PTFE|高耐熱・超低摩擦のフッ素系樹脂

PTFE

PTFEはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)と呼ばれるフッ素樹脂であり、四フッ化エチレン(TFE)の重合体である。一般名として「テフロン」の商標で知られ、極めて高い化学的安定性、低い摩擦係数、優れた電気絶縁性、広い使用温度範囲を併せ持つ。非粘着性と耐薬品性を活かし、化学プラントのライニング、シール材、配管部材、電線絶縁、摺動部品、調理器具のコーティングなど、多様な産業分野で用いられる。溶融粘度が非常に高く一般的な溶融成形が難しい点が設計・加工上の特徴である。

定義と名称

PTFEは繰返し単位(−CF2−CF2−)を持つ完全フッ素化ポリマーである。高い結晶性と極性の低さにより、ほとんどのアルカリ・有機溶剤に侵されにくい。商標「Teflon」は歴史的に広く流通しているが、材料名としてはポリテトラフルオロエチレンが標準的である。

化学構造と製法

四フッ化エチレン(TFE)モノマーを懸濁や乳化などの方法で重合してPTFE微粉末を得る。得られた粉末は圧縮成形後に焼結することでバルク体となる。分子鎖は剛直で分子間相互作用が弱く、溶融状態でも流動しにくいため、通常の射出・押出ではなく、焼結やペースト押出といった粉体プロセスが主となる。

代表的な物性値(目安)

  • 密度:約2.2 g/cm³
  • 融点:およそ327 ℃
  • 連続使用温度:概ね−200〜260 ℃
  • 摩擦係数:乾燥下で約0.04〜0.1
  • 誘電率:低く(目安2.1前後)、誘電正接も小さい
  • 吸水率:ほぼ0、体積抵抗率は極めて高い

特性

  • 耐薬品性:強酸・強アルカリ・多くの有機溶媒に対し不活性で、化学装置に適する。
  • 耐熱・難燃:高温下でも性状を保持し自己消火性を示す。
  • 低摩擦・離型:固体潤滑に適し、非粘着性により付着・汚れが生じにくい。
  • 電気特性:広帯域で低誘電率・低損失、絶縁材料として信頼性が高い。
  • 耐候:紫外線や気候に強く、屋外用途でも長期安定が期待できる。

接着・表面改質

PTFEは表面エネルギーが極めて低く、通常の接着剤は密着しにくい。接着が必要な場合は、ナトリウム系溶液による化学エッチングやプラズマ処理などの表面改質を施してから接着する方法が用いられる。

熱分解と安全

PTFEは高温で安定だが、過度な加熱では分解ガスが発生するため、加工時は十分な換気が必要である。設計・設備計画では排気系や温度監視の導入が望ましい。

成形加工法

  • 圧縮成形・焼結:粉末を金型で成形し、融点以上で焼結してブロック・シート・ロッドを得る。
  • ペースト(ラム)押出:潤滑剤を添加したペーストを押出し、脱脂・焼成してチューブや被覆線を作る。
  • スカイビング:焼結ブロックを旋削して薄膜・テープを得る。
  • 分散塗布:水系分散液を基材に塗布・焼成して非粘着コーティングを形成する。

充填材による機能拡張

PTFEガラス繊維カーボングラファイト青銅、MoS2などの充填で耐摩耗性・寸法安定性・熱伝導性を高められる。摺動部品では摩耗粉の生成を抑え、PV限界の向上が期待できる。

主な用途

  • 化学機器:ライニング、ガスケット、バルブシート、攪拌機シール。
  • 配管・シール:ねじ部のシールテープ、膨張シール、ベローズ。
  • 電気・電子:同軸ケーブル・高周波基板の絶縁、センサの絶縁スペーサ。
  • 機械要素:すべり軸受、スライドプレート、リニアガイドの摺動ライナー。
  • 医療・分析:チューブ、ルアーフィッティング、ラボ用器具。
  • 生活用品:非粘着コーティング。製造では環境配慮の薬剤選択が進む。

設計上の留意点

  1. クリープ・冷流:長期荷重で変形しやすい。座面積を十分にとり、面圧を制御する。
  2. 熱膨張:線膨張係数が大きい。金属との組合せでは温度差を見込んだ逃げ・スロットを設ける。
  3. 寸法精度:焼結品は加工取り代を考慮し、仕上切削で公差を確保する。
  4. 摺動設計:荷重×速度(PV)を管理し、潤滑や充填材で摩耗を抑える。
  5. 締結:直接タップは座屈や摩耗の原因となるため、金属インサートやボルト締結の併用が有効である。
  6. 環境条件:放射線には弱く、超高真空・超高温では代替材料の検討も行う。

関連するフッ素樹脂

PTFEと同系の材料としてFEP、PFA、ETFE、PVDFなどがある。用途や加工性、電気特性、透明性などの観点で選択肢が広がる。特にFEPやPFAは溶融成形可能な点が特徴で、被覆線や透明チューブに用いられることが多い。

規格・評価の考え方

PTFE製品は、機械特性(引張、圧縮、硬さ、摩耗)、熱特性(融点、熱膨張、熱老化)、電気特性(誘電率、絶縁破壊強さ)、化学耐性などをJISやISO、ASTMの手法に則って評価する。実機適用では、想定環境に合わせた薬液浸漬や長期の温度・荷重試験を併用し、設計マージンを定量化することが重要である。