NC旋盤
NC旋盤は、数値制御(Numerical Control)により主軸回転と刃物台の送りを高精度に同期させ、円筒加工や端面加工、溝入れ、ねじ切りなどを自動化する工作機械である。工作物はチャックで把持し、主軸が回転する一方、刃物台(タレット)がX軸(半径方向)とZ軸(軸方向)へ送りを行う。手動ハンドルを主体とする汎用旋盤に比して、プログラムに基づく連続軌跡制御、補間、工具補正、座標系の管理が可能で、同一品質の量産と段取り替えの迅速化を実現する。高剛性ベッド、精密ボールねじ、リニアガイド、スピンドルユニット、サーボモータ、C軸やY軸の追加により複合加工にも対応する。
原理と主要構成
NC旋盤の基本構成は、主軸台(スピンドル)、刃物台(タレット)、ベッド、往復台/クロススライド、チャック・コレット、テールストック、ボールねじ・ガイド、サーボ・エncoder、制御装置(CNCユニット)、油圧・潤滑・クーラント系から成る。主軸はベアリングで支持され、周速一定制御や主軸同期機能(C軸)を持つ。タレットには外径バイト、内径バイト、突切り、溝入れ、ねじ切り、ドリル・エンドミル用の回転工具(ミーリング機構)を装着する。ボールねじは予圧でガタを抑え、リニアスケールや高分解能エncoderと組み合わせて位置決め精度・繰返し精度を高める。
制御方式とプログラミング
NC旋盤はGコード(ISO 6983/EIA RS-274)でプログラミングする。代表的な指令として、G00(早送り)、G01(直線補間)、G02/G03(円弧補間)、G96/G97(定周速/定回転)、G71/G72(荒取り・仕上げ加工サイクル)、G76(多段ねじ切り)、G40/G41/G42(工具径補正)、G50/G92(主軸上限制限・座標設定)、M03/M04/M05(主軸正逆転・停止)、M08/M09(クーラントON/OFF)などがある。座標系は機械座標とワーク座標(G54〜G59等)を区別し、原点復帰後にワーク原点を定義する。工具長・工具径補正、ノーズR補正を適用して指令軌跡と切れ刃干渉の差異を補正する。
加工プロセスと段取り
NC旋盤の段取りは、チャック・コレット選定、把持長と突き出し量の最適化、爪の成形、センタ押しの要否判断、工具選定とオフセット登録、主軸回転数・送り量・切込み量・クーラント条件の設定から成る。素材径・材質(炭素鋼、合金鋼、アルミ、銅合金、樹脂等)に応じて切削速度を決め、定周速制御で切削域の周速一定化を図る。把持・支持の剛性はびびり抑制に直結し、突き出しはできるだけ短くする。治具固定にはボルトやTスロットナットを用い、干渉と芯振れを最小化する。
精度・剛性・熱と振動
NC旋盤の精度は、位置決め精度、繰返し精度、真円度、同軸度、直角度、面粗さで評価する。精度劣化の主因は熱変位、ボールねじの伸び、スピンドル熱、環境温度変動、刃先摩耗、チャック把持偏差である。対策として、熱対称構造、強制冷却、ウォームアップ運転、熱補償、機上測定によるオフセット補正を行う。剛性不足や工具突き出し過大はびびり(自励振動)を誘発し、仕上げ面粗さと寸法精度を悪化させるため、工具ホルダ剛性、クランプ力、切削条件(ap, f, vc)の最適化が重要である。
工具・材種と切削条件
NC旋盤で使用する工具は、超硬チップ(CVD/PVDコーティング)、CBN、PCD、高速度鋼など多様である。切削機構はせん断域・摩擦域・鳴きに依存し、びびり境界を避けるために切削速度や送りを調整する。断続切削では刃先靭性と刃形安定性が重要で、連続切削では耐摩耗性が支配的となる。チップブレーカ形状により切りくず分断・排出性を制御し、クーラントは潤滑・冷却・切りくず排出・表面性状の安定化に寄与する。
よく用いる加工サイクルの構成
- 荒取り(G71):素材外径全体を多段で除去し、仕上げ代を一定に残す。
- 仕上げ(G70):輪郭追従により公差・粗さを満足させる。
- 溝入れ・突切り:工具剛性と排屑管理が鍵となる。
- ねじ切り(G76等):ピッチ、ねじ角、ねじ山数、切込み方式(連続/多段)を定義する。
計測・補正と機上測定
NC旋盤では、タッチプローブやレーザ測定によりワーク座標や工具長を自動計測し、加工中の熱変位や摩耗を補正する。試し削り・測定・オフセット更新を繰返すSPC的運用により、工程能力指数(Cpk)を維持する。機上バランス調整・主軸振れ測定・円運動精度評価は、仕上げ面と真円度の安定に有効である。
安全・保全・トラブルシュート
NC旋盤の安全は、ドアインタロック、非常停止、主軸停止監視、クーラント飛散の遮蔽、切りくず巻き付き防止に依存する。保全では、ボールねじ・リニアガイドの潤滑、タレットクラッチ・油圧系、主軸ベアリング温度、クーラント濾過、スラッジ清掃、チャックグリスアップ、バックアップ(パラメータ・オフセット・マクロ)を定期化する。異常音、面粗さ悪化、寸法漂移、ねじ精度不良は、刃先損耗、把持不良、熱変位、振動、軸のサーボゲイン不適合などが原因となる。
代表的なアラーム要因
- 原点復帰不良:リミットスイッチ/エncoder信号異常。
- 過負荷・追従誤差:切削抵抗過大、ゲイン設定不整合。
- 主軸異常:温度上昇、潤滑不足、ベアリング損傷。
- ツール干渉:オフセット設定誤り、治具干渉、プログラムミス。
データと規格・相互運用
NC旋盤のデータ交換は、ISO 6983(Gコード)に加え、ISO 14649(STEP-NC)やDNC/NCドライブによるネットワーク転送がある。工具情報は工具管理システムで一元化し、工具ID、長さ・径補正、摩耗量、寿命しきい値を連携する。品質管理では、GD&T(幾何公差)、表面粗さ(Ra/Rz)、真円度・同軸度の検査記録を工程内で循環させ、加工条件のトレーサビリティを保持する。
複合化と自動化の拡張
NC旋盤の発展として、ミル機能付タレット、サブスピンドル、Y軸付、バー材供給機(バーフィーダ)、ロボット連携、パレット化、機上測定、機械学習による条件最適化などがある。これにより端面フライス、キー溝、偏心穴、六角加工などを一貫加工し、段取りレス化とタクト短縮を実現する。デジタルツインと切削シミュレーションは干渉検出・最適経路生成に有効であり、機械・工具・治具・ワークの統合最適が生産性と品質の同時達成をもたらす。