ガントリー
ガントリーは、門型(門形)フレームを基礎とする支持・搬送・位置決めのための構造および装置の総称である。代表例は門型クレーン(ガントリークレーン)であるが、産業用ロボットの直交ステージや測定架台などにも門型構造が用いられる。英語の“gantry”に由来し、走行レール上を移動する橋桁と両側脚から成る。剛性を確保しつつ自重を抑える設計が重要で、荷重伝達経路、座屈、疲労、据付精度、保守性を総合的に満たす必要がある。
定義と基本機能
ガントリーは、上部の桁(ガーダ)と左右の脚柱(レッグ)で開口を形成し、その開口内外で荷を移動・昇降・横行させる機能をもつ。門型の利点は、開口部を通じて大型・長尺物の取り回しが容易であり、地上設備(治具、パレット、台車)との干渉が少ない点にある。荷役の基本は、走行(長手方向)、横行(幅方向)、揚程(上下)の三軸で構成され、必要に応じて旋回や微動が付加される。
構造と主要部材
- 主桁(ガーダ):曲げ剛性・ねじり剛性を担う中核。箱桁やH形鋼合成断面が用いられる。
- 脚柱:圧縮・曲げ・せん断を負担し、基礎へ力を伝達する。ラチスまたは箱形断面が一般的。
- 端梁・車輪・レール:走行系の骨格。車輪フランジとレール整正が走行性能を左右する。
- トロリ・ホイスト:横行・巻上装置。ワイヤロープとシーブ系の選定でロープ寿命と滑車効率が決まる。
- ブレーキ・リミットスイッチ・過負荷装置:安全確保のための必須要素。
種類と適用範囲
ガントリーの代表例は港湾・造船向けの門型クレーンで、コンテナ搬送やブロック建造に用いられる。他方、工場内では門型ロボット(直交座標型)としてパレタイジングや搬送、加工セル間のワーク移載に使われる。屋外常設型、屋内可搬型、片脚をレール・反対側をタイヤで支持するセミガントリーなど、敷地条件と荷重条件に応じた多様な派生形が存在する。
荷重条件と設計の要点
ガントリー設計では、自重、吊荷、動荷重、衝撃、走行加減速、風、地震、温度変化などの組合せが支配的となる。限界状態(強度・安定・疲労)を満たしつつ、サービス性能としてたわみ・振動・共振回避を管理する。横行時のスウェイ(振れ)抑制は巻上制御と走行制御の協調で達成し、開口幅に見合う横剛性と横倒れ安定を確保することが重要である。
座屈・疲労への配慮
脚柱は座屈長さの評価、ガーダは応力集中の緩和が鍵となる。溶接継手は応力範囲の繰返しにより疲労限を超えないよう、リブ配置、開先形状、仕上げを最適化する。
駆動・制御と自動化
走行・横行・巻上は電動モータとインバータ(VVVF)で駆動するのが一般的である。アンチスウェイ制御、位置決め用エンコーダ、レーザ測距、PLCによるインターロック、安全カテゴリ適合の非常停止・過速度検出などを組み合わせる。自動倉庫やセル生産では、ガントリーを多軸直線ガイドとサーボで構成し、繰返し精度とスループットを重視する。
設置・据付と基礎
屋外の常設ガントリーは、レール基礎の地耐力、沈下量の偏差、レベル・ゲージの整正が寿命と保守性を左右する。アンカーボルトの定着、エンドストップ位置、レール継目の段差許容、排水計画を含めて総合設計する。屋内可搬型は床荷重と走行路の平坦度、開口高さと梁下スペースを事前に評価する。
風対策・環境条件
屋外運用では風速制限の設定、ストームアンカーやレールクランプの採用、待避位置の確保が不可欠である。塩害・粉塵環境では防錆仕様、シール、塗装系、電装盤の保護等級を高める。
保守点検と寿命管理
- 日常点検:ワイヤの素線切れ、フック開口、ブレーキ作動、限界スイッチ。
- 定期保全:潤滑、車輪踏面摩耗、レール整正、ボルト増し締め、電装の絶縁測定。
- 非破壊検査:溶接部のPT/MT、重要部材のUT、亀裂の早期発見。
- 更新計画:巻上装置や制御盤の更新時期を稼働時間・負荷履歴で判断し、予防保全により停止リスクを低減する。
安全・法規・指針
ガントリーは関係法規・指針・規格に適合させる。設計・製造・検査・運転・教育・表示の各段階で要求事項を洗い出し、運用規程と点検要領を文書化する。過負荷防止、非常停止、ブレーキ冗長、転倒・脱線防止、作業半径内の立入管理、クレーン資格に応じた要員配置が基本である。
応用分野と選定指標
港湾・造船では長スパン大容量のガントリーが主力となり、鋼構造・橋梁・プレキャストヤードでは重量物の架設・搬送に用いられる。工場・物流では中小型の門型ローダや門型ロボットが多く、タクト、可用率、保全容易性、拡張余地、レイアウト拘束、電源・走行路条件を総合評価して機種と仕様を決める。
選定チェックリスト
- 最大荷重・荷重中心・荷姿(長尺・偏荷・面外荷重)
- スパン・開口高さ・設置制約(柱、配管、建屋)
- 走行・横行・巻上速度、加減速プロファイル
- 環境(屋内外、塩害、粉塵、温湿度)と風速制限
- 安全機能、保全計画、ライフサイクルコスト
設計ドキュメンテーション
ガントリーの計画段階では、荷重条件、荷役フロー、構造計算、干渉チェック、据付手順、試運転要領、保守計画を一貫して整理する。3Dモデルと干渉検討、BIM/CIM連携、施工時の仮受け・揚重計画、レール精度管理基準などを初期から決め込むことで、後工程の手戻りを抑制できる。