カルシウム(Ca)|骨・筋・神経伝達を支える必須元素

カルシウム(Ca)

カルシウムは周期表第2族に属するアルカリ土類金属で、原子番号20の銀白色の金属元素である。地殻中に豊富に存在し、石灰石や石膏、蛍石、リン酸塩など多様な鉱物の主成分として広く分布する。生体内では骨・歯の主骨格や、細胞内情報伝達、筋収縮、神経伝達、血液凝固などを担う必須元素であり、産業面でもセメント・石灰・紙・樹脂の充填材、鋼の脱酸・介在物制御、乾燥剤など用途が広い。

基本性質

カルシウムの相対原子質量は40.078、標準状態での密度は約1.55 g/cm3、融点は約842℃、沸点は約1484℃である。価数は主に+2で、電子配置は[Ar]4s2である。標準電極電位はCa2+/Caでおよそ-2.87 Vと強い還元性を示す。空気中で表面が酸化被膜によりやや鈍色化し、湿気下では徐々に水と反応してH2を発生しCa(OH)2を生じる。酸とは速やかに反応し、ハロゲンとは常温でも化合する。

存在と資源

カルシウムは地殻中含有量が高く、石灰石(CaCO3)、白雲石(CaMg(CO3)2)、石膏(CaSO4·2H2O)、蛍石(CaF2)、アパタイト群(Ca10(PO4)6(OH,F,Cl)2)として採掘される。炭酸塩は堆積岩として海成起源で大量に賦存し、建材・土木・化学工業の基礎原料となる。海水にもCa2+が含まれ、水硬度の主要因の一つである。

製造と精錬

金属カルシウムは溶融塩電解(主にCaCl2)や真空蒸留で製造されるが、需要は合金添加や還元剤など限定的である。化合物は大量生産され、石灰石の焼成により生石灰(CaO)を得て、水和して消石灰(Ca(OH)2)とするのが基本プロセスである。さらに炭酸ガス吸収で炭酸カルシウム(CaCO3)を沈殿法(PCC)として製造でき、粒径制御により紙・樹脂用の機能性充填材となる。石膏は半水和(CaSO4·1/2H2O)化を経て硬化材として利用される。

化学的性質と反応

カルシウムは金属として強い還元性を示し、N2やH2とも高温で反応して窒化物や水素化物を与える。水との反応はMgより速く、Naより遅い中程度で、Ca(OH)2とH2を生じる。塩は一般に+2価で安定し、CaCO3は水に難溶、CaCl2は潮解性で吸湿・溶解時に発熱する。塩基性のCa(OH)2は中和・pH調整・フッ化物除去など水処理で有用である。

主要化合物

  • CaCO3(炭酸カルシウム): 方解石/アラゴナイトとして自然界に広く存在。紙・プラスチック・塗料の充填材、食品添加物、土壌改良に用いる。

  • CaO(生石灰): 高融点・強塩基性。製鋼の脱硫・造滓、土壌安定、乾燥剤、排ガス脱硫の基材。

  • Ca(OH)2(消石灰): 水酸化物スラリーとして中和・凝集、道路凍結防止材、建材モルタル。

  • CaSO4·2H2O(二水石膏): ボード材・鋳型・内装材の主原料。

  • CaCl2(塩化カルシウム): 強吸湿・発熱性。乾燥剤、除湿、凍結防止、道路融雪。

  • CaF2(蛍石): フッ素源、溶融塩浴や光学材料。

  • ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2): 骨・歯の主骨格、吸着材・生体材料。

産業用途

建設材料では、セメントのクリンカー相(C3S, C2S, C3A など)にCaOが不可欠である。紙・樹脂ではPCC/GCCの粒径・形状制御により白色度・不透明度・機械特性を調整する。鉄鋼ではCaSiワイヤ注入により硫化物介在物を球状化・改質し、被削性・靱性を改善する。非鉄ではPb-Ca合金が鉛蓄電池グリッドの耐食・クリープ抑制に寄与する。化学分野ではCa(OH)2による中和・脱フッ素、CaCl2による乾燥・凍結防止、環境では石灰石スラリーの湿式脱硫が代表的である。

生体における役割

成人体内のカルシウムは約1.0〜1.2 kgで、その約99%がハイドロキシアパタイトとして骨・歯に存在する。血中Ca2+は厳密に恒常化され、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、活性型ビタミンDが吸収・再吸収・骨代謝を調整する。Ca2+はトロポニンCを介した筋収縮、シナプス伝達、ホスホリパーゼC経路など細胞内セカンドメッセンジャーとして機能し、血液凝固因子の活性化にも必須である。摂取はMgやPとのバランスとビタミンD状態が重要である。

水硬度とスケール

水中のCa2+は硬度(通常mg/LとしてCaCO3換算)の主因で、加熱・pH上昇下でCaCO3が析出し配管・ボイラでスケールとなる。対策はイオン交換による軟水化、炭酸平衡制御、阻害剤添加、pH調整、定期的な酸洗浄などである。プロセス設計では溶解度積(Ksp)と炭酸平衡、流速・温度・濃縮倍率を考慮して析出リスクを管理する。

安全衛生と取扱い

金属カルシウムは水・湿気と反応し可燃性H2を生じるため、乾燥・不活性雰囲気下で保管する。CaOは水和で強発熱し皮膚・眼に強い刺激を与える。Ca(OH)2は強塩基性粉体で保護具が必要であり、CaCl2は吸湿・溶解熱で低温熱傷の恐れがある。粉じんは吸入を避け、こぼれは乾式回収を基本とし、水と不用意に接触させない。

代表的物性値

  • 原子番号: 20、相対原子質量: 40.078

  • 電子配置: [Ar]4s2、主酸化数: +2

  • 密度(20℃): 約1.55 g/cm3、融点: 約842℃、沸点: 約1484℃

  • 標準電極電位(Ca2+/Ca): 約-2.87 V