接群との比較で即判明する。
  4. 地絡・絶縁低下:雨天時に顕在化、インバータの保護動作と相関。
  5. バイパスダイオード故障:IV推定で膝特性の崩れ、部分的電圧降下が現れる。

アラーム設計

誤報を減らすため、単発閾値超過ではなく「持続時間×偏差量」の二次元条件を採用する。さらにアレイ単位の同時発生率、気象センサ(水平面・モジュール面日射、風速)の相関で抑制ロジックを組むと運用負荷を下げられる。

MPPTとの関係

インバータのMPPTは電力点を追従する制御であり、ストリング監視はその前段の健康診断である。MPPTが健全でも一部ストリングの劣化は補償できないため、群間の均一性を保つことが総発電の安定化に直結する。

導入ポイントと機器選定

  • 測定精度:低電流域(日射立上り/立下り)での直線性。
  • 環境耐性:防塵防水、耐UV、結露対策、雷サージ耐量。
  • 保守性:端子配置、ヒューズ交換性、現地校正の容易さ。
  • 通信冗長:現場のノイズ・断線に強いトポロジ、再送制御。

サイバー・電気的安全

ストリング監視のデータは遠隔から参照されるため、認証・暗号化・アクセス権限管理を設ける。また直流側では感電・アークの危険がある。作業時は短絡・逆接・開放の手順を標準化し、ロックアウト/タグアウトを徹底する。

ライフサイクルと運用

設計段階でセンサ配置と計測チャンネル数を余裕設計し、施工時に識別ラベル・配線系統図を整備する。運用では日/週/月次のレポート自動生成、季節ごとの基準更新、停電・通信断の抜け漏れ監査を行い、年次には現地点検とデータ照合でキャリブレーションを確認する。

経済性評価

投資判断では、監視導入コスト(計測モジュール・配線・ゲートウェイ・サーバ)と、想定発電損失の回避額(早期復旧による売電回復、保全工数の削減)を比較する。長期には劣化の可視化によりリパワリングやパネル更新の最適時期決定にも資するため、LCOEの低減効果が期待できる。

実装時のベストプラクティス

  • 群内相対評価を基本に、気象補正した回帰残差監視を組み合わせる。
  • ダッシュボードは「地図→アレイ→ストリング」のドリルダウンを備える。
  • 現場写真・配線図とストリングIDを紐付け、作業工数を短縮する。
  • アラームは優先度別(致命/重要/注意)に整流化し、対応手順をテンプレート化する。

まとめの代わりに:現場運用への示唆

ストリング監視は「見る」だけでなく「直す」行動につなげて初めて価値が出る。計測精度・モデル化・現地保全の三位一体で、停止時間の短縮と発電損失の最小化を継続的に実現することが重要である。