NOxセンサー|排気中NOxをリアルタイム監視

NOxセンサー

NOxセンサーは、排気中の窒素酸化物(NOおよびNO2の総称)濃度を電気化学的に検出し、エンジン制御ユニット(ECU)へフィードバックを与えるデバイスである。ディーゼルやリーン燃焼ガソリンの排出ガス後処理(SCRやLNT)の要となり、上流・下流に配置して尿素水噴射量の最適化や触媒劣化の監視、OBD適合の判定に用いる。センサー内部は高温作動の固体電解質とポンピングセルで構成され、拡散律速下で得られるポンプ電流からNOx濃度を演算する。応答性・耐久性・交差感度管理が品質の核心であり、温度制御と拡散構造の設計が性能を左右する。

役割と用途

NOxセンサーは、排気系の要所で実濃度を計測し、閉ループで後処理を駆動する。SCRではアンモニア供給(尿素水の分解生成)を過不足なく制御し、下流側で「アンモニアスリップ」を抑えつつNOx除去率を高める。LNTでは再生スケジュールの妥当性評価や劣化診断に寄与する。OBDでは不合理検知や応答試験により、センサー・触媒・噴射系の系統健全性を確認する。

測定原理

一般にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた平面型多層セラミックの電気化学式である。一次ポンピングセルでO2分圧を基準化し、拡散素子でガス流入を律速。触媒電極でNOxを電気化学還元(または分解)し、必要電流(ポンプ電流)が濃度に比例する。ECUは電流を換算し、ppm単位のNOx濃度として利用する。作動温度は約650–850℃で、内蔵ヒーターと温度フィードバックにより安定化する。

構造と材料

平面セラミック基板に、YSZ固体電解質層、白金系電極、拡散バリア、保護コート、アルミナ支持層、シロッコ型ヒーターなどを積層する。プローブ先端のガス導入路は耐スス詰まり形状とし、熱衝撃と振動に耐える封止構造を採る。ハーネス側は高温耐熱導体とEMC対策を施し、車両側の電源品質変動に対しても信頼性を確保する。

性能指標

  • 計測範囲:低濃度数ppmから数百~1000ppm級までの直線性
  • 応答時間:T90でおおむね1s級を指向
  • 精度・再現性:温度・流量・O2分圧の影響を補正して確保
  • 耐久:煤・硫黄・リン・シリコーン等の被毒や熱劣化への強さ
  • ドリフト:長期安定性と自己診断での補正可能性

交差感度と補正

NOxセンサーはO2、H2O、HC、CO、NH3などの共存成分に影響を受けうる。特にSCR下流ではNH3残存が示度に寄与するため、拡散設計や触媒選択性、ソフトウェア補正で寄与分を排除する。流速・温度・圧力の変化に対しては内挿テーブルとモデルで補正し、零点校正やスパン学習により経時変化を抑える。

配置と取り付け

上流側はタービンアウトレット近傍で高速応答を得るが、過熱・スス堆積回避のため角度や突出量、遮熱を最適化する。下流側はSCR出口直後に配置し、混合均一性を確保するため直前の配管形状や流れを整える。ハーネス取り回しは高温部回避と最小曲げ半径遵守が基本である。

制御・信号処理

ECUはヒーターPIDで作動温度を一定化し、ポンピングセルの電流を高速サンプリングする。ノイズ除去はローパスと外乱オブザーバの組合せが有効で、トランジェント時はモデル追従ゲインを可変にして過度な遅れとチャタリングを回避する。信号はフィルタ後に濃度へ換算され、尿素噴射のフィードバックに直結する。

故障モードと診断

  • ヒーター断・短絡:立ち上がり遅延や作動不能、DTC記録
  • 電極劣化・被毒:零点シフト、感度低下、応答遅延
  • 配線接触不良:断続的な飽和出力やノイズ増大
  • 煤・結露:拡散路閉塞や熱衝撃割れのリスク

OBDでは回路健全性、応答試験、合理性チェックを行い、異常時はトルクリミットやフェイルセーフ噴射で排出超過を抑える。

保守と交換

NOxセンサー交換時は配管温度の十分な冷却を待ち、トルク管理とシール性確保を徹底する。学習値を初期化し、リークセルフチェック後に基準運転で新センサーの零点を馴染ませる。上流のオイル消費過多やシリコーン由来被毒源を同時に是正しなければ再劣化を招く。

関連システムとの連携

SCRの尿素噴射バルブ、アンモニアセンサー、酸素センサー、DPF差圧センサーなどと協調して、NOxとNH3の同時最適化を図る。上流・下流の二点計測により触媒効率をオンライン推定し、経年劣化をモデル更新して制御目標を維持する。

規制・適合の要点

各国の排出ガス規制では、NOx排出量の低減とOBD適合が不可欠である。車載環境における熱・振動・EMC・薬剤曝露に対して十分なロバスト性を確保し、ソフトウェアは故障検出の感度・誤検知率・復帰条件を規定内で満たすことが求められる。結果としてNOxセンサーの計測信頼性が全体適合の土台となる。