HMI|操作監視の人機インターフェース基盤

HMI

HMI(Human-Machine Interface)は、人が機械・装置・生産ラインと相互作用するための表示・操作のインタフェースである。産業用では制御装置(PLC、PAC、DCS)から取得した状態量やアラームを可視化し、運転・切替・レシピ投入・保全支援を可能にする。要求は高い信頼性、視認性、操作の一貫性、セキュリティ、リアルタイム性であり、工程安全や品質、稼働率、トレーサビリティに直結するため設計原則が重要になる。HMIは単体端末だけでなく、SCADAやMES、クラウド分析と連携し、工場全体のデータハブとして機能する。

定義と役割

HMIは人間工学に基づく表示層と入力層、制御通信層から構成される。役割は①状態監視(プロセス値・トレンド・イベント履歴)、②操作(連続操作・段階操作・レシピ管理)、③アラーム運用(発報・確認・原因追跡)、④保全支援(自己診断・交換時期提示)、⑤記録と可視化(データロギング・帳票)である。誤操作や見落としを防ぐため、色・形・配置の規範化と、操作フローの一貫性が求められる。

構成要素

  • 表示部:LCD/LED、バックライト、視野角、輝度、自動調光
  • 入力部:静電容量タッチ、物理押ボタン、ロータリエンコーダ、ハンドル
  • 制御通信:I/Oドライバ、タグDB、スキャン設定、冗長化
  • 筐体・環境:防塵防水(IP等級)、耐油・耐薬品、放熱、耐振動

産業用途では操作手袋、油煙、粉塵、低温・高温、電磁ノイズなどの厳環境を想定し、筐体と入力方式を選定する。また保守のため背面配線やコネクタの着脱性も考慮する。

表示設計の原則

視認性は最優先事項である。重要情報は画面上位・中央に配置し、色は意味を固定化する(安全=緑、注意=黄、異常=赤など)。数値は単位・少数桁・更新周期を統一し、トレンド表示では時刻軸・スケールの一貫性を保つ。アラームは優先度別に層別し、抑止・自己復帰・ラッチの動作を画面に明示する。ユーザー入力語や略号は画面内の凡例で定義し、操作の期待結果をツールチップやステータスバーで常時提示する。

入力デザインと誤操作防止

  1. 二重承認:危険操作には確認ダイアログ+物理キーの併用
  2. 状態依存の無効化:機器が停止中のみ有効などの条件制御
  3. アフォーダンス:押下可能部品のサイズは指先以上(目安7〜9mm)
  4. フィードバック:押下後の反応時間は100〜200ms以内を目標

工程の安全要求が高い場合、二手操作装置やインターロックとの整合を図る。緊急時の非常停止はHMIではなく専用ハードに委ね、HMI側は記録と復旧手順の提示に集中する。

通信プロトコルとタグ管理

産業用HMIは多様なプロトコルを扱う。代表例はModbus(RTU/TCP)、EtherNet/IP、PROFINET、OPC UAである。タグDBは論理名・データ型・スケール・単位・アドレスを管理し、スキャンレートは重要度とネットワーク負荷で層別する(例:インターロック関連100ms、一般監視500〜1000ms)。時刻同期(NTP/IEEE 1588)はトレンド・アラーム時系列の一貫性に必須である。冗長化構成では通信二重化とタグ更新の整合性を設計する。

データ記録・上位連携

ログはサンプリング周期、圧縮方式、保持期間、ロールオーバを定義する。アラーム履歴は発報・確認・復旧・原因・対策を紐付ける。帳票は日報・停止要因Pareto・品質管理用SPCが典型である。上位のSCADAやMES、履歴DB(Historian)と連携し、APIで設備総合効率(OEE)やエネルギー原単位を可視化する。エッジ側での前処理(平滑・異常検知)により通信負荷と遅延を抑制できる。

安全・セキュリティ要求

機能安全はISO 13849やIEC 61508に依拠し、PLやSILで要求水準を定義する。ただしHMI自体は安全機能の最終実行要素ではないため、停止命令は安全PLCや硬接点で担保する。サイバーセキュリティではユーザ認証、権限(RBAC)、監査ログ、端末のポート制御、ファーム署名検証、ネットワーク分離(セル/ゾーン)を実装する。リモート保守はVPNと多要素認証を組み合わせ、操作録画とコマンド履歴で追跡性を確保する。

画面アーキテクチャとナビゲーション

階層構造は「トップ(KPI/警報サマリ)→ライン→装置→ユニット→I/O詳細」とし、どの画面からもトップへ戻れるパンくずを備える。アラームから機器画面、保全手順、回路図PDFへショートカットを設け、復旧時間を短縮する。多言語化では固定文言とタグ名を分離し、リソース辞書で切替える。ダーク/ライトテーマは環境照度に応じ自動切替とする。

パフォーマンス指標

  • 描画応答:操作→画面更新まで200ms程度
  • トレンド描画:1画面あたり最大曲線数とサンプル数の上限
  • タグ点数:小規模数百点、中規模数千点、大規模数万点
  • 稼働率:24/7連続運転、計画停止でのみ更新

リソース制約下では差分描画とデータスロットリング、バックグラウンド読出しの優先度制御を行う。画像・SVG・アイコンはキャッシュし、フォントは埋め込みを検討する。

テストと検証

機能試験は画面遷移、権限、アラーム運用、異常系(通信断・センサ異常)を網羅する。環境試験は温湿度、振動、塩害、油ミスト、静電気(IEC 61000-4-2)、EFT/サージ(IEC 61000-4-4/5)に基づく。HIL(Hardware-in-the-Loop)でI/O疑似信号を再生し、トレンド・履歴の整合、タイムスタンプ精度を確認する。リリース前に操作性評価(ヒートマップ、アイ追跡)を実施すると改善余地を可視化できる。

導入・保守の実務

現場導入では盤内配線やノイズ対策、アース計画、ケーブル引回し、IP等級の維持が重要である。バックアップは設定・画面・レシピ・ログの全体を対象にし、世代管理と復元手順を文書化する。変更管理は版番号・変更理由・影響範囲・ロールバック手順を含め、監査時に追跡可能とする。保守ではタッチパネルの劣化、輝度低下、ファン・フィルタの交換周期を管理し、障害予兆の兆候(応答遅延、温度上昇、通信再試行)を監視する。

用語の注意

オペレータパネル、タッチパネル、GUI端末などの語がHMIと混用されるが、産業分野では装置と人を結ぶ設計思想と運用プロセス全体を指す概念である。単なる画面作成ではなく、運転・保全・品質保証のワークフローを内包する点を強調する。