NFC
近距離無線通信の一つとして広く利用されるNFCは、モバイル端末やICカード、ウェアラブルデバイスなどをかざすだけで通信を可能にする技術である。対応機器同士が数cm程度の短い距離で情報をやりとりするため、決済や交通機関の乗車、個人情報の認証など幅広い場面に応用されている。その特徴は小さな送受信エリアゆえの高いセキュリティ性と簡便性にあり、日常生活の利便性を飛躍的に向上させる要素となっている。
概要
短距離通信規格の一種であるNFCは、ISO/IEC 18092やISO/IEC 14443などの複数の国際規格をベースとして定義されている。13.56MHzの周波数帯を用い、通信距離を最大でも数cm程度に抑えることで、混線や盗聴などのリスクを低減している。また、高価な機器を必要とせず、モバイル機器やカード類に組み込まれやすい特性から、電子決済やセキュリティ認証を中心に多様なアプリケーションに展開されてきた背景がある。
通信モードとプロトコル
通信モードは主に三種類に分けられ、リーダー/ライターモード、カードエミュレーションモード、ピア・トゥ・ピアモードが存在する。リーダー/ライターモードはNFCタグなどの情報を読み書きする際に用いられ、カードエミュレーションモードはスマートフォンなどをICカードのように振る舞わせることで、交通機関の乗車カードや電子マネーの利用を可能にする。ピア・トゥ・ピアモードは対応端末同士が相互にデータを交換する仕組みを提供し、名刺情報や写真ファイルなどの共有をスムーズに実現するために使われる。これらのモードはISO/IEC 14443 Type A/BやFeliCa、MIFAREといった複数の規格に対応しながら、汎用性の高い通信方式を実現している。
セキュリティとプライバシー
数cmという極めて近い範囲でのみ通信を行うNFCは、他の無線通信手段と比べて傍受やスキミングのリスクが低いとされる。ただし、悪意ある第三者が物理的に近づき、不正なリーダーを用いて情報を読み取る可能性がゼロではないため、端末のロック機能や暗号化技術の活用は依然として重要である。また、カードエミュレーションモードによって消費者の購買履歴などが蓄積されやすい環境が生まれ、プライバシー保護の観点から利用者への周知が必要とされる場面も増えている。
実用例と将来性
電子マネーや交通カードのキャッシュレス決済のほか、スマートフォンを使った受付やドアロック解除といった認証システムでもNFCが利用されている。また、イベント会場でのチケット確認や来場者の属性分析、医療現場での患者ID管理など、さまざまな分野での活用が進んでいる。IoT機器やウェアラブル端末などの普及が進むにつれ、センサー情報や健康管理データを手軽に連携する手段として期待が集まっており、強固なセキュリティやプライバシー保護技術とあわせてさらなる発展が見込まれる。