クライオポンプ
クライオポンプは極低温環境を利用してガス分子を凝縮し、高真空を得るためのポンプとして広く用いられている。ターボ分子ポンプや油拡散ポンプなどとは異なり、低温ステージにガスを物理的に付着・固化させることで排気を行うため、排気の過程でオイルや回転機構を必要としない点が大きな特徴だ。特に半導体製造装置や各種試験装置など、クリーンな真空環境が求められる領域でその存在感が高い。ヘリウム冷凍機を内蔵したコンパクトなクライオポンプも普及しており、液体ヘリウムを用いなくても安定的な極低温環境を維持できるようになっている。一方で、長時間運転による表面霜付や、一部ガスの排気効率低下をどのように扱うかが運用上の課題となっている。
クライオポンプの原理
クライオポンプは、真空チャンバ内に存在するガス分子を、極低温の表面に凝縮または吸着させることで取り除く仕組みを採用している。ポンプ内部には第1段と第2段の低温ステージが設けられ、それぞれ異なる温度帯を維持することで多様なガス成分を効率的に捕捉する。第1段は一般的に80K前後で冷却され、水分や炭化水素系ガスを主に取り除く。第2段はさらに低温(10K以下)に設定され、ヘリウムや水素など軽いガスを凝縮する。こうした多段冷却構造が、広範囲の分子種に対して高い排気性能を発揮する鍵になっている。
📢#ITER 最新情報✨
ITERに必要な真空環境を実現するために必要不可欠な「クライオポンプ」がITER機構が実施する最終工場受入テストに合格しました👏✨
真空容器の周りに6台、クライオスタットに2台設置される予定で、8台全ての調達を欧州チーム🇪🇺が担当します。https://t.co/NIgdDVwSTe pic.twitter.com/rVM6K4y2Jg— イータージャパン QST (@iterjapan) May 28, 2024
構造と冷却方式
従来のクライオポンプでは液体ヘリウムや液体窒素を使ってステージを冷却する方式が主流だったが、現在ではコンプレッサとクライオクーラを組み合わせた「メカニカルクライオポンプ」が広く普及している。このタイプは液体ヘリウムを交換する手間が不要で、連続運転が容易だ。ポンプ内部にスターリング冷凍機やG-M冷凍機などが組み込まれ、電源さえ確保できればステージを常に極低温に保てる。一方、冷凍機の往復運動によって微小な振動が発生するため、精密観察や干渉系測定装置では振動対策が求められる。
ITERの資料見つけた。クライオポンプかっこいいわね。
一台ほしい…いや冷媒用意しきれねぇよこんなんhttps://t.co/tAw9DPL5pa pic.twitter.com/Oa7M8jwMJO— 桑様 (@kuwahara82) May 28, 2023
再生作業とガス放出
クライオポンプは運転を続けると徐々に表面に付着したガスが蓄積し、排気能力が低下する。そこで定期的にポンプを加熱して付着ガスを放出し、大気圧付近まで排気ラインに流す「再生(リージェネレーション)」作業が必要になる。再生に要する時間や頻度は、チャンバ内のガス負荷や運転条件によって異なる。ヘリウムのような軽いガスは特に付着しにくく、ポンプ内部に滞留しやすいため、再生作業で効率的に排出しなければいけない。再生中はポンプが停止状態になるため、プロセス稼働のタイミングを考慮した運用計画が欠かせない。
メリットと課題
クライオポンプは排気過程にオイルや作動流体を用いないため、超高真空での使用においてクリーン性が高く、分子汚染リスクを極限まで抑えられる。また、回転部品をもたない構造のため、振動や騒音が比較的少ないのも利点だ。一方で、霜付による排気性能の劣化や定期的な再生作業が必要であり、ランニングコストの一部を占める。さらに、高い排気速度を得るには物理的サイズを大きくするか、冷凍機の能力を上げる必要があり、導入スペースや電力消費の面で検討が求められる。総合的なコストパフォーマンスを踏まえて、ターボ分子ポンプとのハイブリッドシステムが選択されることもある。
ULVACのクライオポンプがんばってます! pic.twitter.com/3GJK7mCdEj
— ゆ (@peacefulworld13) September 19, 2017
応用分野
クライオポンプは半導体やフラットパネル製造のほか、各種研究施設の表面分析装置、粒子加速器、宇宙空間シミュレーションなど、幅広い分野で利用されている。特に、ナノレベルの汚染や放電プロセスへの影響を最小限にしたい場合に活躍の場が多い。例えば、プラズマエッチングやスパッタ装置では、不純物の混入が最終的な製品品質を左右するため、クライオポンプのクリーン排気特性が重宝される。将来的には、クライオポンプとIoT技術を組み合わせた運転状況の可視化や、より長寿命な冷凍機の開発が進むことで、クライオポンプの利便性がさらに向上すると考えられている。
◼︎クライオポンプの音を聴こう
気体分子を極低温面に凝縮させて捕捉する真空装置!2.6E-6[Pa] なう!ヴーーー ヴーーー
ミャー ミッ
ミャー ミッ
ミャー ミッヴーーー #熱真空試験 #音が出ます⬇︎ pic.twitter.com/yVQfAxF4WP
— JAXA『いぶき2号』衛星開発チーム (@ibuki2_JAXA) May 13, 2018