QCストーリー
QCストーリーは、品質管理や業務改善の活動を記録し、分析するためのツールである。QCストーリーでは問題の設定、原因の分析、対策の立案をさらに細かく分けて手順化することで、問題解決に導き、そして具体的な事例として示し、関係者に理解しやすく伝えることを目的としている。仕事の中でQCストーリーを使い続け、常に新しい問題を発見し、目標を設定して品質保証活動、QCサークル活動、改善活動を効果的に共有するために用いられる。
QCストーリーの基本概念
一般にQCストーリーは、実際の業務改善活動や品質管理プロジェクトの進行状況を物語の形式で記述する。問題の発見から解決までの過程をストーリーとして構築し、プロジェクトの成果や教訓を明確に示すことができる。QCストーリーは、成功事例や失敗事例の両方を含み、どのようなアプローチが有効だったか、どのような問題が発生したかを詳細に記録する。
QCストーリーの8つのステップ
以下に示す8つのステップがQCストーリーの具体的な手順である。多くの企業では、このステップを応用して利用される事も多い。特に現状の把握と要因の解析に重点を置くことで、問題の根本原因を明確にし、それに対する具体的な対策を講じる。
基本ステップ
- 問題の明確化
- 現状の把握
- 目標の設定
- 要因の解析
- 対策の立案と実施
- 対策の実施
- 効果の確認
- 標準化と管理の定着
- 反省と今後の対応
問題の明確化
問題の明確化(テーマの選定)は、日常で持っている、特に無意識なレベルで抱いている問題を明確化することである。「理想の状態」と「現状」との比較から問題を明確にし、活動テーマを選定きめていく。具体的なやり方としては、まず、テーマ候補を複数挙げる。困っていること、不安なこと、煩わしいこと、次工程に迷惑をかけていることをすべて洗い出す。これらを効果の大きさ、緊急性、実現性、解決コストの観点を総合的に評価し、取り組むテーマを決定する。
具体的なテーマ
テーマは、品質、コスト、納期、生産量、設備、売り上げなど、さまざまな要素に関するものが考えられるが、できるだけQCサークル活動のメンバーに共通するテーマを選定するとよい。テーマ決定までのプロセスを整理し、記録として残しておくことで、別のテーマの決定や成果の発表の際に役立つ。
現状の把握
現状把握は問題を時系列・層別にして区分けを行い、現状を正しく把握する工程である。特にばらつきの有無に注目し、時間的にどの時期にいい時と悪い時があるか、急に悪くなる時間があるか。そして、工程別、方法別、原料別、症状別、人別など層別でみることが重要である。
目標の設定
目標設定は「なにを、どこまで、いつまでに」達成するかの工程で、①目標項目、②達成基準、③達成期限を決定する。目標を決めたら、その目標に対してさらに深く具体的にしていく。特に目標値を数値で設定することで、目標値を達成できたかいなかで定量評価を行うことができる。
要因の解析
要因の解析とは、問題を引き起こしている原因を追及する工程である。始めに原因と思われるものを洗い出しリストアップする。その中で、実験や調査で可能性の高いものを絞り込んでいき、真の原因(品質不具合を生んだ仕組みの原因)を追求する。
対策立案と実施
原因の発生を防ぐために、対策とその実行計画を立案・実施する工程である。応急処置と恒久対策とがあり、応急措置は一時的でその場での対策で、恒久対策は、原因を除去あるいは原因の影響を遮断する対策である。通常、恒久対策を目標として、いくつかの対策案を出し、効果、費用、実現性、安全性、副作用などで評価し、実行に移す。
効果の確認
効果確認では、目標の達成基準に達成されたか、改善の有無、対策の狙いは達成できたか、副作用は発生していないか、コストパフォーマンス、期待していなかった別の効果が生まれていないかなどを確認する。できる限り数値やグラフで表現することが望ましい。効果が望ましくないときは目標設定の問題、原因の間違い(ほかに原因がある)、対策が不十分など問題を分析し、次の対策に生かす。
標準化と管理の定着
標準化と管理の定着では、問題を体系的かつ効果的に解決することが可能となる工程で、対策を実施した効果が元に戻らないよう定着させる。これが社内標準となり、体系的かつ効果的に解決する。
反省と今後の対応
反省と今後の対応で、活動の結果とプロセスを反省し、今後の計画を立案する。
解析的アプローチ
QCストーリーは、好ましくない結果(不適合品、事故など)がすでに発生してしまったケースの問題に適用されることが多い。問題を現状の把握で明らかにし、問題を発生させている原因を要因の解析で追及していく。このように結果から原因を追及していくアプローチを解析的アプローチとは、QCストーリーでは効果的とされる。
QCストーリーの実践例
QCストーリーは、さまざまな業界で実践されている。例えば、製造業では、品質管理の成功事例や改善活動の過程をストーリーとしてまとめ、他の部門や企業と共有することがある。また、サービス業や医療業界などでも、業務改善の事例をQCストーリーとして記録し、業務の標準化や品質向上に役立てることが多い。これにより、経験と知識の共有が促進され、組織全体の改善活動が推進される。