FIT(failure in time)
FIT(failure in time)は電子部品やシステムの信頼性を定量化するための指標である。ある時間あたりに何件の故障が発生するかを統計的に示すことで、製品設計や品質保証の場面で活用されることが多い。
背景
半導体デバイスや電子部品の高性能化が進むにつれ、信頼性と品質管理に対する要求はますます高まってきた。従来の歩留まり向上施策だけでは、市場での長期使用にともなう故障率を把握しきれないケースが増えている。このような状況下で浮上したのが、運用環境や経年変化を考慮した統計的指標を導入しようという動きである。その結果として広く普及したのがFIT(failure in time)の概念であり、故障がどの程度のペースで発生するかを定量的に示すことで、メーカーやユーザーが製品寿命や保守計画を最適化できるようになったのである。
部品点数法で言われている故障率は、1/平均寿命で定義される。時間が分母になっている点に注目。故障する場合の数/すべて(故障+稼働)の場合の数、で求められる故障率ではない。壊れにくい電子機器では、10^9時間当たりの故障発生数である、FITと呼ばれる故障率単位が用いられるという。
— kistenkasten723 (@flute23432) August 12, 2018
定義と計算方法
FIT(failure in time)とは、109時間あたりに発生する故障件数を示す指標である。計算式としては、故障発生数を総稼働時間(あるいは試験時間)で割り、それを109倍して算出するのが一般的な方法となっている。例えば「50 FIT」は、109時間あたり50件の故障が見込まれることを意味する。信頼性試験や加速寿命試験の結果から、この値を推定し、製品の故障率を評価する。部品メーカーはデータシートにその値を掲載し、システムインテグレータにとっては部品選定や設計段階でのリスク評価に役立つ目安となる。
ロケットの打ち上げから衛星分離までの時間を2時間と仮定すると、故障率としては5.0×10^(-4)(1/hr)になるから、FITに換算すると5.0×10^5(FIT)(50万FIT)というところか。故障率は使用する部品の故障率の総和だから、数字としては大きく見えるけど大規模ロケットだとこれでも厳しいかもだ。
— miya_p (@miya_space) November 3, 2023
信頼性工学での活用
システム全体の故障率を計算する際、構成要素のFIT値を積み上げる手法がよく採用される。具体的には、抵抗やコンデンサ、LSIなど各部品のFIT値を合算し、さらに動作温度や電源電圧といったストレス条件を加味して修正を加えることで、全体としてのMTBF(Mean Time Between Failures)や故障率を導き出す。こうしたアプローチにより、設計者や信頼性エンジニアは優先的に対策すべきコンポーネントや運用条件を特定しやすくなり、品質向上とコスト削減のバランスを取りやすくなる。
部品には故障率を示すFITといって(10^9)時間あたりに何件故障が発生するかの目安が示されています
FITの小さい部品ばかりを使えば耐用年数は伸びますが、部品価格が桁で変わるので売値も目を見張るようになります
今と性能は同じで、5倍もつけど値段は100倍ってなって買いますかという話なんですよね— ひなちょ (@hinacho_pokecol) December 16, 2024
実用面でのメリットと課題
FITは数値による比較が容易であり、新規設計や既存システムのアップグレード時に参考にしやすい点が最大のメリットである。一方、統計的に得られる値であるため、実際の使用環境や温度、振動などのストレス要因が大きく異なる場合には誤差が生じるリスクもある。また、極めて小さい故障率を測定するためには、長期間かつ多数のサンプルをテストする必要があり、コストやリソースの制約が発生することも課題として挙げられる。したがって、高信頼が求められる分野ほど試験条件の設計が重要となる。
部品には故障率を示すFITといって(10^9)時間あたりに何件故障が発生するかの目安が示されています
FITの小さい部品ばかりを使えば耐用年数は伸びますが、部品価格が桁で変わるので売値も目を見張るようになります
今と性能は同じで、5倍もつけど値段は100倍ってなって買いますかという話なんですよね— ひなちょ (@hinacho_pokecol) December 16, 2024
注意点
強いストレス環境下では、実測とカタログスペックのFIT値が乖離するケースがあるため注意が必要である。例えば高温多湿や強い振動環境で稼働する機器では、想定以上に早期故障が頻発することも起こり得る。さらに故障は部品だけでなく、実装不良や半田クラックなどの製造工程要因も含まれるため、総合的な信頼性評価が欠かせない。部品メーカーのFIT値を鵜呑みにするのではなく、自社の運用条件に合わせた加速試験や実装試験を実施し、その結果を横断的に考慮して全体の信頼性を高める工夫が求められる。
活用事例
サーバや通信インフラ機器のように24時間連続稼働が前提となるシステムでは、設計段階から各部品のFITを合算し、一定のMTBF目標を定めたうえで部品選定が行われる。自動車業界でもECUやセンサー類が増加しており、信頼性不良が直接安全面に波及する恐れから、サプライヤーは厳格な信頼性試験とともにFIT値の公表を徹底している。医療機器の分野でも同様であり、高信頼性を維持するためには各部品の故障率を管理し、定期的な保守交換スケジュールを設計するうえでの根拠資料となっている。