エアドライヤー
エアドライヤーは、コンプレッサーで生成した圧縮空気から水分を取り除き、乾いた空気を下流へ送り出す装置である。除湿の方式によって冷凍式、吸着式、膜式(メンブレン式)に大別され、要求される露点の高さに応じて使い分けられる。工場の空圧ライン、塗装ブース、計装用空気など、水分を嫌う設備では標準的に組み込まれている機器のひとつである。
圧縮空気に水分が残る理由
大気中の空気には必ず水蒸気が含まれている。30℃で飽和した空気1m³にはおよそ30gの水蒸気が存在し、これを0.7MPa(ゲージ圧)まで圧縮すると体積は約1/8に縮む。ところが温度ごとに決まる飽和水蒸気量は圧縮しても増えないため、収まりきらなくなった水蒸気は液体の水として凝縮する。アフタークーラーで冷却しても、出口の空気はその温度で飽和したままである。下流の配管で温度が数℃下がるだけで、また新たな結露が生じる。この「飽和状態の圧縮空気」から残りの水分を取り除くことが、エアドライヤーに与えられた役割となる。
水分が引き起こす現場のトラブル
乾燥処理をしていない圧縮空気をそのまま使い続けると、設備のあちこちで不具合が表面化する。代表的な例は次のとおりである。
- 鋼管内部の錆の発生と、剥がれた錆粉による電磁弁の作動不良
- エアシリンダのパッキン劣化、潤滑油の乳化による動作の渋り
- 塗装面のハジキやブツといった外観不良
- 冬季の屋外配管における凍結・閉塞
- 計装機器の誤作動、食品や医薬品ラインでの微生物繁殖
方式ごとの特徴比較
得られる露点、ランニングコスト、設置スペースは方式によって大きく異なる。主な方式を比べると下表のようになる。
| 方式 | 除湿の原理 | 圧力下露点の目安 | 主な用途 | 運転コストの傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 冷凍式 | 冷媒で冷却し水分を凝縮・分離 | +3〜+10℃ | 一般工場の空圧ライン | 低い(電力のみ) |
| 吸着式(ヒートレス) | 吸着剤で水分を捕捉、乾燥空気で再生 | −20〜−70℃ | 計装用空気、精密機器 | パージ損失が大きい |
| 吸着式(加熱再生) | ヒーターで吸着剤を加熱し再生 | −40℃前後 | 大流量の乾燥空気 | 中程度 |
| 膜式 | 中空糸膜で水蒸気のみを透過 | −20〜−40℃(入口条件による) | 末端・小流量 | パージ損失あり、電源不要 |
冷凍式の仕組み
冷凍式は、冷蔵庫やエアコンと同じ冷凍サイクルを利用して空気を冷やす。圧縮空気はまず熱交換器で2〜5℃付近まで冷却され、凝縮した水滴が分離器で取り除かれる。その後、入口側の温かい空気と熱交換して再加熱されてから出口へ向かう。出口配管の外面に結露させないための工夫で、同時に入口空気の予冷も兼ねている。圧力下露点を0℃以下まで下げると内部で水分が凍結するため、冷凍式で到達できるのは+3℃程度が下限となる。冷媒にはR134aやR407C、R410Aなどが使われ、業務用機器としてフロン排出抑制法に基づく定期点検の対象にもなる。
入口温度と能力の補正
カタログの定格処理能力は、入口空気温度35℃、圧力0.7MPaといった標準条件で示されるのが一般的である(周囲温度の基準はメーカーにより異なる)。夏場の機械室で周囲温度が40℃を超えるような現場では、能力が定格の6〜7割程度まで落ちることも珍しくない。そのため、補正係数を掛けて1ランク上の機種を選んでおくのが実務上の定石とされている。
吸着式と再生方式の違い
マイナス露点が必要なときは吸着式が選ばれる。シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト(モレキュラーシーブ)などの吸着剤を詰めた2本の塔を数分おきに切り替え、片方で除湿しているあいだにもう片方を再生する構造である。ヒートレス式は、乾燥した空気の一部を大気圧近くまで減圧して再生塔へ流す。構造は単純でメンテナンスもしやすいものの、処理量の15〜20%程度を再生用として捨てることになる。加熱再生式では、ヒーターで吸着剤を150〜200℃前後に加熱して水分を追い出すため、パージ空気量を数%程度まで抑えられる。半導体工場や粉体の空気輸送のように−70℃級の露点が求められる用途では、ゼオライト系吸着剤を使ったヒートレス式が多く採用されている。
除去水量の求め方
ドライヤーが取り除くべき水の量は、入口温度と出口露点それぞれの飽和水蒸気量の差から概算できる。
W = Q × ( x1 − x2 )
W:除去水量[g/h]、Q:圧縮状態での実空気流量[m³/h]、x1:入口温度における飽和水蒸気量[g/m³]、x2:出口露点における飽和水蒸気量[g/m³]
たとえば入口35℃(約39.6g/m³)、出口露点10℃(約9.4g/m³)、実流量60m³/hの条件では、W ≒ 60 × 30.2 ≒ 1,800g/hとなる。1時間あたり約1.8Lの水が出る計算で、ドレン排出器の容量を見積もる際の目安になる。
ISO 8573-1による空気品質等級
圧縮空気の清浄度は、国際規格ISO 8573-1とそれに対応するJIS B 8392-1:2012で等級化されている。対象は固形粒子・水分・油分の3項目で、水分については圧力下露点−70℃以下がクラス1、−40℃以下がクラス2、−20℃以下がクラス3、+3℃以下がクラス4、+7℃以下がクラス5、+10℃以下がクラス6と定められている。冷凍式で達成できるのはおおむねクラス4〜6、吸着式でクラス1〜3という区分になる。設備仕様書で「クラス1.4.1」のように3つの数字が並んでいる場合は、粒子・水分・油分の順に等級を示したものである。
前後に置く機器との組み合わせ
ドライヤー単体では油分や固形粒子までは取り除けない。上流にはメインライン用のエアフィルターを配置するのが基本構成である。とりわけ吸着式では、給油式コンプレッサーから流れてきた油分が吸着剤の表面を覆うと除湿能力が回復しなくなるため、オイルミストフィルターの設置はほぼ必須と考えてよい。凝縮した水はドレンとして自動排水器から排出されるが、潤滑油が混じっているので、そのまま雨水桝や下水へ流すことはできない。油水分離器で処理してから排水するのが、環境対応の面でも監査の面でも現場の常識になっている。
保守と省エネの実務
冷凍式で能力低下の原因として最も多いのは、凝縮器フィンへのほこりの付着である。月に1回程度のエアブローを習慣にしている工場は多い。吸着式の吸着剤は使用条件にもよるが3〜5年程度で交換時期を迎え、交換費用は大型機になると数十万円規模に達する。無負荷時にもパージを続けてしまうヒートレス式は、露点計と連動したパージ制御を後付けするだけで空気損失を大きく減らせる。圧縮空気の生成に使われる電力は工場全体の2割前後を占めるともいわれ、全ラインを一律に−40℃で供給するより、一般用途は冷凍式、計装や塗装の末端だけ吸着式という「露点の使い分け」を設計段階で行うほうが、運転コストを抑えやすい。
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