MMIC|高周波領域を単一基板で処理する化合物半導体技術

MMIC

MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)はマイクロ波帯やミリ波帯などの高周波領域で動作する半導体集積回路であり、高い周波数帯域で安定した性能を提供できる点が大きな特徴である。従来、分離部品を組み合わせたハイブリッド構成が一般的であったが、MMICによりトランジスタや受動素子などを単一の基板上に一括実装し、小型化と高性能化を両立できる。さらに高い信頼性を確保しながら省スペース化が可能で、通信衛星やレーダー、5G無線通信など、先進的な高周波応用に不可欠な存在となっている。

概要

半導体技術の進歩に伴い、マイクロ波帯域以上の高周波信号を取り扱うアプリケーションは増加し続けてきた。従来はディスクリート部品を組み合わせるハイブリッド集積方式が主流であったが、それには配線長の確保や実装コスト、そして特性バラツキの問題がつきまとっていた。そこで複数のトランジスタや受動素子を単一の半導体基板上に集積するMMICが注目を集め、部品点数の削減や高信頼性の確保、さらには小型化による高周波特性の向上が実現可能となった。

基本構造

MMICガリウムヒ素(GaAs)やガリウムナイトライド(GaN)など、高周波特性に優れた化合物半導体を用いることが多い。集積回路の内部には増幅器やミキサ、スイッチ、フィルタなど各種機能ブロックが組み込まれ、高周波動作を最適化するための微細な配線パターンが形成される。単一チップであるがゆえに配線が短く、ノイズや伝搬損失を低減しやすい一方、製造工程は高度化し歩留まりの確保が課題となる。

特徴

MMICの特徴は、小型化と高周波動作の両立にある。一般的なLSIと同様にフォトリソグラフィー工程を利用して作り込むため、大量生産に適したメリットを得やすい。またハイブリッド構成に比べて部品点数が削減される結果、実装や検査工程が簡略化される。さらに高周波領域での線路損失やクロストークを低減できるため、衛星通信やレーダーなど長距離通信・高感度計測が要求される分野で有用性が高い。

高周波性能と材料

化合物半導体の高電子移動度(HEMTなど)を活用することで、MMICは数GHzから数十GHz、さらには100GHzを超える周波数帯まで対応が可能である。特にGaAsベースのFETやGaNベースのHEMTは高耐圧かつ低雑音特性を同時に得られるため、レーダー用パワーアンプや低雑音増幅器など多様な用途で採用されている。これら材料の特性を最大限引き出すためには、結晶成長からエッチング技術に至るまで高精度なプロセス管理が重要である。

用途

近年、通信分野を中心に超高速・大容量化が進む中で、MMICの存在価値はますます高まっている。5Gや衛星通信システムでは広帯域かつ高線形性が要求され、従来のトランジスタアレイだけでは対応しきれない領域において、単一基板に多機能を集約できるMMICが効率的なソリューションを提供する。またミリ波レーダーを活用する自動運転や先進運転支援システム(ADAS)においても、小型軽量で高周波性能に優れたチップ実装が欠かせない要素となっている。

軍事・宇宙開発分野

超高周波帯を利用するレーダーや通信機器を中心に、宇宙や軍事分野でもMMICが広く導入されてきた。衛星搭載機器では省スペース化と軽量化が重要となり、さらに高真空環境や温度変動など厳しい運用条件を想定した高信頼設計が求められる。従来のハイブリッド構成に比べて、接続やはんだ付け箇所が減少し故障リスクが低減できる点が高く評価されており、今後の深宇宙探査計画でも活用範囲が広がるとみられている。

課題と動向

高周波帯域へ対応する反面、MMICは製造コストや歩留まりの確保が課題となりやすい。フォトリソグラフィーで微細な配線を形成する都合上、化合物半導体の結晶欠陥やプロセスばらつきによって歩留まりが低下すると、一度に多くの不良チップが発生する危険性がある。またGaN材料など高性能化に向けた技術開発が進む一方で、熱対策や耐久性の向上が引き続き重要視されている。5G、6Gといった次世代通信規格の普及に伴い、さらなる周波数帯拡張や高電力動作に対応した強力なMMIC設計が求められる局面が増していくだろう。

高集積化の可能性

MMICの小型化や一体化技術は、他の先端パッケージングと連携することでさらなる発展が見込まれている。例えば3D実装やシリコンインターポーザとの組み合わせによって、デジタル処理回路との接続をより近距離化し、高速なデータ処理とアナログ増幅のシームレスな統合を実現できる可能性がある。こうした取り組みが進むことで、次世代の通信モジュールや高周波デバイスの設計が一層革新的になると期待されている。