WDMシステム(応用)|多波長多重で大容量高速通信を実現

WDMシステム

WDMシステム(波長分割多重)は、単一の光ファイバに複数の波長(λ)を同時に載せて伝送容量を飛躍的に高める技術である。長距離バックボーン、メトロ、データセンター間(DCI)などで広く用いられ、波長は独立した論理チャネルとして扱われる。送受信の安定化には狭線幅レーザの温度制御、波長多重・分離にはAWGや薄膜フィルタが用いられ、監視には光スペクトラム解析やモノクロメーターが役立つ。光路や素子の設計には屈折率分散の理解が不可欠で、発振源の安定度はレーザ発振共振器の特性に強く依存する。

原理と基本構成

光送信機は各チャネルごとに所定のλへ変調を施し、MUX(多重器)で合波してファイバへ投入する。受信側ではDEMUX(分波器)でλごとに分離し、各受信機で復調する。多重・分離にはAWG、インターリーバ、薄膜バンドパスフィルタが使われ、実装はラックマウントのトランスポンダ/ラインカードとして提供される。電気層ではOTNやEthernetが上位フレームを担い、光層は波長とパスを保証する。

CWDMとDWDM

WDMは大別してCWDMとDWDMがある。CWDMは20 nm間隔の粗間隔で1271–1611 nmに分布し、装置が簡素でコスト効率に優れるためメトロ系に適する。一方DWDMは100/50/25 GHz間隔などの狭間隔でC/Lバンドに高密度配置し、EDFAやRaman増幅と併用して長距離・大容量に対応する。チャネル数や拡張性、OSNR要求はDWDMの方が厳格である。

変調方式とコヒーレント受信

従来のIM-DDに加え、長距離や400G/800G級ではDP-QPSKや16QAMなどのコヒーレント変調が主流である。受信側はローカルレーザを用いて位相・偏波を復元し、DSPでCD/PMD補償やクロック回復、FEC処理を行う。コヒーレント化によりOSNR耐性とスペクトル効率が向上し、高密度DWDMでのスぺクトラム最適化がしやすくなる。

光増幅とリピータ設計

長距離区間ではEDFAが標準であり、利得平坦化(GAIN FLAT)やASE雑音低減がOSNR設計の要となる。分散や非線形(SPM/XPM/FWM)を考慮してスパン長・光出力・チャネル間隔を設定し、必要に応じて分布ラマン増幅を併用する。OEO中継は再定時・再整形に有効だが、レイテンシとコストが増すため近年は全光中継の比率が高い。

ROADMと光レイヤ制御

OADM/ROADMは任意波長の通過・分岐・追加を実現し、WSSを用いたCDC(Colorless/Directionless/Contentionless)構成により柔軟なメッシュ網を構築できる。SDN/NMSからの波長パス制御、障害時の自動リルート、容量拡張時のオンデマンドなλ追加が可能となる。監視はOCMやスペクトラム監視で行う。

設計指針(損失・分散・非線形)

リンク設計はスパン損失、コネクタ・スプライス損、MUX/DEMUX挿入損、増幅器NFを積み上げOSNR余裕度を確保する。CDはG.652D/655などファイバ種類で異なり、DCFやDSPで補償する。高出力化はFWM等の非線形を誘発するため、チャネル間隔や発信光パワーの計画が重要である。必要に応じてガードバンドを設ける。

利点と課題

  • 利点:既設ファイバの増設不要で容量拡大、λ単位のトラフィック工学、障害局所化が容易。
  • 課題:温度ドリフトやλ安定化、OSNR確保、非線形抑制、ネットワーク全体の光層最適化など設計自由度が高い分、検討項目が多い。

測定・保守

導入・運用ではOTDRによる区間損失・イベント検知、光スペクトラムアナライザでのチャネル電力・OSNR測定、トランスポンダ側のPRBS/BERT試験が基本である。周波数グリッドの確認や波長精度の校正にモノクロメーターを活用し、NMSはソフトウェア連携でアラーム収集や可視化を行う。

適用分野と装置インタフェース

DCIではZR/ZR+の相互接続が普及し、フロントホール/バックホールではeCPRIやOTNフレーミングが用いられる。トランシーバはQSFP-DD/CFP2等を採用し、ライン側はコヒーレント、クライアント側はEthernetが一般的である。電源設計では装置全体の効率や力率改善が求められる。

波長計画と保護設計

運用波長の割当てはL0/L1/L2の経路衝突回避、保護切替のパス独立性、メンテナンス時のλ退避を考慮する。保護は1+1、1:1、共有メッシュなどを使い分け、制御面での収束時間と光層での瞬断時間を整合させる。DWDMでは周波数グリッド(例えば100 GHz)準拠の割当てが基本となる。

材料・デバイスの視点

AWGやWSSは導波路・回折光学の設計が鍵で、温度係数や製造ばらつきがチャネル特性に影響する。レーザは狭線幅・低RIN・高直線性が求められ、温調と組合せてλドリフトを抑制する。これらの要素は屈折率分散や共鳴条件(共振器)の制御に直結する。

実務上の注意点

  • 清掃・接続:フェルール端面の汚れは反射・挿入損増大の主因であり、清浄保持と検査を徹底する。
  • 電力配分:各λの光パワー均一化(パワーイコライゼーション)と増幅器の利得平坦化を併用する。
  • 障害対応:スペクトラム変動やλ消失は即座にOCMで把握し、ROADMの切替で迂回する。

補足:標準化・安全・関連規格

周波数グリッドはITU-T G.694.1(DWDM)/G.694.2(CWDM)に規定され、ファイバはG.652/G.654/G.655/G.657が広く用いられる。装置はレーザ安全に配慮し、IEC準拠のクラス分類を満たす。発振源や共振構造の理解にはレーザ発振の基礎が有用である。

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