せん断切断
せん断切断は、上下の刃で材料を挟み、せん断応力を集中させて破断させる切断法である。板金の直線切り(シャーリング)、打抜き(ブランキング・パンチング)、トリミング、スリッティングなど多用途に適用される。刃先直下の材料は塑性流動したのちに亀裂が発生し、板厚方向へ進展して分離に至る。仕上がり面は「だれ(ロールオーバ)」「せん断面(バニッシュ)」「破断面」「バリ」の帯状構成を示し、クリアランスや刃先状態、クランプ条件により比率が変化する。高能率・高い直線性・低い加工コストを実現しやすい点が特徴である。
原理とメカニズム
上刃と下刃に挟まれた材料は、切刃近傍に大きなせん断応力が生じ、まず押込みによる塑性変形、続いて局所的な亀裂発生、そして亀裂の進展で分離する。切断力は周長または切断長さと板厚に比例し、おおまかに切断力F≒τs・t・Lで見積もる(τsは材料のせん断強さ、tは板厚、Lは同時かみ込み長さ)。傾斜刃(ラケ角)を設けると同時かみ込み長さが短くなり、最大荷重が低減する一方で、反りやねじれへの配慮が要る。クリアランスは板厚の数%〜10%程度に設定し、過小では工具摩耗やかじり、過大ではバリ増大を招く。
装置・工具構成
直線切り用のシャーリングマシンは、上刃・下刃、押え(ホルダ)、バックゲージ、受けテーブルから構成される。大量生産では、プレス機と金型(パンチ・ダイ)でブランキングや穴あけを行う。連続コイル材には円盤刃のスリッタを用い、幅方向に多数条を同時切断する。工具材は耐摩耗性の高い冷間工具鋼(例:SKD系)や超硬を用い、刃先Rは微小に保つ。潤滑は焼付き抑制と面品位の安定に有効である。
品質特性と欠陥対策
切断縁の評価指標には、だれ量、バリ高さ、バニッシュ長、割れの有無、直線度・平面度、反り・ねじれがある。過大クリアランスや刃先摩耗はバリ・割れを助長し、材料流動が乱れると面粗さも悪化する。対策として、適正クリアランス設定、刃先再研磨と角度管理、傾斜刃の最適化、材料押え圧の確保、防振・剛性強化、適切な潤滑が有効である。切断後はバリ取り(面取り・ブラシ・電解)や、エッジ硬化層の除去を工程設計に織り込む。
工程設計と生産性
材料歩留り向上には、レイアウト(ネスティング)でスクラップを最小化し、送りピッチ・取り代・位置決め精度を設計する。プレス系では、ブランキング→ピアス→トリムなどの順序を定め、曲げ・成形との連携を考慮する。シャーリングではバックゲージの再現性、支持ロール配置、クランプ位置が寸法安定に直結する。自動化では、コイル供給、レベラ、フィーダ、スタッカを連結し、段取り時間を短縮する。
計算・選定と設備容量
設備選定は、最大切断力Fとストローク条件、必要剛性、繰返し速度から行う。モータ出力はP≒F・v/ηで見積もり、vは切断に関わる相対速度、ηは効率である。傾斜刃を用いる場合、同時かみ込み長さLが減るためピーク荷重は低下するが、平均エネルギは製品長・板厚・材料強度に依存して概ね一定である。変動荷重に備え、余裕係数や安全率を考慮した容量設定と、フレーム剛性・スライド案内精度の確保が重要である。
材料と組織への影響
切断縁には加工硬化と残留応力が生じ、後工程の曲げ・溶接・表面処理に影響を与える。高強度鋼やアルミ合金では、微小なマイクロクラックが起点となり疲労強度を低下させる場合があるため、縁の面取りや二次せん断の採用で改善する。エッジ品質要求が高い場合は、金型の面取り形状や押え力分布を最適化し、必要に応じてファインブランキングや二次仕上げを併用する。
安全・保全と監視
せん断装置は高い切刃エネルギを扱うため、安全囲い、ライトカーテン、両手操作装置、非常停止、インターロックの整備が不可欠である。保全では、刃先の欠け・摩耗、平行度・直角度、バックゲージのガタ、クランプ圧の偏りを定期点検し、摩耗限界到達前の再研磨・交換を計画的に実施する。振動・荷重・温度のセンシングにより、早期劣化を検知しダウンタイムを抑制する。
関連プロセスと適用領域
せん断切断と目的の近いプロセスには、ファインブランキング(高面圧・V字圧痕で高品位縁を得る)、レーザ切断(熱的に分離)、ウォータジェット(熱影響が小さい)、フライス・のこぎり(切削による分離)がある。適用は要求精度、材料、板厚、形状、熱影響や後工程の要件に応じて選ぶ。コイル材の幅出しや条取りにはスリッティング、成形後の余肉除去にはトリミングを用いる。
用語・測定と規格
切断縁の帯状構成(だれ・せん断面・破断面・バリ)の定義、バリ高さ・直線度・平面度の測定法、刃角やクリアランスの表示法は、一般にJISやISOの用語・試験方法に準拠して整備されている。検査では、投影・触針・画像計測のほか、断面観察で硬化層や割れの有無を確認する。締結部ではバリがボルト座面やワッシャに干渉しないよう、図面に面取りやバリ許容量を明示する。
設計の勘所(実務メモ)
狙いの縁品質と生産性を定め、材料強度・板厚・切断長から設備容量を仮設定し、クリアランスと刃角で荷重・品位・反りをバランスさせる。押え圧と支持条件でびびりを抑え、金型・刃物の再研磨周期を管理する。試作では切断面帯の比率とバリ高さを指標に条件を絞り込み、量産では条件票と定常監視で再現性を確保する。これらの積み上げがせん断切断の安定化とコスト最適化に直結する。