ISDN
ISDN(Integrated Services Digital Network)は、音声通話、データ通信、映像通信などを統合的にデジタルネットワーク上で提供する通信規格である。1980年代に開発され、アナログ回線と比較して、より高速かつ安定した通信を可能にした。この技術は電話回線をデジタル化し、同一回線上で複数のサービスを同時に利用できるため、効率的な通信手段として広く普及した。ISDNは特に企業やインターネット接続サービスで利用され、家庭向けにも一部導入されたが、近年は光ファイバーや高速ブロードバンド回線に取って代わられつつある。
ISDNの仕組み
ISDNは、デジタル信号を使用して音声やデータを伝送するシステムであり、2つの主要なサービス「ベーシックレートインターフェース(BRI)」と「プライマリレートインターフェース(PRI)」がある。BRIは2つのBチャネル(音声やデータ用)と1つのDチャネル(制御用)で構成され、主に家庭や小規模オフィス向けに提供された。PRIはBチャネルが複数あり、大規模な通信を必要とする企業向けである。
ISDNのメリット
ISDNの最大のメリットは、1本の電話回線で複数の通信を同時に処理できることである。音声通話とインターネット接続を並行して行えるため、利便性が向上した。また、アナログ回線よりも通信速度が速く、デジタル通信のためノイズが少なく安定していることも特長である。さらに、ISDNは国際規格として多くの国で利用され、グローバルな通信手段としても役立った。
ISDNの利用と導入事例
ISDNは、1990年代から2000年代初頭にかけて広く利用された。特に企業のデータ通信や、インターネットサービスプロバイダー(ISP)の接続回線として重要な役割を果たした。例えば、テレビ会議システムや、電話とインターネットを同時に利用するための通信環境として家庭やオフィスに導入された。インターネット黎明期には、ダイヤルアップ接続よりも高速な通信を提供できるため、人気の選択肢となった。
ISDNの衰退と代替技術
近年、ISDNの利用は減少している。光ファイバーやADSL、さらに高速なブロードバンド回線の普及により、より高速かつ大容量のデータ通信が可能になったためである。また、インターネットプロトコル(IP)を基盤としたVoIP(Voice over IP)技術の発展により、電話サービスもインターネット経由で提供されるようになり、ISDNの役割は縮小した。多くの国では、ISDNサービスの終了が発表されている。