ケイ素|半導体やガラスの主要成分

ケイ素(Si)

ケイ素(Si)は周期表14族の典型元素であり、地殻中に豊富に存在する半導体材料である。シリコンとも呼ばれ、ダイヤモンド型の共有結合結晶を形成し、自然酸化により緻密なSiO2を生成して化学的安定性を示す。融点は1414℃、密度は2.33g/cm³、室温のバンドギャップは約1.12eV(間接遷移)で、集積回路、パワーデバイス、太陽電池、MEMSなど現代のエレクトロニクス基盤を構成する中核材料である。

基本的性質

ケイ素は周期表の第14族(炭素族)に属し、炭素と化学的性質が類似している。標準状態では灰色の光沢を持つ固体であり、ダイヤモンド構造に類似した結晶構造をとる。融点は約1414℃、沸点は約3265℃と高く、耐熱性に優れている。電気伝導性は低いが、不純物を加えることで半導体としての特性を発揮する。

化学的性質

ケイ素は比較的安定な元素であり、通常の条件下では反応性が低い。しかし、高温では酸素と容易に反応し、二酸化ケイ素(SiO₂)を形成する。また、ハロゲンや強酸とも反応し、シラン(SiH₄)や四塩化ケイ素(SiCl₄)などの化合物を生成する。これらの化合物は半導体製造や化学合成において重要な役割を果たす。

原子構造と結晶

外殻電子配置は3s²3p²でsp³混成により正四面体配位の共有結合網を作る。結晶はダイヤモンド構造で格子定数は約5.43Å、主な面方位は{100}と{111}である。結晶成長では転位や空孔、酸素析出などの欠陥管理が重要で、用途に応じて〈100〉や〈111〉方位の単結晶ウェハが選択される。

バンド構造と電気的特性

Siは間接遷移型半導体で、室温の固有キャリア濃度はおおむね10¹⁰cm⁻³程度である。移動度は電子が約1350cm²/Vs、正孔が約480cm²/Vs(結晶方位や不純物で変動)で、温度上昇やドーピングにより低下する。Bによるp型、PやAsによるn型ドーピングで抵抗率とキャリア型を制御し、pn接合・MOS構造・CMOS回路を実現する。

熱・機械的性質

熱伝導率は室温でおよそ150W/mKと高く、熱膨張係数は約2.6×10⁻⁶/Kである。縦弾性係数は方位依存性が大きく130〜190GPaの範囲で扱われる。脆性破壊を示すが清浄表面・微細構造では強度が向上するため、MEMSの弾性構造材としても広く用いられる。比熱や熱拡散率の温度依存性はデバイス熱設計の基礎データである。

製造プロセス

石英(SiO2)のカーボサーマル還元で金属Siを得て、Siemens法などで高純度多結晶Siへ精製する。単結晶はCzochralski(CZ)法またはFloat-Zone(FZ)法で育成され、インゴットをスライス・ラップ・ポリッシュしてウェハ化する。直径200mmや300mmが主流で、抵抗率・方位・ドーパント種・酸素濃度などの仕様で最終用途に適合させる。必要に応じてエピタキシャル層を成長させる。

酸化膜と微細加工

熱酸化により高品質なSiO2が成長し、ゲート酸化膜や素子分離(STI)の基盤となる。フォトリソグラフィでパターンを形成し、ドライ/ウェットエッチングで微細加工する。イオン注入とアニールで活性化・拡散を制御し、ポリシリコンやSiNなど薄膜堆積(CVD、PVD)と組み合わせてMOSFETや受光素子を構築する。

用途

ロジック・メモリなどのCMOS集積回路、IGBTやMOSFETに代表されるパワーエレクトロニクス、結晶Si太陽電池、加速度・圧力・マイクロフォンなどのMEMSセンサーに広く利用される。Siフォトダイオードはおよそ190〜1100nmの波長域で感度を持ち、産業・医療・計測機器の基幹部品として機能する。

半導体材料

ケイ素は半導体産業において不可欠な材料であり、単結晶シリコンとしてICチップやトランジスタに使用される。高純度のシリコンはCzochralski法(CZ法)やフロートゾーン法(FZ法)によって製造され、電子デバイスの基板となる。

ガラスとセラミックス

ケイ素の酸化物である二酸化ケイ素(SiO₂)は、ガラスセラミックスの主成分として使用される。特に石英ガラスは耐熱性、透明性に優れ、光学機器や実験器具に用いられる。セラミックス材料としては、耐熱性や耐摩耗性に優れたシリコンカーバイド(SiC)やシリコンナイトライド(Si₃N₄)が重要である。

シリコン製品

ケイ素を主成分とする合成化合物であるシリコンは、樹脂、オイル、ゴムとして広く利用される。シリコン樹脂は耐熱性や耐薬品性に優れたコーティング材料として、シリコンゴムは医療用や工業用のシーリング材として活用される。また、シリコンオイルは潤滑剤や化粧品の成分としても用いられる。

規格と評価

ウェハは直径、厚さ、面方位、面粗さ、TTV、抵抗率、ドーパント種、酸素・炭素濃度、表面清浄度、粒子数などの規格で管理される。結晶欠陥(COP、LSTD)、ライフタイム、リーク、酸化膜の膜厚・均一性・電気的破壊強度、金属汚染(Fe、Cu)評価は歩留まりと信頼性を左右する。

環境・安全

高純度Si製造はエネルギー多消費であるが、太陽電池への展開によりライフサイクルでのエネルギー回収が期待できる。工程化学薬品ではHFやHCl、有機溶剤の取り扱い安全が最重要で、排水・廃液処理とクリーンルーム管理が不可欠である。ウェハのリクレームやスクラップ再資源化は資源効率の向上に寄与する。

ドーピング元素の選択

p型はBが標準で、AlやGaは特殊用途に限られる。n型はP、As、Sbが利用され、浅接合・低抵抗・リーク特性のバランスで使い分ける。注入条件(エネルギー・線量)と活性化アニールの熱予算が接合深さ・拡散・欠陥の抑制に直結する。

ウェハ仕様の主要パラメータ

面方位〈100〉/〈111〉、抵抗率範囲、ドーパント極性、表面仕上げ(鏡面/裏面処理)、エピ有無、OISFやCOP密度、結晶欠陥密度、エッジ形状、マーク仕様などが選定項目である。プロセス窓に対する余裕度を確保するため、仕様整合と受入検査が重要である。

太陽電池向け材料の傾向

太陽電池では単結晶と多結晶が用いられ、近年はLID抑制の観点からn型CZ基板の採用が拡大している。PERC、TOPCon、HJTなどのセルアーキテクチャでは表面パッシベーションと選択的コンタクトの最適化が発電効率を左右する。

歴史と発見

ケイ素は1824年にスウェーデンの化学者イェンス・ベルセリウスによって単離された。当初は単体としての利用は限られていたが、20世紀に入ると半導体材料としての重要性が認識され、現在では電子産業の基盤を支える元素となっている。