LTE
携帯電話通信の高速化と大容量化を実現した移動体通信規格がLTE(Long Term Evolution)である。第四世代(4G)として世界中で採用が進み、音声通信とデータ通信を統合しながら高速なモバイルブロードバンドを可能にしている点が大きな特徴である。従来の3Gネットワークに比べて通信速度と遅延が大幅に改善され、動画ストリーミングやビデオ会議など高負荷アプリケーションを安定して利用できるインフラを整えた。本稿ではLTEの概要や技術要素、周波数利用、運用形態、そして5Gとの連携などを順に解説し、モバイル通信の進化における意義を探る。
LTEの背景
スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及により、世界規模でデータ通信量が爆発的に増大した。3G世代の規格では高解像度動画やオンラインゲームなど、新たなコンテンツ需要に対応しきれない懸念が高まった。こうした状況を受け、3GPP(3rd Generation Partnership Project)が中心となって開発されたのがLTEであり、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)やMIMO(Multiple Input Multiple Output)など、複数の先進技術を組み合わせることで通信速度とスペクトル効率を向上させる構想が具体化された。
基本技術と特徴
LTEの基盤技術としては、符号間干渉を抑制しつつ周波数利用効率を高めるOFDMが採用されている。下りリンク(基地局から端末)ではOFDMAが使われ、複数のサブキャリアを割り当てて大容量通信を実現する。一方、上りリンク(端末から基地局)ではSC-FDMA(Single Carrier FDMA)を用いて端末側の消費電力を低減する工夫がなされている。さらに、MIMO技術によって基地局と端末の間で複数のアンテナを使った空間多重を行い、実効的なスループットを向上させる仕組みが取り入れられている。
周波数帯とキャリアアグリゲーション
LTEは世界各国でさまざまな周波数帯を利用しており、バンドごとに異なる周波数範囲が割り当てられている。混雑する都市部では、高い周波数帯を活用して大容量の通信を補い、農村部や郊外では低い周波数帯を用いて広域カバレッジを確保する戦略がとられる。さらに、複数の異なる周波数帯を束ねるキャリアアグリゲーション(CA)技術が加わることで、理論上の通信速度が飛躍的に向上し、ユーザーはどの周波数帯を利用していてもシームレスに高速通信を享受できる環境が整えられている。
運用形態とVoLTE
LTE導入当初、音声通話は回路交換方式を利用する3Gネットワークに依存していたケースが多かったが、徐々にVoLTE(Voice over LTE)によって音声もパケット化して処理する方式へ移行が進んだ。これにより、データと音声のトラフィックを一元的に管理し、基地局の負荷分散やQoS(Quality of Service)の制御を柔軟に行うことが可能となった。音声の遅延が抑えられ、通話品質の向上や切り替え動作の迅速化など、ユーザー体験の向上にも貢献している。
端末と基地局の設計
LTE端末は複数の周波数帯やMIMOアンテナに対応し、ベースバンドチップが高度な信号処理を担う構造になっている。基地局側もセルのサイズやアンテナ設定を調整することで、ユーザー密度の高いエリアや建物内など多様な環境に対応している。Small Cellやフェムトセルといった小規模基地局が導入されることで、屋内環境や局所的な過密地域にも柔軟に対応できるようになり、トラフィックオフロードやエリア内での品質安定に寄与している。
LTEと5Gの連携
第五世代移動通信システム(5G)の展開が進むなかでも、LTEネットワークは既存インフラとして重要な役割を果たし続けている。Non-Standalone(NSA)方式では、LTEのコアネットワークや制御信号を活用しつつ、5Gの新たな周波数帯を追加する形で共存する運用が主流となっており、両者が相互補完しながらサービスを提供できる利点がある。将来的にはStandalone(SA)方式が普及するとみられているが、LTE基地局の広域カバレッジを最大限活用するハイブリッド運用は今後もしばらくは継続される可能性が高い。