TLAC
TLAC(Total Loss-Absorbing Capacity、総損失吸収能力)とは、システム上重要な銀行が破綻した場合でも、その損失を吸収し、金融システム全体に影響を与えずに再建できるようにするために求められる自己資本および負債の総額のことを指す。これは、金融危機を防ぐために国際的に設定された規制であり、特に「グローバル・システム上重要な銀行」(G-SIBs)に適用される。
TLACの背景
TLACは、2008年のリーマンショックに代表される金融危機を受けて導入された規制の一つであり、システム上重要な銀行が破綻した際に、税金による救済措置に頼らずに損失を吸収できるようにすることを目的としている。これにより、金融システム全体の安定性を保ち、破綻が他の金融機関や市場に波及しないようにすることが狙いである。
TLACの構成要素
TLACは、自己資本や劣後債など、銀行が破綻した際に損失を吸収できる資本および負債で構成される。TLACに含まれる資本には、株主資本、Tier 1資本、Tier 2資本、劣後債などがあり、これらが一定の割合で求められる。TLACは、規制当局が定める最低基準を満たすため、G-SIBsはこの基準に従って適切な資本構成を維持する必要がある。
TLACの役割
TLACの役割は、銀行が破綻した際に必要な資金を確保し、その損失を吸収することにある。TLACが適切に維持されることで、銀行が自己資本と負債を用いて再建が可能となり、金融市場全体への影響を最小限に抑えることができる。これにより、政府や納税者による救済措置を回避し、金融システムの信頼性が向上する。
TLACの規制と実施
TLACは、金融安定理事会(FSB)が提唱した国際規制の一環であり、各国の規制当局によって実施されている。TLAC規制は、G-SIBsに対して2022年までに完全に導入されることを目指しており、これにより各銀行は自己資本および損失吸収能力を強化する必要がある。具体的なTLACの基準は、総資産の一定割合で示される。
TLACの課題
TLACの導入には多くの利点がある一方で、いくつかの課題もある。特に、G-SIBsは追加の資本を確保するために高コストの負債を発行する必要がある場合があり、そのコストが銀行の収益性に影響を与える可能性がある。また、規制が厳格化することで、銀行がリスクを回避しすぎ、金融市場における流動性や融資活動が抑制されるリスクもある。