シリコーンガン|接着剤とシーラントをムラなく施工

シリコーンガン

シリコーンガンはカートリッジやソーセージパックに封入されたシーリング材を一定速度で押し出し、目地や隙間へ均一に充填するための押出し工具である。建築の外装・内装、配管貫通部の気密・水密、電気筐体の防水、車両補修など幅広い分野で用いられる。トリガーを引くことでプランジャがシーリング材を圧送し、ノズルからビード形状で吐出する。材料の粘度や環境温度に左右されやすいため、適切なスラスト比とフレーム剛性をもつ機種選定と、下地処理・プライマー・養生・ヘラ仕上げといった一連の施工管理が品質を左右する。

構造と原理

基本構成はフレーム(スケルトンまたはチューブ)、プランジャ(ピストン)、スムースロッドまたはラチェットロッド、トリガー、リリースレバー、ノズルである。トリガーによるてこ機構がロッドを前進させ、カートリッジ底板を押圧して内容物を押し出す。戻し操作ではロッドを解放して内圧を下げ、垂れや糸引きを抑える。電動式や空圧式はモータやレギュレータで押出し速度を一定化し、粘度の高い材料や長尺ビードでも安定した吐出を実現する。

ラチェット式とスムースロッド

ラチェット式は歯付きロッドを段階的に送る構造で安価であるが、微妙な停止時に内圧が残りやすい。スムースロッド式は摩擦クランプで連続送りするため静音・低振動で、微妙な押出し制御に向く。高粘度材や連続施工ではスムースロッド式が扱いやすい。

ドリップレス機構

ドリップレス(自動戻り)機構はトリガーを放すとロッドがわずかに戻り、内圧を下げて自動的に垂れを軽減する。仕上げの糸引き低減、マスキング境界でのにじみ抑制に有効である。

種類と対応カートリッジ

形態は主に「カートリッジタイプ」と「ソーセージタイプ」に分かれる。前者は約330 mlの硬質カートリッジに対応し、住宅設備や補修用途で普及している。後者は400〜600 mlの軟包材に対応し、交換ロスが少なく産業・建築現場での連続施工に適する。電動式(18 V等)や空圧式は高吐出が必要なポリウレタンや高充填材に有利である。

カートリッジタイプ

フレームはスケルトン(半開)とチューブ(全周)に大別される。スケルトンは軽量で視認性が高く、チューブは変形しやすいカートリッジでも座屈を抑える。ノズルカッターやシールピアサーを備える機種は現場作業の段取りが速い。

ソーセージタイプ

アルミやPEフィルム製のソーセージパックを専用ホルダに装填し、ピストンで直接押圧する。残材が少なく廃棄物容積を抑えられる。ノズル径や角度を交換してビード幅を調整でき、長尺目地の連続打設に向く。

対応シーリング材

代表的な適用材料はシリコーン系、変成シリコーン(MSポリマー)、ポリウレタン、アクリルなどである。シリコーン系は耐候・耐熱・耐水に優れ、ガラス・タイル・金属のシーリングに多用される。変成シリコーンは上塗り塗装適合に優れ、外装ジョイントに適する。ポリウレタンは機械的強度と接着力が高く床目地などに、アクリルは室内低臭で小補修に用いられる。

硬化系の違い

シリコーンの硬化は加酢酸型、オキシム型、アルコキシ型が代表である。加酢酸型は硬化が速いが金属腐食や臭気に配慮が要る。オキシム型は中性で多素材に無難だが、SDSの健康有害性区分を確認する。アルコキシ型は低臭・低腐食で建築内装に適する。いずれもISO 11600の分類やJIS A 5758の要求事項を参照し、目地の変位追従性と接着性を満たす材料を選ぶ。

性能指標と選定

選定の主指標はスラスト比(例:7:1、10:1、18:1、26:1など)、最大押出し力、対応粘度域、フレーム剛性、質量、作業者の手の大きさに合うグリップ形状である。高粘度材や低温環境では高スラスト比が有利で、連続施工では電動・空圧式が疲労を低減する。ノズル角度調整や回転フレームはコーナー部のビード追従性を高める。

スラスト比と押し出し力

スラスト比はトリガー入力に対する出力のてこ比で、数値が大きいほど粘度の高い材料を少ない握力で押し出せる。ただし送り量が大きくなりやすいため、微小吐出にはトリガーストローク微調整や速度制御機構が有効である。

フレーム剛性・重量

厚肉スチールやアルミダイキャストのフレームは座屈に強く、ノズルのブレを抑えてビード形状を安定させる。一方で重量増により作業疲労が増すため、上向き施工や高所では軽量機種の利点が大きい。

施工手順

  1. 下地清掃:油分・水分・粉じんを除去し、必要に応じてプライマーを塗布する。
  2. 養生:マスキングテープで目地幅を規定し、角部は重ねを一定にする。
  3. ノズル加工:所要ビード幅に合わせて45°にカットし、口径を材料推奨に揃える。
  4. 装填:カートリッジ先端のシールを開通し、ガンに確実に装着する。
  5. 打設:一定速度で押し出し、目地底まで充填する。ドリップレス機構で停止時の垂れを抑える。
  6. 仕上げ:ヘラまたは石けん水を用い、表面を圧して気泡を抜きつつ面を整える。
  7. 養生・硬化:所定時間は水濡れや振動を避け、完全硬化後にテープを除去する。

安全衛生と環境

換気を確保し、皮膚・眼への付着を避ける。手袋・保護眼鏡を着用し、加酢酸型の酸臭や有機溶剤系のVOCに留意する。オキシム型ではMEKO等のSDS記載の有害性を確認する。廃棄は残材と容器を分別し、地域の指針に従う。

よくある不具合と対処

  • 垂れ・にじみ:ノズル径過大、過剰押出し、下地温度上昇が原因。ノズル再加工と速度低減で改善する。
  • 糸引き:停止時の内圧残留。ドリップレス機構活用、最後にヘラで切断する。
  • 気泡・空隙:下地含水、押出し速度不均一。乾燥後に連続押出しで再充填する。
  • 接着不良:清掃不足やプライマー未施工。適合プライマーを再施工する。
  • カートリッジ座屈:フレーム剛性不足。チューブ式または高剛性機種を用いる。

保守と保管

作業後はノズルを外し、先端を密封して乾燥を防ぐ。ロッドとピストン面の汚れを拭き取り、可動部に薄く潤滑を施す。保管は直射日光・高温を避け、未開封材料は使用期限内に使い切る。

関連規格・参考

建築用シーリング材の性能はISO 11600およびJIS A 5758が指標となる。材料安全はSDSの最新版を参照する。工具側はスラスト比やフレーム剛性、対応容量(約330 ml/600 ml)を仕様から確認し、適用材料と施工量に見合う機種を選定することが要諦である。