i 線ステッパ|i 線波長を用いた量産向け露光装置

i線ステッパ

i線ステッパは、半導体デバイスフォトリソグラフィ工程で使用されるステッパ装置の一種である。g 線や KrF エキシマレーザーよりも中間的な波長帯である i 線(365nm)を光源とし、高い解像度と量産性の両立を目指して開発された経緯がある。微細パターンをマスク上からシリコンウェハへと転写する役割を担い、多層配線やトランジスタ構造の形成など、半導体製造における重要プロセスを支えてきた技術でもある。

フォトリソグラフィにおけるi線の意義

半導体の微細化は、フォトリソグラフィ工程で使用される露光光源の波長を短くすることで進められてきた。g 線(436nm)と比較すると短波長の i 線(365nm)は、より狭い線幅のパターン形成に適している。一方、さらに短波長の KrF(248nm)や ArF(193nm)のエキシマレーザーは解像度を飛躍的に高める反面、露光装置自体が高価で光学系やプロセス管理が複雑化しやすい側面がある。i線ステッパは、この中間波長帯を用いることで安定した量産性とコストパフォーマンスを確保しながら、ある程度の微細化に対応できるという利点を持っている。

i線ステッパの特徴

i線ステッパにおいて重視されるのは、光学系の高精度化とステージ制御技術である。i 線の露光を最適化するため、鏡筒内のレンズ素材やコーティング技術は特定の波長帯に最適化され、高い均一度でウェハ上の全領域を露光することが求められる。また、多枚数のウェハを連続処理するためにステージ移動が高速かつ正確である必要があり、その制御にはリニアモータや高精度エンコーダなどの技術が用いられている。これにより、高スループットと高歩留まりを実現する装置として半導体製造ラインで稼働している。

プロセス応用と利点

i線ステッパは、0.35µm~0.5µm程度のパターン形成に適していると言われ、デジタルICやアナログIC、MEMSデバイスパワー半導体など幅広い製品の製造工程に利用されている。高額なエキシマレーザー装置ほどの投資コストを要しないため、ある程度の解像度で十分な応用領域に最適化したいと考えるファウンドリやIDM(Integrated Device Manufacturer)にとって魅力的な選択肢となる。一方で、高解像度が不要なレイヤーや大きめの設計ルールを扱う場合にも、i線ステッパは量産性と安定稼働を確保しやすい手段として活躍している。

競合装置との比較

同世代の露光装置には、g線ステッパや KrFエキシマステッパなどが挙げられる。g 線ステッパは波長が長く解像度が低いため微細パターンに限界がある一方、装置コストはさらに抑えやすい特性がある。KrF や ArF エキシマステッパは高解像度を実現できるが、装置導入や維持に関する投資が膨大になる。i線ステッパは、これらの中間的な存在として、解像度とコストのバランスが取りやすい製造ラインに採用されている。特に中級ノードや特定用途向けデバイス製造では、実績のある成熟技術として依然高い需要が見込まれている。

課題と今後の見通し

近年、深紫外(DUV)や極紫外(EUV)を活用した露光技術に注目が集まり、ノードサイズのさらなる微細化が進められている。しかし、先端プロセス以外の領域では、既存設備の活用とコスト最適化を図る企業が多数存在する。i線ステッパの波長帯は既に成熟期を迎えているが、半導体業界全体では自動車用や産業用、アナログ・電源ICなど多様なアプリケーションが拡大している背景もあり、一定の需要が維持されている。特に新興国や中堅ファウンドリでは、i 線技術を活用しつつ生産性を確保し、装置コストを抑えながら市場の要求を満たす戦略がとられている。

導入事例と影響

中小規模のファウンドリや垂直統合型デバイスメーカーの多くが、既存プロセスの生産性維持においてi線ステッパを選択している。高世代の露光装置を導入するには多額の投資が必要となるが、消費電力や信頼性で適度なスペックを求める市場に向けた製品開発においては、i線ステッパによって十分な収益モデルを構築できるためである。結果として、最先端ノード以外の分野では i 線技術がしばらく重要な役割を果たし、半導体の多品種少量生産を支える装置のひとつとして位置づけられ続けている。