スウェジングツール
スウェジングツールは、銅管やアルミ管など延性材料の管端を塑性変形させ、差し込み用のソケット状に「拡径(拡管)」する工具である。冷凍空調(HVAC)や油空圧・計装配管で多用され、同径管どうしを突き合わせずに差し込んでろう付けするための受け口を形成できる。フレアリングが45°のすり合わせ面を作り機械継手で密封するのに対し、スウェジングは拡径端と母材のぴったりしたすきまを作り、毛細管現象でろう材を引き込む接合法と相性が良い。加工は一般に冷間で行い、芯出し、潤滑、段階押し込みを守ることで割れ・偏肉・楕円化を抑制できる。
原理:塑性拡径と変形制御
拡径はコーン状マンドレルやセグメントダイスを管端に挿入し、半径方向に押し広げることで達成する。真ひずみはおおむねε=ln(D₂/D₁)で評価でき、一般的な銅管ではD₂/D₁が1.06〜1.15程度までが安全域とされる。過大拡径は周方向引張応力の上昇と肉厚減少を招き、縦割れや口元のしわ発生につながるため、段階的に押し込み、必要に応じて焼鈍材を選ぶ。ベルマウス(端部ラッパ形状)を意図的に残すとろうの濡れ性と挿入性が改善し、流路の急激な拡大による損失も緩和できる。
構造と種類
- バータイプ:バーフレームに管を固定し、偏芯コーンまたは同心コーンをラチェットやTハンドルで段階挿入する手動式。携帯性とコストに優れる。
- 偏芯コーン式:偏芯により周方向の当たりを回転で均し、表面傷と筋を低減する。仕上がりの真円度が高い。
- 拡張ヘッド交換式:6.35/9.52/12.7/15.88/19.05 mm(1/4, 3/8, 1/2, 5/8, 3/4 in)などサイズ別ヘッドを差し替える。現場汎用性が高い。
- 油圧・電動スウェージャ:ポンプ力で定荷重・定速の押し込みが可能で、厚肉管や量産現場に適する。再現性と作業者依存性の低減に寄与。
- 回転スエージング(棒線端末向け):ハンマリングで断面を絞る加工機の総称で、管端拡径とは区別されるが、同じ「スエージング」の語が用いられるため注意する。
適用材料と寸法の目安
主な対象は冷媒用脱酸銅(ACR銅管)、アルミ管、薄肉ステンレス管などである。薄肉・小径ほど割れに敏感であり、面取りと潤滑の質が歩留まりを左右する。拡管深さ(ソケット長)は差し込み長さ+ろう回り代を基準に決め、目安として外径の0.8〜1.2倍を確保する。真円度はゲージで確認し、挿入側とのすきまはろう材の推奨値(例:銀ろうで0.05〜0.15 mm程度)に合わせる。
作業手順と品質管理
- 切断と面取り:パイプカッタで直角切断し、内外面をリーマで面取りして割れ起点を除去。
- 芯出し固定:クランプで管を傷めずに固定し、コーン軸と管軸を一致させる。
- 潤滑:硫黄分を含まない非腐食性の加工油を薄く塗布し、表面傷と摩擦熱を低減。
- 段階押し込み:偏芯コーンを回しながら1〜2段ずつ送り、過大荷重を避ける。
- ゲージ確認:プラグゲージ・リングゲージで内径、真円度、拡管深さを確認。
- 漏れ検査:ろう付け後に加圧・減圧・ヘリウムリークなど用途に応じた方法で検査。
フレアリングとの違いと使い分け
フレアリングは管端を45°コーンで広げ、フレアナットとオスフレア継手で金属接触封止する。一方、スウェジングツールは同径管のソケット形成が主眼で、ろう付け接合を前提とする。フレアは分解整備性に、スウェージは流路抵抗と嵌合強度の両立に利点がある。振動が強い配管では、ろう付けの濡れ長さとフィレット管理が重要である。
関連規格・推奨事項・安全
銅管・継手は材質・寸法・硬さに関する規格(例:JISの銅管関連規格、ASTM B280など)に整合させることが望ましい。加工中は切粉・バリの吸入や飛散、指詰め、過荷重破断に注意し、保護手袋・保護眼鏡を着用する。ろう付け時はフラックスの腐食性、加熱時の酸化スケールと酸洗処理、換気確保を遵守する。
選定ポイント(現場視点)
- 対応サイズと肉厚範囲:呼び径とSCH/肉厚の許容を確認。
- 偏芯コーンの仕上がり:筋・擦り傷の少なさと真円度の再現性。
- ヘッド交換性:mm/in両建て、収納性、現場の可搬性。
- 荷重制御:トルク管理やラチェット段階での送り量目安が明確か。
- メンテナンス:ダイス硬度、表面処理、清掃・再研磨の容易さ。
- 付属ゲージ:深さ・内径確認具やストッパの有無。
代表的トラブルと対策
- 縦割れ:過大拡径・バリ残り・冷間加工硬化が要因。面取り徹底、焼鈍材の採用、段階加工で対処。
- 楕円化・偏肉:芯出し不良や偏荷重が原因。治具見直しと潤滑改善、偏芯コーンの使用で軽減。
- 口元しわ・ベルマウス過多:送り速度過大。送り量を小刻みにし、最後は当て代を軽く均し仕上げ。
- ろう回り不良:すきま過大・油残り。脱脂、適正すきま管理、予熱分配で改善。
関連する接合法・機械要素
スウェージ拡管は、カシメやクリンプ、ろう付け、溶接と並ぶ実務的な接合法である。分解整備や締結力伝達を重視する場合はボルトなどの機械的締結を選ぶが、流体密封性と小型化が重要な場合はスウェジングツールとろう付けの組合せが合理的である。材料、荷重、温度、腐食環境を踏まえて接合方式を使い分けることが、配管・装置の信頼性設計に直結する。