クランプメータ
クランプメータは、導体をクランプ(鉤状のジョー)で挟み込むだけで回路を切断せずに電流を測定できる携帯型計測器である。非接触に近い形での測定が可能で、活線作業の安全性と作業効率を高める点が大きな利点である。測定原理は交流では磁界を利用する電流変成器(CT)方式、直流を含む場合はホール効果素子方式、広帯域の過渡現象にはロゴスキーコイル方式などが用いられる。多くの機種は表示部にデジタル指示を採用し、最大値保持、最小値、突入電流、ピーク保持、周波数などの補助機能を備える。導体位置の偏心、外来磁界、導体の撚り方などは読み値に影響しうるため、正しい掴み方と校正が重要である。
構造と動作原理
クランプメータのジョーは磁気回路(コア)を形成し、挟み込んだ導体に流れる電流がつくる磁束を検出して電流値に換算する。コアのギャップ精度、透磁率、巻数、センサ素子の直線性が確度に直結する。直流測定対応機ではホール素子が用いられ、交流+直流の合成電流にも追従できる。高調波解析や波形観測を想定したモデルでは、帯域特性と位相特性の平坦性が重視される。
電流変成器(CT)方式
交流専用で広く普及する。一次側に挟んだ導体、二次側に巻線を持ち、比率で電流を縮小して測る。磁気飽和を避けるために定格を大きく超える電流や強い直流成分の重畳を避けるべきである。低周波から数kHz程度までが一般的な有効帯域となる。
ホール効果方式
直流を含む測定に用いる。コア隙間の磁束密度をホール素子で検出し、直流から交流まで連続的に測定できる。オフセットドリフトを補償するためゼロ調整やオートゼロ機能を備える機種が多い。帯域は数十kHz程度までを目安とする。
ロゴスキーコイル方式
空芯コイルで磁気飽和が起きにくく、過渡電流や大電流の波形捕捉に適する。出力は電流の時間微分に比例するため、専用の積分回路で電流に換算する。柔軟なフレキシブルセンサは配線の密集部にも巻き付けやすい。
測定機能と仕様の読み方
クランプメータの仕様では、レンジ、分解能、確度(±%rdg, ±digits)、帯域、クレストファクタ、トゥルーRMSの有無、サンプリング速度、表示更新レートなどを確認する。確度は電流値と温度条件に依存し、導体の位置偏心でも誤差が増える。開口径は適用できるケーブルサイズを決め、ジョーのシールド性能は外来磁界に対する耐性を左右する。
True RMSと波形歪み
高調波や非正弦波負荷では平均値整流方式よりもTrue RMS(実効値)対応が望ましい。インバータ負荷やサイリスタ位相制御回路では波形が尖鋭化するため、帯域とクレストファクタ仕様を満たす計器を選ぶべきである。
クレストファクタと突入電流
クレストファクタ(波高率)はピーク/実効値で定義され、突入電流や断続負荷の測定ではこの値が大きくなる。計器の許容クレストファクタを超えると実効値演算が不正確になりうるため、突入電流専用の機能やピークホールドを備えたモデルが有効である。
安全と規格
クランプメータは測定カテゴリ(CAT II/III/IV)や定格過電圧、汚染度、二重絶縁などの安全要件に適合する必要がある。活線近傍での操作となるため、定格を上回る系統での使用を避け、ジョーの異物付着や破損を点検する。CAT IVは受電点近傍、CAT IIIは分電盤や固定配線、CAT IIはコンセント負荷の測定に相当する目安である。
選定のポイント
- 測定対象の電流種別(ACのみか、AC/DCか)、最大電流、周波数帯、想定する波形歪み
- 開口径と作業空間、片手操作性、表示視認性、バックライトの有無
- 確度・分解能・帯域・クレストファクタ仕様とTrue RMSの要否
- 安全カテゴリ(CAT)と使用環境電圧、プローブやリードの耐圧・絶縁
- 突入電流、漏れ電流、周波数、デューティ、温度、Bluetoothなど付加機能
- 校正証明書やトレーサビリティ体系への対応
使用手順と実務上のコツ
- 対象導体を1本だけ挟む(同一相の往復を同時に挟むと磁界が打ち消される)。
- ジョーを完全に閉じ、導体をできるだけコア中心に位置決めする。
- 直流測定時はゼロ調整を実施し、温度安定を待つ。
- 突入電流測定では専用モードかピークホールドを使用し、レンジ上限を確認する。
- 外来磁界や隣接導体の影響を避けるため、不要な配線から距離を取る。
代表的な応用
配電盤の負荷調査、三相バランスの確認、電動機の起動電流や定常電流の点検、空調設備の消費電流監視、漏れ電流の把握、太陽光やEV充電設備の点検などでクランプメータは有効である。データロギング機能搭載機では負荷変動の時間推移を記録し、保全や省エネ解析に活かせる。
校正と保守
クランプメータの確度維持には定期校正が必要である。標準器との比較や校正サービスを用い、ゼロ点ずれ、帯域端での感度、直流オフセット、温度ドリフトを点検する。ジョーの磁気回路は衝撃や金属粉の付着で劣化しうるため、清掃と保護ケース保管を徹底する。
よくある誤差要因と対策
- 導体偏心:コア中心に合わせる。スペーサで位置を安定化。
- 近接導体の漏洩磁界:不要なケーブルを束ねて距離を取る。
- 飽和・帯域外信号:定格と帯域内で使用し、必要ならロゴスキー型を選ぶ。
- 直流オフセット:オートゼロを実施し、温度安定後に測定。
- ノイズ・接触不良:ジョーの噛み合わせと清掃を確認。
関連機器と使い分けの考え方
シャント抵抗+デジタルマルチメータは高確度だが回路切断が必要である。一方、クランプメータは回路を止めずに安全かつ迅速に電流把握ができ、点検・保全の第一手段として有効である。必要に応じて電力計や電流プローブ+計測器と組み合わせ、波形・高調波・電力品質まで段階的に評価する運用が実用的である。