MBS(モーゲージ担保証券)
MBS(Mortgage-Backed Securities、モーゲージ担保証券)は、住宅ローンを担保にして発行される証券のことである。MBSは、金融機関が保有する多数の住宅ローンを束ねて一つの資産プールとし、そのプールを裏付けに証券化することで発行される。これにより、投資家は住宅ローンの返済から得られるキャッシュフローを受け取ることができる。MBSは、住宅ローン市場と金融市場をつなぐ重要な役割を果たし、特に米国では広く利用されている金融商品である。
MBSの仕組み
MBSは、通常、金融機関やモーゲージバンクが住宅ローンを組成し、それらを束ねてプール(資産プール)を形成する。その後、このプールを裏付けに証券が発行され、投資家に販売される。MBSの保有者は、元の住宅ローンの返済によって生じる元本および利息の支払いを受け取る権利を持つ。これにより、金融機関はローンのリスクを分散し、追加の資金を調達して新たな住宅ローンを提供することが可能となる。
種類と構成
MBSにはいくつかの種類が存在する。代表的なものには、次のような種類がある:
- パススルー証券:最も基本的な形態のMBSであり、ローンの元本と利息の返済がそのまま投資家に「パススルー」される。
- コラテラライズド・モーゲージ・オブリゲーション(CMO):MBSを複数のトランシェ(層)に分割し、それぞれ異なるリスク・リターン特性を持たせたもの。特定のトランシェは他のトランシェに優先して返済を受ける権利がある。
- ストリップスMBS(IO/PO):MBSを元本(Principal Only, PO)と利息(Interest Only, IO)のみの部分に分けて販売する形式。投資家はどちらか一方のキャッシュフローに投資することができる。
MBSのリスクとリターン
MBSは、投資家にとって比較的高い利回りを提供する一方で、いくつかのリスクが伴う。主なリスクには、以下のようなものがある:
- 金利リスク:市場金利が変動すると、MBSの価値が影響を受ける。特に金利が低下すると、住宅ローンの借り換えが増加し、MBSの返済が早まること(早期償還)がある。
- 信用リスク:MBSの元になる住宅ローンの借り手が返済不能に陥った場合、MBSの元本および利息の支払いが減少する可能性がある。
- プリペイメントリスク:借り手が予定よりも早くローンを返済すると、投資家が受け取る利息が減少する可能性がある。
これらのリスクにもかかわらず、MBSは安定したキャッシュフローを提供し、リスク分散に適した金融商品として、特に固定収入を求める投資家に人気がある。
MBSと金融危機
MBSは、2007-2008年の金融危機において中心的な役割を果たした。特に、サブプライム住宅ローンを担保にしたMBSが大量に発行され、これが不良債権化したことで、金融システム全体に深刻な影響を与えた。この経験から、MBSのリスクに対する警戒が高まり、規制当局は市場の透明性やリスク管理を強化する措置を講じている。
現在のMBS市場と展望
現在でもMBSは重要な金融商品として機能しており、住宅ローン市場の成長とともに市場規模が拡大している。特に、政府支援のエージェンシーMBS(例:Fannie MaeやFreddie Macが発行するMBS)は、信用リスクが低いため、投資家にとって依然として魅力的な投資先となっている。今後も住宅市場の動向や金利環境に応じて、MBS市場は成長を続けると考えられるが、同時に適切なリスク管理が求められる。