ガスタービンエンジン|高温高圧ガスで回す高出力動力機器

ガスタービンエンジン

ガスタービンエンジンは、空気を圧縮し、燃焼で高温高圧ガスを得てタービンで仕事を取り出し、推力または軸出力に変換する熱機関である。基本サイクルは空気標準のBrayton cycleで、航空用の推進(turbojet/turbofan)から発電・圧縮機駆動(turboshaft/turboprop/産業用)まで幅広く用いられる。高い出力密度、連続燃焼ゆえの低振動、スケール自由度の大きさが特徴で、材料・冷却・燃焼・制御の進歩が性能を規定する。

動作原理とブレイトンサイクル

ガスタービンエンジンは、(1)圧縮機で空気を高圧化、(2)燃焼器で燃料と混合・燃焼し温度上昇、(3)タービンで膨張して軸仕事を取り出し、必要なら(4)ノズルで噴射して推力を得る。理想Braytonでは圧力比の増大とタービン入口温度の上昇で熱効率が改善するが、実機では圧縮機・タービンの等効率、燃焼損失、流路損失、冷却空気の抽気などが効く。航空推進では熱効率と併せて推進効率が総合性能を決め、特にturbofanではbypass ratioが大きいほど低速域の燃費が良い。

主要構成

  • ガスタービンエンジンの圧縮機:軸流式が主流で多段化により高圧力比を実現。小容量では遠心式も用いる。可変静翼やブリードで失速・サージ余裕を確保する。
  • 燃焼器:annular/can-annular/canの形式。混合・滞留時間・冷却孔配置で安定燃焼と低NOxを両立する。
  • タービン:高圧・低圧の2軸以上が一般的。冷却翼(内部蛇行冷却、フィルム冷却)、熱遮蔽コーティング(TBC)で高温化に対応する。
  • ノズル・ダクト:推力機では可変ノズルや推力偏向、産業用では排熱回収HRSGと組み合わせて複合発電を構成する。

種類と用途

  • turbojet:ノズル噴射推力専用。高速域で有利だが低速燃費は劣る。
  • turbofan:ファンで大流量を加速。高bypass ratioでTSFC低減、民間航空の主流。
  • turboprop:プロペラで推進。短距離・低速域で効率的。
  • turboshaft:ヘリコプターや産業機械の軸出力源。
  • 産業用・発電用:単純サイクルに加え、蒸気タービンと組むcombined cycleやCHPで高総合効率を達成。
  • microturbine:小規模分散電源や非常用に用いる。

熱力学と効率

ガスタービンエンジンの熱効率は圧力比とタービン入口温度に強く依存し、圧縮・膨張の等効率が鍵となる。推進系では総合効率=熱効率×推進効率で評価し、turbofanは大径ファンでジェット速度差を抑え推進効率を高める。性能指標として航空ではTSFC、発電では熱効率・部分負荷効率・起動時間・可用率などを用いる。

コア技術の要点

  • 材料:Ni基超合金、単結晶翼、拡散AlコーティングとTBCでクリープ・熱疲労に対抗。
  • 冷却:内部リブ・ピンフィン、トランスピレーション、フィルム形成。冷却空気は圧縮機抽気ゆえ効率とトレードオフ。
  • 燃焼:lean-premixed(LPP)やRQLでNOx低減。パイロット火炎とメイン火炎の段燃焼で安定性を確保。
  • 空力:3D翼設計、可変静翼、シール最適化で漏れ・二次流れ損失を抑制。
  • 振動・騒音:ファン・コンプレッサの失速回避、ケーシングトリートメント、吸音ライナで対策。

環境影響と低排出化

ガスタービンエンジンは高温高圧燃焼によりNOxが生成しやすい。対策として希薄予混合、段燃焼、水または蒸気インジェクション、発電用途ではSCR併設がある。燃料は天然ガスが主流だが、航空ではSAFの混合が進む。将来的には水素燃焼も視野に入るが、火炎速度・NOx制御・インフラが課題である。

設計・運用と保全

  • 制御:FADECが主流で失速余裕、TET制限、エンベロープ保護を統合。
  • 起動・過渡:スタータで回転・着火後に自己維持。過渡応答でサージ線接近を避ける。
  • 保全:ホットセクションの点検・交換、ボアスコープ検査、FOD管理、状態監視(CBM)で稼働率を高める。
  • 故障様相:圧縮機サージ、翼のクリープ割れ・高温腐食、燃焼不安定、シール摩耗など。

歴史的背景

実用的なガスタービンエンジンは1930年代末に成立し、軍用jetで発展した。戦後は民間航空で信頼性と燃費が向上し、1960年代に高bypass比turbofanが登場、長距離輸送を変えた。発電分野では1970年代以降にcombined cycleが普及し、高効率化と低排出化が進展した。